株式会社アドイン研究所

産業ロボットや製造機器へのAI導入、PCやモバイル・スマートデバイスに関する次世代インターネットコミュニケーションシステム構築、Webコンテンツ検索やデータマイニングシステムの開発等、人工知能を駆使した幅広い領域への技術提供を事業として展開する株式会社アドイン研究所。同社の技術的な特徴は、「ファジー・ニューラルネット・コントロールシステム」というコンセプトにより、コア技術をクライアントに対して提供していくというビジネスモデルにある。1986年に同社を設立した代表取締役・佐々木浩二氏は、「ファジー・ニューラルネット・コントロールシステム」の概念について、次のように説明している。

「先端的なシステムニーズに対し、あらかじめニューラルネット（人間の脳内神経回路網を人工ニューロンという数式的なモデルで表現したもの）によってあらかじめ学習させた技術によって応えるというもの。その特徴は、ピンポイントで解決策を提示するのではなく、“この程度”というあいまいな範囲で応えるファジーな考え方を採用している点にあります。 “0か1か”ではないシステムアプローチは、従来の日本人は不得意だとされてきましたが、この概念によって構築したシステムを、工作機械や交通システムにも実装してきたというのが、当社の事業なんです」（佐々木氏）。

もう一つの同社の事業の特徴は、佐々木氏いわく「ニーズとシーズを組み合わせて繋げる」という視点からの展開にこだわってきた点にあるという。技術的な部分を追求するだけではなく、依頼側の“ニーズ”を的確に理解した上で、その課題を解決する技術の“シーズ（種）”を融合させることで、現実の解決策を導くという考えが、同社の取り組みに根付いているということだ。

「近年、話題になっているメタの領域においても、当社は『サイバーフィジカルシステム』という考え方を重視して事業に取り組んでいます。現実世界で収集した情報をサイバー上で再現するという。その考え方で産業用ロボットへの技術搭載を行っているわけですが、技術だけではなく、現実の情報と組み合わせたトータルシステムとして取り扱うということを、当社では目指しています。一つの技術を掘り下げるだけではイノベーションになりませんし、ニーズに的確に応えられる技術にこそ価値があるというのが、当社の考えなんです」(佐々木氏)。

現在の同社の注力サービスの一つが、森林を三次元のデータで計測するシステム『OWL（アウル）』である。この『OWL』は、森林内の樹木の配位状況や形状に関する計測結果を3Dの森林地図としてデータ化し、森林資源量等の解析のほか、同時に得られる地形データ等と連携させることで資源価値としての解析を実現する同社の独自システムサービスである。このサービスの展開に関して、同社の取締役である製品サービス開発部部長・塩沢恵子氏に話を聞いた。

「当社が依頼を受けて三重県の山林を調査に取り組んだ際に分かったのは、書類としての“森林簿”のようなものは存在するものの、データ化されたものはないということでした。そこで、当社ではAIやロボット技術を駆使しながら森林のデータ化に取り組むことになりました。日本の国土の約3分の2を占める森林に関して、森林組合や製材業者といった全ての関係者が確認できる統一データを持つことは、トレーサビリティのある資源情報を得ることに繋がりますし、また資源を資産化する所有者への価値提供も可能にします。さらに言えば、林業のDX化、そして二酸化炭素の吸収量・固定量を算出するためのベースともなり、SDGsの観点からも有意義な取り組みになると私達は考えています」（塩沢氏）。

2022年10月末現在、同社の『OWL』は145台を提供しているが、今後はその展開をさらに拡大することを目指すという。佐々木氏は、日本と同様の“森林国家”であるフィンランドの林業事情を開示しながら、次のような指摘をしている。

「フィンランドは、日本と同じ規模の森林面積を有する国家ですが、日本の約5倍の規模で産業化を推進している状況にあります。同国では国家レベルで森林を管理し、その実態解析が標準化されていますが、日本においては県ごとの取り組みは行われているものの、まだ十分な資産としての活用がされていません。当社は、『OWL』を林野庁や地方自治体、森林組合にご提案しながら、森林の資産価値を高めるシステムサポートを実施していきたいと考えているんです」（佐々木氏）。

資産管理における役割に加え、環境保全を目指す上での根拠データ収集にも有用な『OWL』をツールとし、森林資源をいかに活用するかを考える。“海洋”と並ぶ日本固有の資源である“森林”を資産とする上では、同社の技術力が大きな可能性を秘めていると言えるだろう。

今回、新たなメンバーを募集する同社では、どのような人材を必要としているのか。注力事業である『OWL』を取り扱いながら、環境保全や森林保護に繋がる社会的価値の高い取り組みに興味を持てる人材、そしてAIをはじめとする技術への興味・意欲を持つ人材が必要だというのが同社の考えのようだ。そして、その技術力を発揮した取り組みの中で様々な領域の業務に触れ、新たなものを発見してほしいという思いを、塩沢氏は語ってくれた。

「当社の事業においては、技術力を発揮することはもちろん必要ですが、業務を通して知り合う人達から刺激を受けながら、新しいものや新しい世界をつくることを心掛けてほしいと思っています。世の中に役立つものをつくることができるというワクワク感を醍醐味としながら、関わる人々と共にコア技術を発展させる取り組みに楽しみを感じてほしい。それが私の考えなんです」（塩沢氏）。

自身の立ち位置をしっかりと認識し、これまで関わってきた業界での経験を基にアイデアを発揮する。その取り組みを通して、新たな価値を社会に提供することを楽しめる人材を、塩沢氏は求めているということだ。また、佐々木氏は、自身の知見やスキルを発揮できる人材、そして何よりも「社会課題として緊急性の高いターゲット」に対する事業に意欲を持てる人材を求めると語っている。

「当社には、がんに関する物体位置検知AIシステムである医用画像ビューワ『PETSTAT』というサービスも展開していますが、この領域では医療ソフト品質管理に関する知識や資格が生かせます。それ以外にも、これまでAIに関わっていなかった方々も、当社の事業を通して本格的な解決策に取り組むべき課題に関われるチャンスが多く存在していますので、是非チャレンジしていただきたいと思っています」（佐々木氏）。

社会的に必要とされながらも、コストや効率性を重視するあまり、本格的な課題解決に向き合ってこなかった業務領域は数多く存在すると指摘する佐々木氏。同社の業務にチャレンジすることは、その解決策を生み出しながら社会課題の解決を実現できるという大きなやりがいを得ることに繋がるということだろう。

「この会社で共に知恵を出し合いながら、世界にとって、そして日本にとっても必要な解決策をシステムの連携によって提示する。そんな仕事に人生を懸けることに、是非喜びを感じてほしいと思います」（佐々木氏）。