小平株式会社

小平（こびら）株式会社は、鹿児島県鹿児島市に本社を置き、エネルギー（LPG、電力）、国際貿易、ITソフトウェア開発、ガソリンスタンド事業等、多角的に事業を行う総合商社である。同社は鹿児島から九州地方だけでなく、北中米、アジア、東南アジア、中東、EU等を含めたグローバルなビジネスを展開している。1912年に鍛冶屋として創業して以降、110年以上地域の暮らしを守りながら新しいビジネスに挑戦してきた。

現在、代表取締役社長を務めるのは4代目の小平勘太氏。京都大学農学部を卒業後、米イリノイ大学院に進学。大手コンサルティングファームのITコンサルタント、農業ベンチャーのCEO等を経て、2012年に現職に就任した。
小平氏は、2026年8月（予定）の太陽ガス株式会社との合併およびカンパニー制への移行を見据え、同社の経営基盤と組織の在り方を改めて見直している。その一環として、従来のMission／Vision／Valueに代わるものとして、新たに「理念・志・流儀」を策定し、これからの事業運営や人材・組織づくりの軸として位置づけている。

その際、CHRO（最高人事責任者）として池田亮平氏を招き入れる。池田氏は東京大学文学部を卒業後、コーポレートデザインや大手生保でのライフプランニング経験を持ち、多拠点居住のプラットフォーム「ADDress」の運営に携わりながら鹿児島市に移住してきた人物だ。

同社では現在、合併およびカンパニー制移行を見据え、組織体制や人事の在り方についても継続的な見直しを行っている。
役割や責任を明確にしながらも、環境の変化に応じて柔軟にアップデートできる組織を目指している。

人事制度においては、短期的な成果や個人の評価に偏るのではなく、チームとして安定した価値を生み出し続けることを重視。
理念・志・流儀を判断軸とし、日々の行動や意思決定が評価に結びつく仕組みづくりを進めている。

また、働き方についても、職種やライフステージに応じた柔軟な選択を認めている。
リモートワークやフレックスタイム制を取り入れ、場所や時間に縛られずに力を発揮できる環境を整えてきた。

こうした取り組みの背景にあるのは、「事業の成長と人の成長を切り離さない」という考え方だ。
社員一人ひとりが安心して挑戦できる土台をつくることが、結果として地域や社会に持続的な価値を届けることにつながると考えている。

合併や組織再編といった大きな変化を控える今だからこそ、完成された組織を目指すのではなく、
変わり続けながら学び、育っていく組織であることを大切にしている。

KOBIRAの事業は、エネルギー、IT、国際貿易と多岐にわたるが、その根底にある考え方は共通している。
それは、地域の当たり前を支えながら、次の形へと更新していくことだ。

エネルギー事業では、地域の暮らしに欠かせないインフラを長年にわたり支えてきた。
IT事業では、福祉、デリバリー、社会基盤といった分野で、現場に深く入り込みながら業務改善や事業変革を支援している。
国際貿易事業では、地域で生まれた価値ある商品を世界につなぎ、新たな市場を切り拓いてきた。

いずれの事業においても重視しているのは、「何をやるか」以上に「どんな姿勢で向き合うか」である。
専門性を持ちながらも、自分の領域に閉じず、事業や地域全体を捉えて考えることが求められる。

こうしたスタンスを支えているのが、理念・志・流儀を軸にした人と組織の考え方だ。
成果は個人ではなくチームで生み出すものと捉え、互いに支え合いながら安定した価値を出し続けることを大切にしている。

CHROの池田氏は、自身の発信でも触れているように、
「働くこと」と「生きること」を切り離さず、地域や社会との関わりの中でキャリアを築くあり方を重視している。
KOBIRAの事業は、その実践の場でもある。

同社は2024年、本社を鹿児島市から日置市湯之元地区へ移転した。
かつて温泉街として栄え、現在はシャッター商店街となっているこの地を、新たな挑戦の拠点として選んだ。

日置市と連携協定を結び、湯之元を「ウェルビーイングタウン」へと再生する取り組みを進めている。
新本社は、社員全員が集まる場所ではなく、街全体をオフィスと捉える発想のもと設計されている。
空き家を活用したミーティングルームやワーキングスペースなど、「街まるごとオフィス」という構想が動き出している。

さらに現在は、自然環境と人の暮らしが共存する地域モデルを目指す「湯之元ネイチャーポジティブ・ラボ」も始動した。
エネルギー、環境、テクノロジーを掛け合わせ、実証実験や外部との共創を通じて、新しい地域の価値を生み出そうとしている。

これらの取り組みは、理念・志・流儀を掲げるだけでなく、実際の事業や場づくりを通じて試し、磨いていくための実践である。

完成された正解があるわけではない。
試行錯誤を重ねながら、街とともに変化し続ける。
そのプロセスに当事者として関われることこそが、今のKOBIRAで働く大きな魅力だろう。