株式会社ミリアド

株式会社ミリアドは、印刷業界に特化したコンテンツ制作のノーコードツール『キュリア』の開発、運用を手掛ける会社だ。デジタル対応が求められる反面、乗り遅れている会社も多い印刷業界において、『キュリア』は誰もが簡単に、様々なウェブツールを最短1分で制作できる画期的なツールだ。「印刷会社は、本質的には情報を伝えることが役割であり、従来はその手段が紙であっただけ。あくまでも制作会社であり、紙にこだわる必要はありません。印刷=紙と思うと衰退産業に見えますが、見方を変えるとチャンスに溢れています」こう話すのは、創業者で代表取締役を務める樋口清政氏だ。

イベントをはじめ様々なことの告知に使われるポスター、チラシ、リーフレット等の印刷物。昨今は必ずQRコードが印刷されており、外部リンク、クーポン、ガチャ、スタンプラリー、イベント情報の配信等、様々なデジタルコンテンツと連動している。樋口氏は言う。「従来、印刷屋さんはお願いされたQRコードを貼り付けはしますが、その中身のコンテンツには口を出せませんでした。でも仕事の流れとして、本来、印刷物とデジタルコンテンツは近い関係性にあります。作る手段がなく、提案できないからやっていなかっただけで、潜在的にはチャンスは多かったのです」出力先が紙かデジタルかというだけで、実は流れは同じ。発注側にしても、ワンストップで依頼できればより便利だろう。そう考えて開発したのが『キュリア』だ。

課題は、ユーザーである印刷会社がITリテラシーの面で不慣れなこと。デザインはできるがコーディングはできない。ならばコーディングを自動化すれば、思い通りにコンテンツを作れる。ここを克服すれば、彼らはデジタルに参入できる。樋口氏はそう考えた。加えて印刷会社側の価値観も課題で、「デジタル=紙がなくなる。印刷機器のオペレーターの仕事がなくなる」という思い込みによる拒否感が強かった。「それも誤解です。デジタルコンテンツを含めてマルっと提案できれば、紙の需要もむしろ増えます。ノーコードの『キュリア』なら、オペレーターからの配置転換も容易です」と樋口氏。

この二つの課題を解決するために、『キュリア』はUIにとことんこだわった。ポチポチと押すだけで制作が可能な、直感的なツールとした。実際、ITに不慣れな営業担当が使いこなし、内勤の社員が空き時間に色々なコンテンツを作る等、社内の人的リソースの活用に繋がっているという。

このユニークなツールを世に送り出した創業者の樋口氏は、大手ITベンチャーの出身だ。いくつもの新規事業を立ち上げ、軌道に乗せてきた経験を持つ。起業を考えた理由の一つは、自分の理想とする会社をつくりたかったから。前職は営業色が強めの会社だった。売上重視で、その営業スタイルも、テレアポが多い等、やや前近代的。樋口氏はハイパフォーマーで、活躍していたたものの、「ちょっと違う」という気持ちが拭えなかった。お客様も従業員もハッピーに、持続的に成長する会社を目指して独立した。では、理想の会社で何をやるか。前職で見聞きすることが多かった印刷業界に着目し、『キュリア』を作ったという経緯だ。

最初は苦労した。発注側も印刷会社側も「印刷=紙」と思い込む中で、『キュリア』はその前提を覆す、市場創造型のツールだったからだ。「最初はどこも導入してくれませんでした。プロダクト自体も未熟でしたが、大手の看板を下ろした自分の無力さも知りました」と樋口氏。しかし、結果的にこの経験が、『キュリア』を本当に現場に寄り添った、いいプロダクトにした。断られた会社には「何でですか」と食い下がり、また、最初に導入してくれたお客様には格安で提供しつつ、細かく要望を聞きながら調整した。結果、お客様の満足度が上がり、同業者にも勧めて…という具合に、広がっていったのだ。

印刷業界は、誰もが知っている超大手2社がシェアの大部分を占めている一方で、日常的なちょっとした印刷物を担うのは、無数にある中小・零細の印刷会社だ。樋口氏によると、その数は2万社にも上るという。1件1件当たるのは現実的ではないため、業界トップクラスのシェアを誇る企業様提携し、流れの上を抑えて普及を図る作戦で、狙い通りに進んでいる。

普及が進むと『キュリア』の真価が発揮される。『キュリア』の最大の資産はデータだ。大量のイベントとコンテンツのデータが蓄積される。「今はツールの営業が中心ですが、次は二つの方向性、つまりツールとデータ活用の提案ができます。現在、コンテンツ作成を通じて年間約1万5,000件のイベントに関与しています。3年後には10万件に達する見込みです。これだけのイベントのデータを持つ企業はなく、関心を持ってくださる企業さんは多いです」と樋口氏。同様に、コンテンツデータも加速度的に蓄積される。直感的なUIが特徴の『キュリア』だが、最終形は、ボットで要望を伝えればAIで最適なコンテンツが提示される――そんな姿に進化させる構想だ。

ユーザー企業は、ひとたび『キュリア』を使うとその便利さを知り、解約はほとんどないという。実際、活用して売上を大幅にアップさせた事例も出てきている。現在は、ゼロイチが終わって、1から10へと成長させているフェーズ。代理店と協業先も確保し、10が100、200と成長するベースは着々と整いつつある。その先には、もっと大きな構想を描いている。クライアントは印刷会社から広告代理店へ、さらに一般企業へと広げ、同時にtoC=コンシューマーへも展開し、より多くの企業と個人のクリエイティブをアシストする存在になる構想だ。

海外展開も視野に入れている。『キュリア』は、日本ほど紙の印刷が普及していない海外でこそ、より価値を発揮するツールでもある。日本企業の海外進出はもちろん、海外企業にも直接アプローチし、単なるノーコードツールではない、貴重なデータが詰まったノウハウの固まりとして、国内外を問わず展開していく考えだ。

構想の実現には、新たな仲間が必要だ。ミリアドは元々、理想の会社をつくりたくて立ち上げただけに、働きやすさと成果に対して報いる仕組みも追求している。フルリモート勤務で働き方の自由度を高めると共に、オフィスにかかる固定費を圧縮。その分を社員に報いる。例えば営業担当には、売上の一定割合を報酬として還元する。様々な裏方的な仕事に対しても、細かにインセンティブを設定し、働きに報いる。ちなみにフルリモートの分、自宅で快適に働ける環境を整えるために、月額3万円をライフスタイル手当として支給している。社員旅行等のイベントも盛んで、コミュニケーションも良好だ。

「せっかく入社してくれた社員が辞めてしまうのはキツイです。辞めてから『何で？』と思うより、最初からいい条件にして辞めないでくれた方が嬉しい」と樋口氏。実際、立ち上げ以来、辞めた人はわずか二人。それも致し方ない理由だった。上場会社から転職してきて成果を上げ、年収が2.5倍になった人もいる等、社員は思い思いに働き、活躍している。

フルリモートの分、評価軸は成果で平等にする一方で、社員一人ひとりに寄り添い、目標達成やキャリアプラン実現のためのフォローも惜しまない。誇れる自社プロダクトがあり、厳しいが、分かりやすく働きやすい。ミリアドはそんな会社だ。「上場を目指しています。今、入る人はコアメンバー。チャンスは多く、成長速度もどこよりも上げられると思います。起業希望者も歓迎します」樋口氏からのメッセージだ。間違いなく得るものは多い会社だろう。