『STYLY』を開発したきっかけは?
2014年に登場したOculus DK2に衝撃を受けたのが、XRと私の馴れ初めです。VRは人類を変えるテクノロジーになると直感し、居ても立ってもいられなくなって、仲間を集めて2014年にPsychic VR Labを立ち上げました。VR元年と言われた2016年5月に法人化し、今に至ります。 数々の実験的な取り組みをする中で、あるファッションデザイナーが、自分の服を海の中や宇宙で売りたいと言い出しました。現実世界では不可能、あるいは可能だとしても莫大な予算が必要。XRなら現実的な制約を乗り越えることができると考え、XRをプラットフォームとして提供することで新しい世界を創造可能だと思い『STYLY』のアイデアが生まれました。 世の中にないものを作るのは大変でした。他にXRのプラットフォームはなかったし、どういう設計があり得るのかさえ分からない。仲間と一緒に手探りで作り上げましたが、サーバサイド、ゲームエンジン、Webのフロント、通信等、多岐にわたる技術が必要でした。少人数で足りない技術を学びながら完成にこぎ着けました。
XR市場の可能性についての考えは?
テクノロジーはライフスタイルで使われるタイミングを迎えると大きく変わります。コンピュータやインターネットに話を置き換えてみましょう。必要に応じて特定の目的のためにパソコンを立ち上げてインターネットを使っていたのが、スマートフォンの登場で常にインターネットに繋がった状態で生活するようになり、マーケットは様変わりしました。 XRの世界も同じ過程を進むと考えています。今はゲームをしたりバーチャルなメタバースな世界へアクセスしたりするため、必要に応じて特定の目的のためにXRを利用している状況です。メガネ型のデバイスが一般化すると、スマホの普及でインターネットが生活の一部になったように、XRも日常生活の中で当たり前のように使われるテクノロジーになります。 そうなると、XRで提供できるサービスも飛躍的に広がり、マーケットも爆発的に大きくなります。その基盤を『STYLY』で作っていきたいと考えています。
Psychic VR Labをどんな会社にしたいですか?
1,000億円売り上げるサービスを10個作れば、売上高は1兆円。そのレベルまでは到達したいですね。途方もない数字かと思われるかもしれませんが、XRの世界はチャンスが無数にあります。メンバーはそれぞれ独自の視点で、サービスを作り上げてくれれば、不可能な数字ではないと考えています。 一人ひとりが見据える方向性と会社が目指す方向をマッチさせるのが社長の役目。個人の頑張りが組織もプロダクトも良くしていくと信じています。XRの世界を広めるために、代表である私以外のメンバーもあちこちでインタビューに答えています。自分達のプロダクトを自分なりの目線で捉えて、自由に話してもらう。それを社長である私が受け取って経営に取り入れる形で、会社は進んでいきます。メンバーがインタビューで答えていたことを会社の方針として別の機会に話すケースが多々あります。
コーポレートアイデンティティーを作った背景は?
社員が30名を超えて組織化を進めることに決めました。それまではフィーリング重視の採用をしていたのですが、50名、さらには100名と会社の規模を大きくするフェーズに突入することを勘案し、コンパス、バリュー、ミッションを定めたコーポレートアイデンティティーを作るプロジェクトを立ち上げました。 言語化したのは2021年に入ってからですが、その前から会社の思いや価値観をメンバー全員で共有していました。メンバーの数が増えても、社内の隅々まで浸透させられるように、改めて言語化しました。 採用強化の方針を打ち出しており、メンバー増加もペースアップが予想されます。新メンバーに会社の価値観を共有してもらう際にも、言語化していれば分かりやすく、採用でのミスマッチも防げると考えます。 メンバーの行動指針となるコンパスは、PROCESS、OUTPUT、INPUT、ATTITUDE、HRTの五つを制定。HRTは「HUMILITY(謙虚)」「RESPECT(尊敬)」「TRUST(信頼)」の頭文字です。
コンパスの具体的な内容は?
PROCESSは「Hack the Process:プロセスまでクリエイティブか?」 OUTPUTは「Never Be Perfect:『最高』に執着しているか?」 INPUTは「Expand Your World:ものさしを磨いているか?」 ATTITUDEは「Take Every Chance:打席に立ち続けているか?」 HRTは「Respect and Commitment:尊敬と覚悟を備えているか?」 物事を進めるやり方は必ずしも一つではありません。社内では以前から「頓智を使おう!」という言葉で浸透していましたが、ゲームのルールすら疑って、最速かつ最善を考え抜こうという価値観を大切にしています。未来を作る仕事には、粘り強い執着心が必要。真の満足がなければその仕事に意味はないと考えます。生み出したものが「本当に最高か?」を、常に自分に問い掛けようとしています。 私達がつくるのは、新しい未来。好奇心を失わず、価値観を広げていきます。私達が実現しようとしている世界は、相当ハードルが高いのを自覚しています。チャレンジを止めない不屈の精神は必要です。色んな人を巻き込んで、ウィークポイントを補い合って、一緒に成長しながら困難に向かっていくには、お互いをリスペクトするのが大切。困難を乗り越えるだけの覚悟があるかも重要です。会社経営は、色んな人の人生を巻き込むことだと思っています。未来を作るために、会社は遠慮なくメンバーの人生を巻き込んでいきます。