元々コンサルティングファームにお勤めだったそうですね。
初めは営業として入社しました。その会社は、創業社長から経営のイロハを教えられた営業が、担当するコンサルタントのチームを持ち、プロジェクトを進めるスタイルだったのです。私は営業職や経営企画職を経て、コンサルタントに転身した後に最初に担当したクライアントが製薬会社でした。そこで実績を作り、さらに次のプロジェクトでも製薬会社を担当…という形で、どんどん経験値を高めていったのです。 一方で社内では、営業活動や採用活動も経験し、会社経営についても学びました。コンサルティング会社での一通りの業務を経験したことで改めて自身のキャリアについて考えることとなり、そのまま実績を積んで上を目指すか、事業会社に転職するか、それとも自身でビジネスを創るのか。色々考えた結果、まだ若いし失敗してもやり直せるだろうと思い独立することを選びました。
設立当初から、コンサルティングとCROの二本柱だったのでしょうか。
いえ、まずは製薬会社へのコンサルティングからスタートしました。この業界の人は他業界へ転職するよりも業界内を移動する人が多く、信頼関係を築くと人脈が横に広がっていく傾向にあります。実際、設立後に初めて手掛けたプロジェクトも、前の会社での仕事で知り合った方からの個人的な依頼でした。 具体的には、臨床試験や統計解析のデータマネジメントを行うR&D部門の業務改善・支援です。設立間もない頃に私がたった一人で請け負ったプロジェクトですが、頑張って結果を出したことで、その会社とは未だに取引を続けさせてもらっています。ありがたいですよね。前の会社で身に付けた、製薬会社内部の業務や慣習、風土等に関する知識が大いに役立ちました。 そのような形で1社、また1社と徐々に取引を広げていったのです。医薬品開発を支援する業務を受託し、成果物を納めるCROを始めたのは、設立から数年が経過した2018年頃からです。
会社経営は順調でしたか、それとも心が折れそうな瞬間がありましたか。
ありがたいことにここまで順調で、まだ大きな挫折は味わっていません。先ほども触れたように、設立後すぐに1社目の取引が生まれました。それ以降も紹介等で引き合いが続き、現在までに一度も営業をしたことがありません。また、今のところすべてのお客様から継続的にお仕事をいただけているので、案件が減るようなこともありませんでした。 CROを始めた頃は私を含めて5名という規模でした。吹けば飛ぶような会社だったので、従業員にはよく「今のお客様の仕事がなくなったら一緒に転職活動でもしようか」と話していたほどです。しかし幸いにも、そのような事態に陥ることなく現在に至っています。 元々私自身がとてもポジティブな性格で、心が折れる瞬間というものを味わったことがありません。それでもあえて気持ちがヘコんだ瞬間があるとすれば、今年3月に、初めて従業員が退職したことですね。その人の家庭の事情による退職だったので、やむを得ないことでしたが、とても残念でした。
どのようなスタンスで、従業員やお客様に向き合っていますか。
まず、私にとって従業員は皆仲間であり守るべき家族のようなものですから、何よりも大切にしたいと考えています。従業員がいなければ当社のサービスは提供できないのですから、大切にするのは当然ではないでしょうか。 もっとも、大切にするのは今のサービスを提供している間だけではありません。人生100年時代と言われている今、会社に定年まで勤め続けることが正解ではないと思っています。最終的には従業員が自身のやりたいことで独立できるようにしたいと思っているので、現在は独立支援制度の準備をしています。既に数名の従業員からは「保育園」「ネイリスト」等、独立してやりたいことの案も出てきています。また、同様に弊社では副業も業種・職種に関わらず可能になっています。 従業員がモチベーション高く働ける環境を整えた上で、お客様に対してもできることは全てやっていきます。そもそもお客様が当社に依頼をされるのは、何かに困っているからです。CROを受託するだけでは解決できないことも多々あります。「当社にできるのはここまで」と限定せず、お客様のお悩みに真摯に取り組むことが、次の取引を生むのです。
最後に、お忙しい高橋様のリフレッシュ方法を教えてください。
お恥ずかしい話、仕事を仕事と思わず趣味みたいなものと思ってやっているので、「リフレッシュでこれをやる」というものはありません。仕事以外でしていることと言えば、ジムで体を動かしたり、従業員やお客様と飲みに行ったりでしょうか。もちろん週末や長い休みには、家族と過ごす時間をしっかり取るようにしています。キャンプに行ったり、旅行で沖縄に行ったり…ただ、沖縄に行った時も、子供が寝たらパソコンを開いて仕事をしていましたが。 普段はそういう感じですが、いずれはこの仕事を続けたまま、海外に移住したいと考えています。できればこれから発展するような東南アジアの国がいいですね。教育がしっかりしていて、グローバルな環境で子育てができる国に移住できたらいいなと。社長の私が率先してワークライフバランスを整えることで、従業員にも「自分にとってベストな働き方」を模索してほしいですから。やはり仕事の話になってしまいますね。