株式会社朝日新聞出版

朝日新聞社の子会社となる出版社として、雑誌や書籍、デジタルメディアの事業を展開する株式会社朝日新聞出版。2008年に設立され、『AERA』『AERA with Kids』『ジュニアアエラ』などの雑誌媒体のほか、『科学漫画サバイバルシリーズ』といった書籍、新書などの紙媒体の販売を事業の中心としているが、近年ではニュースメディアである『AERA dot.』や電子書籍などのデジタルコンテンツの発信にも注力している。「出版不況」と言われる現在の状況においても、2021年度に過去最高益を達成するなど、その業績は堅調を維持しているという。

「確かに、雑誌の販売部数の落ち込みはありますが、当社が手がける児童書である『科学漫画サバイバルシリーズ』やTOEIC関連のテキストなど、書籍に関しては根強い人気を維持しています。私たちは現在の状況を“転換点”と考えており、紙媒体を手掛けてきた記者や編集者のスキル・知見を使ってWebコンテンツを開発するという動きを、今後は加速させていきたいと考えています」。

そう語るのは、営業本部長である酒井清貴氏。紙媒体での実績をもとにWebコンテンツの発信に注力する朝日新聞出版では、時代の変化に合わせたメディア展開を意識しながら、その制作に自社のリソースを強みとしながら取り組んでいきたいと考えている。また、現在の出版社におけるビジネスモデルで成果を出しているコンテンツライツ事業への取り組みを充実させるほか、事業の柱として重視していくのが自社デジタルメディアである『AERA dot.』における広告収入だという。

「広告事業については、単純に広告枠を販売することだけを考えるのではなく、Webコンテンツの企画や新規開発と絡めた戦略を採る必要があると考えています。その際に、当社が強みとして発揮できるのは、児童書からビジネス書、学術書を含めた幅広いテーマの書籍を扱いながら積み上げてきた実績。それぞれの領域で人気書籍を手掛けてきた編集者、記者が在籍しているということは、Webコンテンツを展開する上では大きなアドバンテージになるはずです。この強みと広告展開を掛け合わせ、メディアプロデュースというもの1つの方策としてビジネスを展開できるのが、当社の広告ビジネスにある最大の特徴だと、私は思います」（酒井氏）。

たとえば、企業の新規事業をアピールする記事広告をWeb上で発信する、また教育機関の新設学部や教育体系を紹介するページを掲載するなど、編集力を発揮してWebコンテンツを企画・制作できるのが強みだと、酒井氏は語る。その制作力を最大限に生かしながら、デジタルメディアに関する知見やスキルを生かし、現時点では存在しないような広告のあり方を構築していくことが、今後の方針だということだ。

「数年前は、自作の動画を掲載するメディアでの広告配信が盛んになっている現在の状況は想像できていませんでした。同様に、これから2年後、3年後の広告のメインストリームがどのような形になるかということははっきりとわからないはずです。その状況を踏まえ、常に時代の先を見据えながら、自社のリソースを生かしたプロデュースができるかどうかが、今後の当社の事業展開のカギになるのではないでしょうか」（酒井氏）。

これから朝日新聞出版で広告事業に携わる上では、社内にはどのような人材が在籍し、クライアントの課題を解決するためにどのようなコンテンツが有効か、ということを自分でしっかりと考えて提案できる人材だと、酒井氏は語る。そうしたコンサルタント的な視点とWeb関連の知識を併せ持ち、自らのアンテナで情報収集しながら新しいものを生み出していく。そんな人材を迎えたいという考えなのである。

「まず考えてほしいのは、Webメディアを使ってクライアントのために自分が“何をやりたいのか”ということ。そこから“どのように実現していくか”を考え、紙・Web・カスタムコンテンツなどの手法を選択していくことが、これからの広告営業に求められる取り組みだと思います。さらに言えば、過去の広告手法に囚われることなく、常に新しい手法を考えながらより効果の上がる方策を提案することが必要なのではないでしょうか」（酒井氏）。

過去の実績を強みにしながらも、その延長線上にあるものだけにこだわるのではなく、常に新しい形を追求するマインドを持っていてほしいと、酒井氏は新しい人材への期待を語る。テレビや新聞などグループの媒体の豊富さが広告営業の面白味につながるはずだと語る酒井氏は、幅広いジャンルの制作実績のある環境の中で視野を広げ、さらなる自身の成長が果たせるのも魅力だと語ってくれた。

現在は約200名の従業員が業務を担い、その内50～60名が営業職を担当している。社員の特徴について、「とにかくいろいろなキャラクターの社員がいる」と語る酒井氏は、自社の状況について次のように説明してくれた。

「2008年の設立時には、本社である朝日新聞社からの出向社員を中心に構成されていましたが、現在は全体の7割以上が設立後に採用した人材であり、その大半が中途で入社した社員たちです。各自がさまざまなバックグラウンドを持ち、多種多様な文化に触れてきた人材たちの集合体となっているのが、当社の環境だと言えると思います」（酒井氏）。

また意見が言いやすく、風通しの良い雰囲気の中で社員自らが主体的に行動できるという社風があると酒井氏は語る。その社風があるからこそ、指示に従うことを強いることなく、自分のアイデアをもとに行動できるような「上意下達ではない」企業文化があるとも、酒井氏はその印象を述べている。社会人としてのマナーを認識し、メディア事業に関する教育をしっかりと受けた上で、コンプライアンスも重視する姿勢で業務に取り組む。そんな自由かつ高い意識で業務に取り組めることは、これから入社する人材にとっての魅力の1つになるだろう。

「自由な発想で業務に取り組むことができるのは、コンプライアンスをしっかりと順守する意識があってこそだという意識は、社員全員の共通意識となっています。会社側も、ルールをしっかりと重視してさまざまな制度を準備していますし、その制度を最大限に活用しながら自分らしく働けることは、当社で働く上での大きなメリットになると思っています」（酒井氏）。

会社の理念は「すべての人に価値ある一冊を」というもの。この「一冊」は、時代の流れの中で変化していく可能性があるが、消費者やクライアント、そして働く社員にとっての価値を提供し続けるという姿勢は、今後も変わらないと酒井氏は語ってくれた。

「その価値を生み出すためには、“自分の理想を実現するためにはどうしたらいいか”、“目標とする成果を合挙げるためには何が必要か”を常に考える必要があると思っています。高い意識で業務に取り組める当社では、アイデアを生かしたい方ほど力を発揮できると思っていますので、新しいものを世の中に提供したいという思いのある方には、ぜひ当社でチャレンジしていただきたいと思います」（酒井氏）。