株式会社GFL

株式会社GFL（ジーエフエル）は、コピーライティング自動生成ロボットを開発・提供する不動産Techベンチャー。GFLが開発した『不動産AIセールストーク』は、切れ味鋭い表現力とロジカルな統計計算のあわせ技で、デキる営業マンのような"人の心を動かす"セールストークをAIが自動で生み出す。

不動産の営業担当者や一般生活者のアンケートスコアと100万件を超える物件統計データベースを照らしあわせ、その物件ならではの強みを抽出。プロライターが事前に書いた1万ものフレーズを収めたデータバンクの素材を用いて、AIが論理的かつクリエイティブな文章を組み立てる。

「ChatGPTが世の中で話題になっていますが、当社の『不動産AIセールストーク』もChatGPTのような生成系AI（Generative AI）にあたります。「言葉を生成する」ということがまだ絵空事だった2018年に、シンプルで合理的な「情報生成システム」としてセールストーク生成機構を思いつき、事業を不動産コメント生成にピボット。昨年22年に特許取得できました」（代表取締役・田邊学司氏）

2020年、アットホームと業務提携を結び、アットホーム加盟店専用サイトに、物件のおすすめコメント自動生成機能が導入された。AIによる「不動産クロージング技術」に関する共同研究で生まれた、不動産AIセールストークの具体的な活用法だ。

「不動産サイトの物件情報にはおすすめコメントが掲載されていますが、それをAIで自動生成します。現在、月間4万件以上の物件情報リクエストに応じ、ユニークなコメントを自動生成しています。不動産の営業担当者が物件のおすすめコメントを作成するのに1物件あたり平均8分半かかるとされているところを、不動産AIセールストークを活用すれば数秒で文章生成することができます」（田邊氏）

これまでは担当者のスキル・経験・勘といったものに依存し属人化していたが、物件の強みをAIが抽出し魅力的なキャッチコピーを自動生成することで、経験の浅い営業担当者でも顧客の心に響くメッセージを考えることができるようになる。『不動産AIセールストーク』によって不動産の営業が進化するといっても過言ではないだろう。

不動産サイトの物件おすすめコメントの生成やAIによるセールストークの実現を目指しているGFL。代表の田邊氏は、不動産業界ではなく広告業界でキャリアを築いた人物。総合広告代理店である博報堂で20年間、マーケティングの最先端を歩んでいた。

深層心理型のアンケートや脳科学とマーケティングの関係を研究してきた田邊氏は、アンケートのゲーミフィケーションサービスを提供するためにGFLを設立した。GFLの社名は、Gut Feeling Laboratory（ガット・フィーリング・ラボラトリー） の頭文字。ガット・フィーリングとは直感や「なんとなく」の意味を持ち、田邊氏はこの「なんとなく」の正体を追い求めてきたのだ。

「人間は一見論理的なようで、実際ほとんどの行動や判断は『なんとなく』で動いているといわれます。GFLはテクノロジーとクリエイティビティを組み合わせ、人間の『なんとなく』に訴えるマーケティングのしくみを追求しています」（田邊氏）

ここ数年で目覚ましい進化を遂げたECサイト。しかし、なぜか商品を勧める理由だけは"レコメンド"という名の「他の人はこれを見ています」の一本調子。レコメンド機能の限界も囁かれている。GFLは、AIの力で「勧める理由」を生成する。勧める理由が見つかれば、提案できる商品の幅は広がりビジネスチャンスが増えるはずだ。

「例えば、一般的には葛西周辺で物件を探している人に逗子の物件は勧めません。しかし、もし物件を探している人の趣味が釣りで、なおかつ最近リモートワークになって都心から離れた場所でも住めるようになっていたら？ 海に面しており、東京まで通える距離である逗子も候補になるはずです。当社は事業の目的であるパーパスを『思考拡張』と設定しています。葛西に住む予定だった人が逗子のマンションを勧められたことで、視野や選択肢が広がる。提案に説明を加えることで、人間の視野を広げ、気づきを与えることを目指しています」（田邊氏）

駅チカ・高層マンション・築年浅。これを頂点に、不動産物件はヒエラルキー構造になっている。駅から遠く、低層階の築年数の古い物件は価値が低いとされる。しかし、ユーザーニーズに即するならば、不動産物件にも多様性があるはず。その多様性を掘り起こすことで新しい価値を創造する。

「その人が求めるものに対して、ちゃんとした説明を付けて提案するのがマーケティング。人の心を拾って、人に届く言葉で伝える。それが真のマーケティングです。マーケティングを少しでも自動化し、ビジネスチャンスを効率的に生み出し、ユーザーにはニーズに即した製品やサービスをきちんと提供できる世の中を作る企業でありたいと考えています」（田邊氏）

AIセールストークの開発は、登山に例えればまだ一合目をクリアしたところ。アウトプットのクオリティや物件の強みを抽出するためのAIエンジンもブラッシュアップが必要で、自動生成技術のさらなる高度化を目指している。

「AIの開発と聞けばデータサイエンスの知識が必要だと思われますが、当社の自然言語生成技術は、今どきのいわゆる『フルAI』ではなく、人間とテクノロジーを組み合わせたハイブリッド型。ある意味原始的なものです。システム開発の経験があればチャレンジできる仕事です。不動産では虚偽や過剰表現などに対する規制が厳しく、ChatGPTなどが繰り出す奇想天外な物語もダメ。とはいえ当たり障りのない表現では何も心に響きません。嘘偽りなく、それでいて想像力を働かせ、物件や暮らしに魅力を感じさせる言葉を繰り出すには、生成系の『Generative AI』に大きな可能性を感じています」（田邊氏）

GFLは少ない人数でインパクトのある開発をしているベンチャー企業なので、積極的に自ら考え動く人材にマッチする会社といえる。バーチャルファーストを打ち出して、働き方も基本リモートワークだ。

「無駄に集まるつもりはありませんが、世の中にないものを創造する仕事であるコンセプトワークは、ホワイトボードを囲んでのディスカッションを必要とします。そのために、横浜みなとみらいにシェアオフィスを借りています。答えのないことを考えるミーティングには沈黙の時間が生じます。リモートだと『沈黙の時間』が作りにくいため、週に2日程度は出社してほしいと考えています。とはいえ通勤の苦労は少なくしたい。そのために完全フレックスにして通勤ラッシュをうまく避けられるようにはしています」（田邊氏）

年間休日が133日あり、充実したワークライフバランスを実現したい人材にもマッチする会社。それぞれの個人的な事情を汲むことができるのも人数が少ない会社のメリットといえる。

「"よい仕事"は心身が健康でないとできません。当社のメンバーにはしっかりと休んで"よい仕事"をしてほしいと考えます。仕事が多くなると生産性は落ちます。元気でないと勇気のある決断はできません。おもしろいアイデアも出ません。会社の思想を受け継ぎ、チームで動いてGFLの思想を広げ、会社を大きくしてくれる人材を求めています」（田邊氏）