リンクラフト株式会社

エンジニアが肩肘張らずに等身大の自分で働いているシステム開発会社がある。2013年設立のリンクラフト株式会社だ。

同社のメイン事業は、開発業務。技術領域は幅広く、システム構築からサーバレス環境、コンテナ環境構築、運用・保守まで Web ・アプリに関わる様々な案件に対応している。

「関係性を重視してクライアントとはお付き合いしています。価値観や考え方が似ている会社多く、不測の事態の時には協力して対処に当たれるかが大切です。エンジニアが言いたいことを言えることも、クライアントとのお付き合いで重要な要素の一つ。もちろんクライアントにも何でも言ってもらいたいです。受発注の間柄、上下の関係ではなく、パートナーとして併走できるクライアントを選んでいます」（代表取締役・石山幸太郎氏）。

エンジニアが豊かな人生を送るには、技術力が大切。目まぐるしいスピードで変化するIT業界においては、最新の技術動向をチェックして、新しい技術にキャッチアップする必要がある。リンクラフトでは、エンジニアが技術的にスキルアップする環境に力を入れている。

「当社は、Javaの技術者が多いのですが、みんないつかJavaの技術が活用されなくなってくるのではないかと薄々感じています。だから、知識を増やしたり、視野を広げたり、みんなで努力しています。エンジニアとしての将来への不安を自分一人で抱え込まないで、互いに支え合う仲間を作りたいと考えています」（石山氏）。

リンクラフトでは、社内で技術共有するための取り組みを積極的に進めている。ハンズオン形式の勉強会や最新技術の考察会等、勉強会の頻度が高いのが、リンクラフトの特徴といえる。勉強会はリモートで開催し、録画して社内へ動画を配信。誰もが参加しやすい配慮をしている。

また、チャットツールに技術チャンネルを作って、テクノロジーに関する話題を共有し、コミュニケーションを促している。そして、チャンネルの活性化のために「質問ロボ」を開発。ランダムに選ばれた社員に自動で、技術に関係ない質問が投げられる。
これはリモートワークによって失われた雑談によるコミュニケーションを補う取り組みである。

「技術チャンネルを立ち上げたものの、今ひとつ盛り上がりに欠ける。色々分析すると、最初の質問を投げるという行動が大きなハードルになっていました。そこで、質問ロボで最初の質問を投げることで、コミュニケーションのきっかけを作りました。技術に関係ない話ですがコミュニケーションが生まれることで、技術チャンネルへも気軽に書き込んでもらえるようになりました」（石山氏）。

リンクラフトが開発した「質問ロボ」。リモートワークで失われた雑談を生むツールとして、製品化に向けて秘かに開発が続けられているという。

リンクラフトは社員間のコミュニケーションが活発でスムーズな会社。みんなが月に1回集まる帰社日は、笑い声が絶えない。

リモートワーク中心となったことで、同じプロジェクトのメンバー以外とはコミュニケーションを取る機会が少なくなってしまった。
リンクラフトはエンジニアが集まる機会を作るのに加え、チャットによるオンラインコミュニケーションが活発。前述の技術チャンネルだけでなく、共通の趣味を持つメンバーで構成されたチャンネル等、色んなチャンネルがあり、エンジニアは積極的にコミュニケーションを取っている。

「会社は仕事をするだけの場所ではありません。楽しくコミュニケーションを取りながら共に成長する仲間が集まる場所だと考えます。私の親や親族はみんな経営者。昭和の小さな企業にとって、従業員は家族のような存在でした。みんなでがむしゃらに働いて、一緒に食卓を囲み、仕事でもプライベートでも喜怒哀楽を分かち合っていました。そんな昭和の会社が持っていた温かみを大切にしたいです」（石山氏）。

昭和の会社の香りを大切にしているとはいえ、昔のような働き方を社員に求めている訳ではない。現代の働き方に対応しているどころか、積極的に新しい働き方を実践している。

例えば、リモートワーク。東京都はテレワークを一過性のものとすることなく、促進・定着に向けて「テレワーク東京ルール」を制定し普及推進に努めている。リンクラフトはテレワーク東京ルール実践企業宣言をしており、社員の7割以上が週3日テレワークを実施している企業に東京都が認定を与える「テレワーク・マスター企業」でもある。

「リンクラフトのメンバーは90%以上リモートワーク。クライアントの大半が先進的なお客様なので、リモートワークの比率が高いのだと思います。実はコロナ禍前からリモートワークをテストしていました。リモートワークとオフィスワークは、人によって向き不向きがあります。それぞれ自分に合った生産性のある働き方を選択してもらえばと考えています」（石山氏）。

残業時間も前年度実績4.06時間と削減が進んでいる。育児・介護等の家庭と仕事の両立に積極的に取り組む企業として「家庭と仕事の両立支援推進企業」にも登録されている。

「エンジニアがオーバーワークにならないように、クライアントとは密にコミュニケーションを取っています。それぞれのエンジニアが生産性を意識した働き方を実践するのも、ライフワークバランスを保つためには重要だと考えます。クライアントと話し合って無理のないスケジュールを提供するから、エンジニアは効率的に働いて豊かなエンジニアライフを歩んでほしいです」（石山氏）。

テレワーク推進をはじめ、新時代の働き方を実践して、メンバーがライフワークバランスを実現できる会社、それがリンクラフト。メンタルヘルス不調への対応だけではなく、職場でのコミュニケーションの活性化等を含めた、広い意味での心の健康づくりに取り組んでいる。

「採用ポリシーは、人柄重視。明るく前向きな人、素直で仲間に悩みを打ち明けられる人を集めています。エンジニアが働きやすい会社にするのが、リンクラフトの目標です。そのためには、社員の自主性を大切にして、一緒に会社を作るスタンスでエンジニアにも積極的にアイデアや意見を発信してもらいたいと思います」（石山氏）。

社員の意見を取り入れた実例として挙げられるのが「副業」。2019年に「老後2,000万円問題」が話題になった時、同社の社員が将来を考えて副業の解禁を提案。会社では検討した結果、副業OKとした。

「老後2,000万円問題があった時、社員から副業についての質問がありました。あれこれ考えた末に副業OKとしましたが、まだ誰も副業していません。在宅勤務手当も社員の発案です、テレワーク環境を整えるための経費を会社で負担しています。これからも社員の声を拾って制度や福利厚生を作っていきます」（石山氏）。

技術領域でも社員の発案で新しいテクノロジーにチャレンジした例がある。

「社員からの提案でWeb3の勉強会を2021年に社内で何度も開きました。提案した社員が率先してWeb3のテクノロジーを学び、それを社内に展開して技術力の底上げに繋がりました。さらに、クライアントがWeb3のサービスを開発したいというのを耳にし、その社員をアサインして研究開発の案件が成立しました。社員の提案が会社の未来を作った例です」（石山氏）。

最後にリンクラフトの今後の展開を紹介したい。現在、同社が積極的に取り組んでいるのが、新しい技術に対する技術力の向上。最新の開発手法である「ヘッドレスCMS」を活用したWebシステム開発を進めている。

「ヘッドレスCMS・ヘッドレスコマースの受託開発の事業化を進めています。フロントとバックエンドを切り離し独立させた形のシステムアーキテクチャで、UXの改善を追求するのに適したシステム構成です。フロントとバックは異なるシステムとなっており、それぞれAPIでデータを連携します。サーバレス開発となるため、バージョン管理等の手間がなく、セキュアなシステムを構築することができます」（石山氏）。

リンクラフトでは、自社でヘッドレスCMSも開発している。今後は、受託開発だけでなく、自社プロダクトを持ったシステム開発会社へと進化を目指す。