SGビジネス株式会社

SGビジネス株式会社（SGB）は、ソフトウェア／ハードウェアの開発・保守・運用を手掛けている企業。“何をするか”だけではなく“誰とするか”を極めて重視し、社員全員が人事部員を兼務するというユニークなカルチャーがある。

SGビジネスの強みは、直契約の特定のクライアントに絞り込み、太く長い取引を追求する点である。ソフトウェア領域においては、Web系システム開発、組込ソフトウェア開発等の実績を持ち、インフラ領域に関しては、ネットワークサーバ構築をメインに運用保守まで手がける。

例えば、大手通信キャリアの様々なインフラを、最上流のコンサルティングから構築・運用までを一貫して担い続けている。ある自動車部品メーカーにおいては、生産ラインの管理システムの保守・運用・改修を独占的に受託。また、大手重工メーカーにおいては、社員代替のSEとして先方社内に深く入り込み、一定の発注権限を持ってシステムの保守・運用管理業務を任されている。

「当社は2015年6月の設立ですが、ぽっと出のスタートアップとは違って、私と昔から深い関係性がある会社を主なクライアントにしています」と代表取締役の渡邊一平氏は話す。

そのほか、ロケット開発や医療機器、車載機器に係わる組込ソフトウェア開発、生産管理や金融系等の業務系システム開発、ディープラーニングを利用した画像解析や物流予測AIといった先端領域の実績もある。

ハードウェア領域においては、主に大手カーディーラーに向けたカーメンテナンス用の紫外線硬化装置の開発・販売・メンテナンスを手掛ける。車のボディの傷を埋める際にパテを用いるが、自然硬化だと何時間も要する。特殊な樹脂を混ぜたパテにこの装置で紫外線を照射することで、2~3秒ほどで硬化させることができる。
「ベトナムやタイといった国からも数百台単位のオーダーが寄せられています」と渡邊氏。

今後の成長戦略としては、独自のプロダクト開発に力を入れていく。
「コロナ禍となって、当社の扱っている紫外線が殺菌に効果があると装置開発にチャレンジしましたが、頓挫しました。しかし、数パーセントのホームランの可能性を狙い、飽くなきチャレンジを続けていきます」と渡邊氏は意気込む。

「当社の組織風土づくりは、私自身の過去の反省に基づいています」と渡邊氏。知的財産管理のプロフェッショナルとしてキャリアを積んだ渡邊氏は、大手SIer企業で事業部門を任され成果第一主義で仕事に取り組み、最後は取締役として経営の一翼を担った。しかし、その時に“人の壁”を感じたと打ち明ける。

「主力の事業部門の業績が思わしくなくなった際に周囲の経営幹部に協力を求めても、当事者意識がない人ばかりで八方塞がりの状態に陥ってしまったのです。自分一人ではどうにもならず、逃げるように退職しました。この時に組織マネジメントの重要性を思い知り、それまで自分についてきてくれた社員たちのことを考えると、恥ずかしさと情けなさでいっぱいになりました。どんなに高い技術や豊富な知識がある人材が集まっていても、全員が同じ方向を向いていなければ組織として力を発揮できないどころか、お互いの道を阻む壁になってしまうことを痛感しましたね」

渡邊氏は、紫外線硬化装置を発明し会社を設立していた父親に、知財管理と次期経営者としての承継を前提に入社を申し入れる。すると、販売会社として設立していたものの休眠状態にあったSGBの経営を任された。まずは紫外線硬化装置等のファームウェア開発会社としてスタートすると、期せずして昔の仲間や仲良くしていた協力会社の人たちが入社を求めてきた。

「まだ立ち上がったばかりでそんな余裕はありませんでしたが、退職して来たというので仕方ありません。受け入れて、Web系のエンジニアであった彼のために当該分野のサービスも手掛けることにしたのです。すると、ほかの部下たちも続けて入社を求めてくるようになり、気づいたら十数人の組織になっていました。結果的に、全員が同じ方向を向けるチームに純化された形となりました。昔の部下たちが助けに来てくれたわけです。和気あいあいとするだけでなく、真剣にバチバチと意見をぶつけ合うこともよくあります。それだけ本気で会社のことを考えてくれていると感じます」（渡邊氏）

こうして、ソリューション事業が売り上げの9割を占める現在の姿に至っている。

将来ビジョンについて、渡邊氏は次のように話す。
「社員の給料を上げ続けるには、成長し続けなければなりません。そのためには、社員を増やし、個々の力量を上げるしか道はないと思います。その結果としてIPOを狙い、その先のさらなる成長を目指します」

2021年12月現在、従業員数は30名（契約社員含む）。“誰とするか”を最重視する同社は、社員全員を人事部兼務として、リファラル採用に力を入れている。渡邊氏の経営方針や組織風土を熟知するメンバーが、それに叶う知人をスクリーニングすることでカルチャーフィットを実現させているのだ。また、知人がいた方がオンボーディングも行いやすいという狙いもある。
「さらに、社員に幸せになってもらい、“人に紹介したくなる会社”を目指す推進力にしたいとの思いもあります」（渡邊氏）。

同社には“恋活手当”がある。合コン等に参加する社員に、その費用を会社が負担するというものだ。このユニークな制度を始めたのには、深い理由がある。

「前職時代に、48歳の先輩エンジニアが、糖尿病が悪化して亡くなってしまったのです。独身で私が時に面倒を見させてもらっていたのですが、食事制限を守り切らせることができませんでした。もし奥さんがいたら、と思うと悔しくてなりません。男性エンジニアは独身者が多いので、是非出会いの機会をつくってほしいとの思いから“恋活手当”を始めました。もっとも、『社長に言うのは恥ずかしい』とあまり利用してくれませんが」（渡邊氏）

仕事においては、社員のやりたいことをできるだけ実現させている。
「組込系の稼ぎ頭がインフラにチャレンジしたいというので、売り上げ減を覚悟してシフトしました。いつかインフラで会社のために活躍してくれると信じているからです。」（渡邊氏）

そんなメンバー達は、自主的にイントラネットの掲示板を利用してナレッジの共有を図っている。この掲示板は、「セカンドゴリラビジネス島」という名称の、社員が遊べるホームページに発展させるという。

「父親が命名した『SG』について、何の略ならいいかを社内に募集したことがあります。その中に『セカンドゴリラ』と書いてきたメンバーがいて。弊社の正式な略称となるので、その時は却下することにしました。しかし、よく分からないが面白いので、掲示板を作るにあたって仮命名することにしました。ファーストゴリラはどこに行ったのかという質問もありました（笑）」渡邊氏。

仕事はもちろん、遊びでも“ワクワク”したいと、一風変わったイベントを楽しんでいる。例えば、BBQの際に、アクションゲームに登場した“回転肉焼き機”をわざわざつくって実際に仔豚の丸焼きをつくって楽しんだという。お花見にコタツを持ち込んだり、食事付きクルージングや、次回はサメ釣りを予定しているとか。「くだらないことも大好き」と渡邊氏は笑う。

「一方で、当社は社員の付加価値アップのために、資格取得等の勉強を推奨しています。スキルアップすることに興味がある方でないと厳しく感じるかもしれません。是非、学ぶことに貪欲な方に来てほしいと願っています」と渡邊氏は呼び掛ける。