株式会社フリーメソッド

株式会社フリーメソッドは、福岡市に本社を置き、クリエイティブとテクノロジー、さらにマーケティングスキルを活かし、企業の課題解決を支援するIT企業だ。2007年6月の創業当時からフルリモートでの働き方を許容することで、日本国内のみならず海外に住む優秀な人材を確保し、レベルの高いサービスを提供し続けている。支援実績は350社以上に及ぶ。

創業者である代表取締役・熊谷昭彦氏は、大学院を経て、福岡県内の大手電機メーカーや、大阪の家電メーカーで経験を積んだエンジニアだ。サラリーマン時代は、携帯電話の商品開発、カーナビの商品企画・開発に携わった。その後、福岡に戻り、ガラケーのモバイルコンテンツ・プロバイダとして起業。さらに並行して、地元経済の活性化に貢献することを目的としてフリーメソッド社の設立に至っている。

「WEBは営業マンの代わりになります。しかし当時はほとんどの企業がホームページすら持っていない時代でした。特に中小企業は予算が限られているので、その中でいかにWEBをフル活用するかを重視して、ホームページの制作やWEBのコンサルティングを請け負っていました」（熊谷氏）。

モバイルファーストの時代に入ると、スマートフォンアプリの開発が増加。それと共にUI/UX周りだけではなく、バックエンド、サーバーサイドへと領域を広げ、クライアントも地元福岡のみならず関東圏へと拡大。システム開発事業として確立するに至っている。クライアント規模感も、中堅クラスもしくは大手企業が増えている。

同社が得意とするのは、ECシステム、不動産賃貸や求人といったマッチングサイト等、コンシューマ系のサービス開発だ。熊谷氏が代表を務める関連会社が運営するコンシューマ向けサービスの開発で培ったノウハウを武器とする。システム全体の企画からコンテンツ制作、UI/UXのクリエイティブ、フロントエンドからバックエンド、サーバー周りの開発までワンストップで対応し、クライアントのビジネス課題を解決。新規ビジネスを創造するための組織や仕組み作り、マーケティング支援、ビジネスアライアンス、プロジェクト企画運営等にも対応している。

「エンジニアリングの会社としては、ユーザーの行動リサーチから支援できる点は大きな特徴です。関連会社の名義で展開するプロダクトでは、グローバルに展開し400万ダウンロードを達成したスマートフォンアプリもあります。独自のマーケティング手法を含めて、お客様と二人三脚で事業を伸ばしていけることが強みです」（熊谷氏）。

設立以来、UI/UXのクリエイティブ制作とシステムの受託開発の2本柱で持続的成長を遂げてきた同社。2020年後半からは準委任契約のSES事業にも参入し、業容を拡大している。

同社が手掛けるSES事業の特徴は、フルリモートを採用している点だ。設立時からリモートワークを取り入れてきた同社は、受託開発でもクライアントとの商談や打ち合わせも全てオンラインで行ってきた。コロナ禍に入り、社会全体にリモートワークが広まると、これまで常駐型にこだわってきた大手SIerもリモートワークを受容。それにより、単価の高い首都圏のエンジニアを使う必然性が消え、地方の開発会社、特に長年フルリモートを採用してきた同社へのニーズが高まった。アジャイル開発が主流の現在、工数の積み重ねで見積もりが決まる請負よりも、準委任の随意契約の方が、開発途中で発生する要件の変化に対し柔軟に対応しやすいこともあり、請負契約から切り替える企業も増えた。現在ではシステム開発事業の7割をSESが占める。

「コロナ禍、戦争、原油価格の高騰等、大きな投資がしづらい状況ですが、クラウド化等、環境の変化に合わせてサービスを最適化したいというご要望は増えています。そういったお客様の課題を一緒に解決させていただくことが我々のミッションです」（熊谷氏）。

