株式会社VOISING

昨今の音楽シーンを語る上で欠かせない存在となっている“歌い手”。その活動範囲は、動画共有サイトやSNSといったインターネットを軸としながら、徐々にお茶の間にも浸透しつつあり、勢いは加速するばかりだ。そんな中、歌い手同士がグループを組んで活動する動きが広がっている。今回取材した株式会社VOISINGは、かつてないスピードで人気を博している、『いれいす』『すたぽら』『シクフォニ』の歌い手3グループが在籍している、日本最大級の2.5次元アイドルグループ事務所だ。事務所の代表者でありながら、自身も『いれいす』のリーダーとして活動する、ないこ氏に設立の背景を伺った。

「2020年4月頃から歌い手の活動を始めました。もともと会社員として働いていたので、最初は趣味としてやっていたのですが、徐々に本格的に取り組みたいと思うようになったのです。ちょうどその頃、歌い手界隈はグループを組むことが流行っていました。一緒にできたら良いなと思う素晴らしい歌い手もいましたし、グループを組むことで共に成長できたら面白いなと思い、『いれいす』を結成。組んだ当初は、全部自分たちでグッズを作ったり、ライブを開催したりしていました。活動を続ける中で、よりリスナーの期待に応えたいという気持ちが強まっていき、その結果、自分たちで事務所を設立するという結論に至ったのです。また、歌い手の文化圏を広げたい、皆で歌い手界隈を盛り上げたいという想いもあったので、志が同じ『すたぽら』『シクフォニ』にも合流してもらい、3グループで事務所を始動しました」

そんな同社の特徴は、「自分たちで考えて、自分たちで道を選び、自分たちで切り開いていく」という点だ。もともとタレントたちは、「リスナーが本当に喜ぶものは何か」という視点から、自分たちでグッズを作り、ライブを行い、配信等を手掛
けていた。まさに“自己プロデュース力”に非常に長けていると言えるだろう。この考え方は事務所設立後も全く変化しておらず、社内ミーティングにはメンバーも参加し、社員と共にディスカッションし、メンバーが最終ジャッジを下す。こうした取り組みから、メンバーと社員が一丸になって、グループ、事務所、さらには歌い手界隈全体を盛り上げていこうという機運が醸成されているという。

「とにかく社内は活気に満ち溢れていますね。社員が各グループのコンテンツを好いていてくれて、カラオケに行くとグループの曲を歌ってくれるくらい理解してくれています。仕事をする上で動画や楽曲、リスナーへの理解が大切なので、そうしたことを学んでいただきますが、もちろん入社後に知っていただく形でも大丈夫です！」（ないこ氏）。

2022年10月に設立されたばかりの同社。市場自体が成長領域のため、新たな仕事や挑戦の機会が次々に生まれている。例えば、世界的に話題となっているChatGPT等の最先端のAIを使用し、会社全体の業務効率化を推進するAIチームが発足された。担当者の決め方は提案者、適任者、挙手制等、様々だが、職種の垣根を超えて挑戦することが可能だという。社員の挑戦を推奨する背景には、ないこ氏や他のタレントたちが、自分の力だけでグッズを作り、歌い、配信していた――という過去が関係している。この名残が社内に広がり、社員のチャレンジ精神を引き出しているのだ。

歌い手市場は成長期であり、開拓の余地はまだまだあると語る、ないこ氏。競争が激しく、流行のスピード感も早い市場ではあるが、だからこそ力を入れているのがコンテンツ力だ。リスナーに届けるコンテンツは、ライブ、グッズ、イラスト、動画等、その領域は幅広く、生み出すには専門的な人材がマストなため、これまでは業務委託のスタッフに参加してもらうことが多かった。しかし、これからは会社としての基礎力を上げていくために、各領域の経験者を募り、内製化を図る想定だ。

この記事を読んでいる人の中には、「芸能・アイドル領域を扱う企業なので、これまでいた企業と文化が違う」と思う人もいるかもしれない。確かに扱うコンテンツは異なるかもしれないが、実際はスタートアップ・テック企業に近いような雰囲気が社内には流れている。会社自体が立ち上げ段階のため、一人ひとりの裁量度合いが高い。そして20代中心の会社のため、非常にポジティブで活気もある。さらに他チームのプロダクトが完成すると、自然と社員が集まり、皆で意見交換して、より良いプロダクトを目指す――こうした社内の雰囲気は、まさにスタートアップ企業のそれと言えるだろう。

同社の今後の展望について、ないこ氏は次のように語る。

「リスナーが喜ぶグループを増やしていきたいですね。『VOISINGに所属しているグループは全部好き』と言われるように、どのグループも人気があり、評価もされるような集団を目指したいです。何十年後には、お母さんはあのグループを推していて、娘さんはこのグループを推している、といったように、世代を超えた楽しみ方ができる事務所にしていくのが、私たちの目標です」

実際に働く社員の中には、「これまで副業を含めて10社ほど経験してきたが、VOISINGほど元気で盛り上がっているオフィスはない」と言うほど、社内は活気に満ち溢れている。さらに、同社の仕事がない日でも、“楽しいから”という理由でオフィスに出社するそうだ。社員同士の仲が良く、素直で、ポジティブな人ばかりが、ないこ氏の元に集まっている。

また、経営陣との距離が近く、一人ひとりの裁量が大きいのが特徴だ。実際に、経営陣に何度も自分のアイデアを断られながらも、試行錯誤を繰り返し、4回目にしてチャンスを掴み、最終的にアイデアを実現した社員もいる。経営陣自らが社員に声をかけることも多く、ときには社員の隣の席に座り、話しかけることも。こうした環境なので、入社してすぐの社員にも発言するチャンスが大いにあるのだ。

まさに今、立ち上げ段階である同社。想定していた以上に事業が急拡大しているため、労働環境や評価制度等、最適な環境を整えている真っ最中だ。例えば、労働環境。エンタメ業界ということもあり、どうしても遅い時間帯や休日の稼動も発生するが、その分、振替休日等の仕組みはすでに取り入れられている。今後は職種ごとに適した制度を導入する予定で、フレックスタイム制度等を採用する予定だ。

また、教育制度においては、マネージャー層向けの教育をスタート。各部署のマネージャーが部下の育成計画をそれぞれ作成している段階だ。さらに社会人経験が浅い社員もいるため、ビジネス基礎力を上げる研修を用意したり、全社向けのビジネスマナーを作成したりしている。

そんな同社が求めるのは、一緒に事務所、グループ、そして歌い手界隈を盛り上げていける、エンタメが好きな人だ。社内には自社コンテンツが好きな人が多いため、そのカルチャーがフィットする、もしくは異なる分野のエンタメでもハマった経験、熱中した経験がある人は、早期に活躍できるだろう。

「働いていて楽しい！という環境作りには自信があります。人生において、働いている時間って意外と長いですよね。だから、社員には仕事でも好きなことをして、自己実現して、成長して、生き生きと働いて欲しいと思っています。今、当社はまさに立ち上げ期の真っ只中です。会社と一緒に成長できる貴重な経験を得られますし、今入社することで将来的に重要な役職にも就けるでしょう。ぜひ私たちと一緒に、歌い手市場を盛り上げていきましょう！」（ないこ氏）。

歌い手コンテンツを扱ってはいるものの、社内の雰囲気はスタートアップ企業そのものの同社。急成長している領域だからこそ、着実にスキルアップに繋がるはずだ。年齢や年次に関係なく、社員の挑戦を推奨する同社であれば、自発的に行動したい人、自走力のある人にとっては、チャンスが豊富に転がっている環境と言えるだろう。