株式会社チップワンストップ

株式会社チップワンストップが運営する『chip1stop』は、電子部品・半導体の通販サイト。少量から・スピーディに・一括で検索、見積もり、購入ができる国内最大級のオンラインショップ。

電子部品・半導体の通販サイトという非常にニッチなビジネスだが、『chip1stop』はユーザーのニーズを的確に捉えたユニークなサービスだ。まず、『chip1stop』は法人向けの会員サイトで、一般ユーザーは購入できない。

そして、小ロットでの注文が可能。一般に半導体商社で扱う製品は「製造」する際に使うもので、注文ロットが大きい。そのため、数万個単位で取引されている。しかし、半導体を使うのは電子製品を「製造」する時だけではない。エンジニアが試作品を作る時にも使われる。当然、数万個もいらない。

「半導体という製品は取引ロットが大きく、『chip1stop』ができるまで、エンジニアは試作品を作るに当たって、秋葉原等にある電子部品ショップまで買いに行っていました。『chip1stop』は1個・2個の単位で半導体を購入できるため、ネットで購入ができ、最短翌日に届きます。便利なサービスとして、エンジニアに広く活用してもらっています」（Web&システム部・野村久承氏）。

同社は新横浜の自社倉庫に常時約10万点の在庫を持ち、ハードウェアエンジニアや購買担当者からの注文に日々応えている。世界中のメーカーの製品を取り扱っており、約300万点の商品を数日以内に世界中のお客様にお届けする。自社倉庫に在庫がない製品はメーカーや商社からの取り寄せとなるため数日かかるが、新横浜の倉庫にある製品は即日出荷できる体制を構築しており、日本国内（一部離島を除く）ならば注文した翌日には製品が届く。

「半導体の部品はスペックが少しでも違えば型番が変わり、とにかく商品点数が多いのを特徴にしています。半導体はリールで納品され、オーダーが入るごとに必要な個数を切り分けて発送するため、専門的な技術が必要で、一般の倉庫会社にはできません、だから、国内では競合がいません」（野村氏）。

唯一無二のビジネスモデルを持って2001年にスタートしたチップワンストップ。2004年に東京証券取引所マザーズ市場に上場。3年半でのスピード上場は、ビジネスモデルが優れていたことを証明する形となった。

試作品に使う半導体や電子部品を必要な時に必要な分だけ調達できる『chip1stop』。その会員数は、30万人以上。日本国内のエンジニアや電子部品を扱っている会社で、チップワンストップのサービスを知らないものはいない。それぐらい、業界での知名度は高い。

300万点も製品があれば、エンジニアが自分の作りたい試作品に適した製品を探すのも一苦労。『chip1stop』では、複数商品の一括検索等、通販サイト内の検索を工夫して、エンジニアが目当ての製品を探し当てられるようにサイトを設計している。また、法人の利用だが実際にオーダーするのは、その会社で働く社員。そこで、買物かごに追加した内容をメールでほかの人と共有できたり、月締めでまとめての請求書払いに対応したりと、商流にあったきめ細やかなサービスを提供している。

「チップワンストップが目指すのは、エンジニアのための総合プラットフォーム。開発者・研究者・購買担当者等『買う側・使う側』と、国内外の電子部品・半導体のメーカー等『売る側・作る側』が一カ所に集まる、ネット上の『場』となることです。チップワンストップは、電子部品・半導体の情報とニーズが効率よく交差する環境作りにも、日々取り組んでいます」（野村氏）。

2011年には、海外市場での成長を目指し、世界最大規模（売上約4兆円）を誇るアメリカの電子部品商社アロー・エレクトロニクスグループ（NYSE上場）の一員となった。アロー・エレクトロニクスの豊富な在庫も活用し、品揃えと価格・最短納期の実現を目指し、国内のみならずグローバルに事業展開している。

「世界最大規模の電子部品商社であるアロー・エレクトロニクスは、当社から小ロットで電子部品・半導体をネット販売するノウハウを得て、当社はアロー・エレクトロニクスのネットワークを生かして世界最大級の品揃えが実現しました。即納できる在庫は約300万点ですが、販売サイトには2,700万点以上の型番データベースを有しています」（野村氏）。

グローバル展開を目指しているチップワンストップでは、香港と深圳にも拠点を構え、特に中国を中心としたアジア地域への進出を加速させている。

「当社の現在の売上は、国内が65%、海外が35%。今後は海外売上の比率を高めていきたいと考えており、海外向けマーケティングにも力を入れていきます。中国のマーケティングは特殊事情があります。『Baidu（百度/バイドゥ）』『WeChat（微信/ウィーチャット）』『Weibo(微博/ウェイボー)』と扱うツールが違います。また、中国語が堪能な人材がいると、ネット広告を出す時に『キャッチコピー』を考えられます。ネイティブスピーカーも含め中国語が堪能な人材が入社してくれると、当社のアジア進出が加速します」（野村氏）。

チップワンストップは、販売用のWebサイトも社内の管理システムも内製してきた。ビジネスが順調に伸びており、エンジニアの増員が急務となった。

チップワンストップでは、社内に開発エンジニア1名、運用エンジニア2名の体制で、オフショアを活用している。設計までは社内で行い、プログラミングは海外にアウトソース。上海とベトナムの開発会社に依頼。それぞれ現地に約15名程度のチームがおり、同社のシステムを開発している。

「現地に日本語が話せる人材がいるから、仕事のやり取りは日本語です。設計までを自社で行い、出来上がったシステムをこちらでテストしてリリースするのが、社内SEの仕事。いわゆる上流工程部分を日本のエンジニアで担っています。業務の効率的な運用を考えながら、社内の各部署からヒアリングして要件定義を進めて作り込んでいきます。上流工程にチャレンジしたいエンジニアも大歓迎。事業インパクトがあって、やりがいを感じられます」（野村氏）。

毎年新卒社員を採用していることもあって、会社の平均年齢は若い。ただ、Web&システム部は、中途採用の人材ばかりで、平均年齢が40歳を超えている。今回の採用では、次世代へのバトンタッチも視野に入れている。

「若手エンジニアのチャレンジを待っています。成長意欲を持っていれば経験が浅くても、既存のメンバーが育ててくれます。受託開発と違ってある程度、開発スケジュールの融通が利き、残業は少なく土日は完全に休み。リモートワーク制度を導入しており、出社するかはチームに一任しています。対面でミーティングをしたり、書類仕事をしたりと必要に応じて出社するスタイルです」（野村氏）。

更なる成長に向けて、チップワンストップでは、Webマーケティングの人材も求めている。ここ数年、新卒採用を中心に増員を図ってきたが、社内SEとWebマーケティングは、中途採用を中心にチームを作ってきた。

「Webマーケティングの仕事は、集客とWebの改善。使いやすいWebサイトを目指して、デザインや機能を改善していくチームです。大きな組織のように縦割りではないため、部署・垣根を越えて仕事をしています。メンバー全員が全体を把握して業務を進めており、自由に意見を言い合える社風もあります。入社間もない社員が社長と話して、アイデアや意見を通すことも日常茶飯事。裁量を持って働ける職場です」（野村氏）。

半導体市場は、全世界的に好景気。チップワンストップの業績も伸びている。ニッチだが将来有望なマーケットで、半導体は今後も確実に必要とされ、会社の成長性は抜群。バックには世界最大級の電子部品商社が付いており、安定感もある。まだ経験が浅いエンジニアやWebマーケティングの人材が腰を落ち着けて働くには、最適な職場かもしれない。