株式会社コトブキソリューション

システム開発事業とゲーム事業。二つの柱で会社を経営してきたコトブキソリューション。2004年に分社化してコトブキシステムから現在のコトブキソリューションに生まれ変わった歴史を持つ。

そして今回、会社をさらに成長させるため、組織をより強固にするべく動き出した。160名在籍する社員の9割が新卒プロパー社員だった同社が、中途採用に力を注ぐことになった。

「社長を譲り受ける際に現会長から託されたテーマは『世代交代』です。長く会社を続けてくると組織は硬直化します。それまでの長所が短所になってしまい、会社を永続させるためには、組織に刺激を与えて再度ビルドアップする必要があります。今回の採用は、外部からの新しい風を迎え入れて、会社を新しい組織に生まれ変わらせるのが目的です」（戸野氏）。

会社を次のステージへと引き上げるために、同社が必要としているのは、マネジメント層を担ってくれる経験豊富なエンジニア。既存のどの事業でも引き合いをもらっているが、リソース不足で対応しきれていない。プレイングマネージャーとして新しい現場を開拓してくれる人材が増えれば、会社はもっと成長する。

「組織的にはまだ発展途上にあり、管理職のポストが空いています。実績を上げたメンバーをどんどん昇格させて、利益を社員に還元できる組織を作り上げ、次の世代にバトンを渡すのが私の仕事です。会社は変化を決意しました。外部からきた人材にも重要なポストを担ってほしいと思っています」（戸野氏）。

中途採用を積極的に進めて会社の変化を目指しているコトブキソリューションでは、考課制度の見直しを始めた。2004年にコトブキソリューションが現体制に組織変更をした際に、コンサルティングを入れて作った考課制度だが、時代が経て、会社を次のフェーズに引き上げるには、新時代の働き方に則した考課制度が必要だと考えるからだ。

「単なる評価制度ではなく、社員の成長にコミットした考課制度にする予定です。そのほかにも、事業部ごとに研修制度を強化し、資格試験へのバックアップも引き続き取り組んでいく等、エンジニアの個人的な成長をバックアップできる体制を整え『エンジニアの成長＝会社の成長＝社員の幸せ』という方程式が現実のものとなる会社を作っていきます」（戸野氏）。

広島県呉市に本社を置く、株式会社コトブキソリューションは、呉本社と広島支社で事業を分担する形でテクノロジーに関連する事業を手広く展開している。

呉本社では、システム開発事業を主に手掛けている。Web系業務アプリの開発が中心で、基本的に持ち帰りの受託開発だ。もう一つ、モバイル・組み込みシステム開発も手掛けているが、こちらはクライアント先に常駐して働くスタイルだ。

「受託開発は、広島の企業だけでなく、東京のクライアントからの仕事もあります。そのため、東京支社に営業担当がいます。業種や業界は特にこだわらず、クライアントのニーズに沿ったシステムを開発します。モバイル・組み込みシステム開発では、大手メーカーの現場にエンジニアを送り、お客様の開発メンバーとして技術力を提供しています」（取締役社長・戸野文雄氏）。

広島支社では、地元テレビ局の子育て世代への情報発信や携帯キャリア企業とのコラボで地元のイベントや観光地紹介などをアプリ開発でサポートしており、また、メーカー系ITソリューション企業にて、省庁や自治体の公共系、交通や電力の社会インフラ系、金融系、産業流通系と殆ど全ての部門にてエンジニア常駐での開発支援と業務委託も行っている。
「身の回りの直ぐ近くにある企業のシステムや誰もがわかる公共のシステムなども数多くありメジャーな開発業務携わるチャンスが多く、技術面に加え指導力や調整力を含むコミュニケーション面も大きく成長する社員をみるのが楽しみです。」（戸野氏）