SES事業に参入したのとほぼ同時期に、オフショア事業もスタートしている。2010年代後半から、将来の労働人力不足を見据えて、海外の人材活用を進めるためリサーチを開始し、バングラデシュのエンジニアを採用する等、試行錯誤を繰り返してきた。その成果として結実したのがベトナムの開発拠点開設だ。2020年12月に、ホーチミンに拠点を開設し、2021年12月に法人化し、本格的に事業を開始している。2022年4月現在、14名のエンジニアが在籍。現在のところ受託案件が中心だが、今後はSES案件にも、国内エンジニアとミックスのチームを組んでアサインしていく計画だ。

「現在は、最も親日でコミュニケ－ションも取りやすいベトナムに注力しています。技術レベルは、同じぐらいの経験年数であれば、日本人エンジニアと比べても遜色はありません」（熊谷氏）。

問題となる要素があるとすればコミュニケーションだ。ベトナムの開発会社に発注して失敗するケースは少なくない。最大の要因は、文化の違いから生じるコミュニケーション上の問題だ。その問題を防ぐため、現地のエンジニアを日本に招き、日本での開発現場を経験、理解してもらった上で現地チームの代表として送り込み、拠点開設の準備を進めていた。

10年後には国内の人材だけでは事業を維持できなくなる。それを見据えれば、ベトナムの開発チームの人数をさらに増強していく必要がある。ベトナムの体制がしっかり確立した後は、さらに他の国にも拠点を作っていく計画だ。

「そのためには海外の拠点を日本側からマネジメントする体制の強化も進める必要があります。フロントエンド、バックエンド、スマホアプリエンジニア、テックリードエンジニア、さらにベトナム人のブリッジエンジニアを積極採用中です」（熊谷氏）。

フリーメソッド社が掲げる企業スローガンは“かちカタチ”。企業が持つ本質的な価値を掘り起こし、ITを最大限に活用してカタチにしていくことを目指す。

「目に見えない価値をいかに可視化し、効率化や事業成長に繋げていくことが我々のやるべきことだと考えています。DXによって失うものもあるかもしれませんが、その分、新しい価値を生み出していくことが我々の仕事です」（熊谷氏）。

受託開発からSES事業への移行リクエストに応えるのもこういったミッションに則った上でのことだ。クライアントの課題解決をミッションとする以上、請負であれ、SESであれ、その時々でベストな方法を選択し、提案していく。

だが、その一方では従業員の働き方も重視してきた。設立当時からリモートワークを取り入れてきたのは、優秀な人材を確保するためだが、それは同時にクリエーター、エンジニアのライフワークバランスを実現することにも繋がっている。

現在、国内の社員は20名。たまたま熊本在住者一名の他は、全員が福岡県内に住んでいるが、出社型かリモート型かは個々の社員の裁量に任せている。

熊谷氏が創業以来目指してきたのはボトムアップ型の組織、文化だ。役職を設けずにフラットな組織形態を取り、社員の意見を取り入れながら組織運営や業務を推進してきた。

多様な働き方を許容しつつ、ボトムアップ型のカルチャーを醸成していくため、社内コミュニケーションの活性化を推進する施策は随所に打っている。ワークショップの開催、週一で開催する会社の未来を考える会議等、全社的な取り組みの他、個別に声を掛け、内面のケアにも努め、活発にコミュニケーションができる関係性の構築に尽力してきた。

求めるのは自分から意見を出して主体的に行動できる人材である。また、案件がスタートすればエンジニアが顧客と直接話し合いながら仕事を進める体制となっているため、コミュニケーション力も必要だ。さらに最新の技術やトレンド、プログラミングが好きといった要素も外せない。

「新しい技術をやりたいと思ってもお客様がいることなので、必ずしもできるわけではありませんが、自分達で何か作ってみることはできます。意見してもらえれば、必ず検討材料には挙げます。あくまでも皆で考えて、意見を持ち寄ってものを作っていくところが一番の面白みです。一方で、我々の最大のミッションはお客様の課題解決です。課題に向き合い、解決していくことが大好きな方をお待ちしています」（熊谷氏）。