株式会社コードベリー

株式会社コードベリーは、Webシステム開発等を得意とするSESの会社だ。特長は、「エンジニアの価値向上」をミッションに掲げ、SESの理想的な在り方を追求していること。そして実際にエンジニアが正しく評価され、キャリア形成と充分な報酬を保証する働き方を実現している稀有な会社である。

なぜできるのか。ポイントは、クライアントを大手SIer一社に絞っていること。大手SIerは潰れるリスクが少なく、多様な案件を持つ。一方で難易度の高いプロジェクトが多いことから、技術力と対応力に優れ、頼りにできるパートナーへのニーズは高い。そのパートナーの地位を確立できれば、安定的かついいポジションで仕事ができる。コードベリーはまさにこれを実践している。

とかくネガティブに捉えられがちなSESだが、「多重請負構造も大きな問題のひとつ」と話すのは、創業者で代表取締役CEOの福田芳真氏だ。多重請負が横行すると、仕事への誇りやモチベーションが持てず、ガバナンスも効かない状態に陥るが、特定一社をはさむだけのシンプルなスキームで、しかもエンドユーザーともしっかりコミュニケーションを取りながらの仕事であれば、そのような問題はない。

「むしろ直請けでは、例えばその部署との関係が途切れたり、窓口の人が退社したりという理由で案件が途切れ、同じ関係性でできる次の仕事を探すのは難しい。長期的に見ると、特定一社との強い信頼関係の下でやっている方が会社の安定、社員の心理的安全性等の面でメリットが大きいです」と福田氏は言う。その大手SIerと福田氏は創業前からの付き合いで、元々、信頼関係があった。創業後も厳しい仕事を一緒に乗り切る中で、信頼関係はますます強固となり、次第に案件もコードベリーからの参画人数も増え、現在に至っている。

また、ミッション「エンジニアの価値向上」実現の象徴として、同社では、未経験者も含めて最低年収を480万円（40万円×12カ月）に設定する。下限でこの水準を維持する会社はまずないだろう。理由は「都内に住んで必要なものを買い、余暇を楽しみ、勉強もして、貯蓄もするとなるとそれくらい必要だから」と福田氏。それでもコードベリーのやり方なら利益を出せる自信があった。

同社に営業はいない。オフィスも質素だ。福田氏自身もエンジニアとして稼働。売上を人件費や福利厚生費に厚く配分することで、最低年収480万円を実現してきた。営業を置かないのは、仕事ぶりと成果で案件を拡大するスタイルだから。メンバーのケアはエンジニアの心を知り尽くした福田氏や取締役CTOの千葉氏らが担い、営業の無茶ぶりや謎の経費締め付け等のストレスとも無縁だ。運営面でもSESの理想形となっている。

このようにSESとして独自のポジションを取り、かなり尖った会社であるコードベリー。このような会社にしたのは、福田氏の苦い経験に基づく。福田氏は大学院を修了後、SESの会社に入社し、数年後、フリーランスのエンジニアに。以後、約10年活動し、SESの数々の負の部分も経験した。そこで、自らの手でエンジニアファーストな会社をつくろうと考え、2015年にコードベリーを創業したという経緯だ。

創業以来、会社は順調な歩みを続けている。同社が得意とするのは、BtoCあるいはBtoBtoCの大規模Webサービスのクライアントサイド（B側）のシステムだ。予約や決済等のシステムを多く手掛けている。直接のクライアントが大手SIerであるため、必然的にエンドユーザーも大手ばかり。大規模な案件に、福田氏や千葉氏を中心としたチームで参画する。

クライアントの大手SIerからの信頼は厚く、例えば社内的に極めて重要な新規顧客の案件に対して、提案段階からコードベリーのメンバーが同行し、プロジェクト開始後も重要な役割を担うことも。「新規顧客を開拓したいから手伝ってと言っていただいて、何度か一緒に行っています。実際、案件も獲得。そのうちの一つは今、当社にとっても主要な案件となり、15人態勢で参画しています。大きなサービスなので、エンドユーザーの企業様の中にいくつかチームがあり、そのうち一つを当社が任されている形です。社員さんと同じ立ち位置で一つのシステムを受け持ち、普通に皆さんとコミュニケーションを取っているので、私が業務委託だと知らない方もいるくらいです」と千葉氏が言えば、「弊社の推薦するメンバーが面談NGになったことはない」と福田氏。

千葉氏の案件もほかの案件も、チームとして任されているため、メンバーの詳細にはタッチしないということだ。教育目的で少々経験の浅い人材を投入することもでき、案件を通じた人材育成、チーム力の底上げも進んでいる。なお、コードベリーの人的リソースだけでは対応できないことから、フリーランスやパートナー企業とも協業する。この場合も多重請負構造を排除するという信念から、パートナー企業に対してはプロパー社員のみという条件を課す。結果、価値観を共有し、統制の取れたチームとなっている。

コードベリーにおいては、もはやSESの負の面は皆無だ。個人では到達できない大規模サービスの一翼を担い、良好なクライアント、良好なチームワークで仕事に臨むことが叶う会社だ。

エンジニアファーストの理想の会社を実現しているコードベリー。福利厚生面のエンジニアファーストも徹底している。最低年収の高さも驚きだが、さらにユニークなのは特別有給休暇制度があることだ。形式上、法定日数は付与するが、個人の業務の状況によっては、それを上回る有給休暇も申請が可能である。つまり完全な裁量労働で、例えば末日までの仕事が15日に終われば、残りは休んで構わないといった具合に、時間の使い方が自由なのだ。「以前、SESで働いていた時はお客様の都合で休まされ、それで有給休暇を消化させられることもありました。これも悪しき慣習です」と福田氏。同社では自在に時間を調整できるため、残業時間も少ない。直近月の全社平均はわずか2.5時間だったという。

書籍購入や勉強会参加等、教育への投資も申請さえすれば会社が負担。余暇時間を使って勉強に励む社員も多い。また、最近では3カ月の育児休暇をとった男性エンジニアも。「クライアントも快諾してくれて、休暇後は望まれて同じ案件に復帰しました」と福田氏は言う。このほか、エンジニアがしばしば不満を抱くポイントである給与決定も明快だ。「評価はしません。お客様の単価と勤続年数で給与を決定します。普段、見ていない評価者に給与を決定されるフラストレーションは私も経験がありますから」と福田氏。週一でメンバーとの1on1を行い、仕事の状況やコンディションを把握するほか、キャリアビジョン等も充分に共有できているため、給与決定への納得度は高い。

このようなスタイルで売上は創業以来、右肩上がり。離職者もほぼゼロだ。クライアントからの引き合いは増える一方で、マンパワー不足から期待に応えられていないため、現在、仲間を求めている状況だ。福田氏、千葉氏に続く中堅層を手厚くし、今後の事業拡大に備えたい意向だ。かつての福田氏のように、SESの在り方に疑問を抱いている人、フリーランスで十分な経験を積み、今後はそれをチームに還元したいと思っている人等、コードベリーのビジョンやミッションに共感し、共にやっていきたいと思う人を待っている。