呉本社では、自社サービスの開発も手掛けている。テレビ電話アプリ『万事万端』は、パソコンやタブレットを使ったことがない人でも使える、操作が分かりやすく設定も簡単なアプリ。インターネット環境さえ整っていれば、カメラやモニターの設置は不要。最短10分で使い始められる。インターネット回線仕様だから、リーズナブルに通話ができるのもメリットだ。

「汎用性にも優れており、ユーザーのニーズに合わせたカスタマイズも可能です。事務所の受付用や事務所間の連絡用としての用途があり、スマートキーと連携すれば、入退出のセキュリティー機能としても利用できます。また、操作しやすいタッチパネルだから、高齢者の方や障がい者の方にも使いやすく、医療・介護事業者向けに、見守り版のデザインもあります」（戸野氏）。

テレビ電話アプリ『万事万端』は、前身となるサービスがある。1984年に広島県呉市でコトブキシステム株式会社として誕生したコトブキソリューションは、時代の流れに沿って、事業を多角化し常に変化をしてきた会社。2007年に営業権の譲渡を受け、製造および販売を開始した。IPテレビ電話端末『万事万端』が形を変えて今も受け継がれているのだ。

「今はアプリで提供している『万事万端』ですが、元はタッチパネル端末を使ったIPテレビ電話でした。操作が簡単で高齢者でも利用できるとあって、独居老人が多い自治体での導入等を手掛けていました。ただ、インターネット回線が今ほど安くない時代だったこともあり、事業は軌道に乗りませんでした。その時の経験を生かして誰でも安価で簡単に導入できるアプリを開発しました」（戸野氏）。

早い段階から、ユニバーサルデザインや今でいうUI/UXを意識していたのが『万事万端』の開発ストーリーから見えてくる。

呉本社では、Webシステムの受託開発や組み込み系開発の現場へエンジニアを送り出しているコトブキソリューション。東広島スタジオでは「ゲーム」を中心に事業を展開している。このゲーム事業を巡って、コトブキソリューションにはもう一つのストーリーが流れている。

コトブキソリューションのゲーム事業の歴史は古い。会社設立1年後の1985年、任天堂とライセンシー契約を結び「ファミリーコンピュータ」用のゲームソフトの製造販売を開始した。それ以降、家庭用ゲーム機向けのゲームを作るパブリッシャーとして『ケムコ』ブランドを運営。多くの人気タイトルを生み出した。

しかし、ゲーム機が高性能になるに従って、ゲーム開発にかかる予算も膨れ上がった。そこで、家庭用ゲーム機向けのゲーム開発を縮小し、携帯電話、いわゆるガラケー向けゲームの開発に経営の舵を切った。

「ファミコン時代から2DのRPGゲームを得意としてきました。家庭用ゲーム機が高性能になるにつれ、3Dグラフィックを多用したゲームが主流となり、当社はガラケー向けのゲームに主戦場を移しました。人気タイトルの移植を中心に展開し、その後は、iTunes Store、Google Play等のスマートフォン向けマーケットプレイスを中心に、全世界で100タイトル以上のモバイルコンテンツの企画、開発および配信を行っています。また、近年はNintendo Switch、PlayStation 4、PlayStation 5、Xbox Series X|Sといった家庭用ゲーム機、およびSteam等PC向けへの配信も積極的に手掛けています」（戸野氏）。
東広島スタジオでは、Webデザイン・制作、イラスト・デザイン業務等も手掛けており、ゲーム制作の一貫で発生する「デバッグ」作業のアウトソーシングも請け負っている。

さらに広島支社では、スマートフォン・タブレット向けのアプリケーション開発および、Webサイト構築の事業を手掛けている。

「地元においては広島テレビ他、全国のテレビ局のWebサイトやアプリを開発したり、SDGsやDXの取り組みを支援するシステム開発を行っております」（戸野氏）。

「自社のゲームタイトルをリリースする前に、デバッグが必要なことからスマートフォンの代表的な機種は当社で所有しています。自社のゲームタイトルだけに使うのはもったいないので、他社が開発したアプリやWebサイトのデバッグも受けています」（戸野氏）。