株式会社イエソド

クラウドID統制プラットフォーム『YESOD』を提供している、株式会社イエソド。
SaaSの利用が加速度的に広がるビジネス環境にある中、『YESOD』は組織の従業員や個人に紐付く複数のSaaS・各種システムのIDデータベースを簡単に構築し、部署横断的に一元管理できるクラウド*IGAソリューションとして、ユーザーの業務効率化に貢献している。

例えば、営業・マーケティングでは『Salesforce』、財務・会計では『freee』、労務管理では『SmartHR』といったように、部門別に多種多様なSaaSが活用されている。1社あたりの導入数は平均20以上とも言われる中、管理部門ではその把握・管理が煩雑化し、大きく3つのリスクに曝されている。

1つ目は、業務負荷の増大による管理コストの上昇リスク。「社員の入退社や組織変更があると、アカウントの登録や削除で一日が終わってしまう」という声が典型的だ。
2つ目は、情報漏洩などのセキュリティリスク。退職社員のアカウントが有効のまま、といったケースが少なくない。
3つ目は、内部統制リスク。「誰がどんな権限でSaaSを使っているのか把握できていない」といった悩みが多い。

こうした課題に対し、『YESOD』は次のソリューションを提供する。
①YESODディレクトリサービス
散在する従業員や業務委託スタッフ及び組織情報をマスターデータベース化し、IDライフサイクルに基づき時系列データも合わせて集約。CSVやAPIで柔軟に入出力できる。
②YESODアカウントコントロール（2023年11月リリース予定）
ディレクトリサービスの人や組織情報の属性値変更に連動し、各種SaaS/システムのアカウントや権限設定を自動適用。業務負荷や運用コストを削減する。
③YESODアカウント棚卸
複数のSaaSアカウントと連携し、「誰が・どのSaaSを・どんな権限で」利用しているのかをモニタリング、ルール違反を検知する。

『YESOD』の特長は、次の3点が挙げられる。
まず、組織情報を時系列的に管理できること。これにより、例えば来月入社予定メンバーのID登録を予め行えることで、月末・月初に集中しがちな管理業務の負荷分散ができる。
次に、管理項目をユーザーが自由に設定できること。SaaSごとに管理項目が異なる場合、別途スプレッドシートなどでアナログ的に管理する必要があったが、こうした手間を一掃。
そして、権限管理が柔軟に行えること。部署をまたいだプロジェクトなどで共通のデータベースを使いたいが、メンバーの部門ごとに閲覧権限が異なるといった場合も柔軟に設定できる。これにより、グループ会社をまたいだ組織管理も可能だ。

『YESOD』は、2021年3月の『YESODディレクトリサービス』リリース以来、大手IT関連会社の4,000名規模の統合人事・組織マスタとして導入されるなど、ユーザーを徐々に拡大。2023年11月の『YESODアカウントコントロール』リリースで一気にブレイクする見込みだ。

＊IGA：Identity Governance & Administration＝人や組織等の属性情報とアクセス権に関わる情報とを集約・関連付けし、IDライフサイクルとアカウント・権限付与を統制管理する分野

同社の設立は2018年9月。その創業ストーリーは次のとおりだ。

創業者で代表取締役の竹内秀行氏は、創業期の大手情報関連企業にチーフテクノロジストとして参画し、企業・業界情報プラットフォームやソーシャル経済メディア等の基幹プロダクトの開発に携わる。その後、株式上場を目指す同グループ全体の情報セキュリティや内部統制のリスクコントロールも担うことになった。そこで、管理部門で使用しているサービス及び組織や従業員の情報を洗い出そうとしたところ、Excelなどでアナログに管理されている状態に直面。「誰がどんな権限でどんなSaaSを使い、いつどのSaaSを更新したのか」といった現状を把握することができなかった。こうした状態を解決するプロダクトを探したものの見つけることができなかったことを機に、自ら開発することを思い立つ。

当時、「この領域でシステムを正しくつくれるのは自分しかいない」と感じ、一企業の社内システムにとどまらせるのではなく、同様の状況に直面しているであろう数多くの管理部門の人向けに提供しようと起業を決断する。

掲げたMISSIONは、次のとおり。

【企業の人・組織・情報にまつわる非効率をなくす】
私たちは、革新的なテクノロジーを駆使し、すべての企業が人・組織・情報をより効率よく、正しく、安心して活用するための確かな情報基盤をつくります。
人々が創造的な価値を生む機会を増やし、新たな挑戦の一歩を踏み出すことを全力で後押しします。

『YESOD』によって無駄のない管理業務を実現するとともに、創出できた時間を新たな挑戦に繋げてもらう。そこにこそ『YESOD』の価値があるということだ。期待を集め、2020年にはプレシリーズAラウンドで総額2億円の資金調達に成功している。
ユーザベースで竹内氏とともに前職で企業・業界情報プラットフォームの開発をリードし、その後2社を経て2023年7月に同社にジョインしたばかりのエンジニアリングマネージャー・石橋隆平氏（インタビュータブ参照）は、同社のビジョンについて次のように話す。
「当面は『YESOD』ワンプロダクトに集中し、その機能拡充とGTM（Go to Market）にあらゆるリソースを注ぎます。2025年までにシリーズBの調達を行い、2028年頃にはIPOをして投資家の期待に応えた後、グローバル展開に打って出たいと考えています」
グローバルには『SailPoint』というIGAソリューションの先行者が存在しているが、「費用は『YESOD』の10倍。十分勝負できると考えている」と石橋氏は強調する。

同社の体制は、役員・社員10名、フルタイムの業務委託2名（2023年9月現在）。その就労環境は「スーパーホワイト」と石橋氏は形容する。
「フルフレックスで超過勤務もなく、有給休暇は普通に取れて、かつ半年ごとに平日5日間連続して休暇が取れる制度もあります。自社プロダクトとして開発スケジュールがコントロールできるメリットを発揮している形です」

石橋氏がエンジニアリングマネージャーとして赴任したことで、「よい面は残しながらも、やや個人主義的な面が強かった組織運営を変えていく」と話す。
その内容は、個人主義による分散型ではなく、チームワーク重視のファシリテーション型。
「マネージャーの権威やルールで引っ張るのではなく、メンバー全員がリーダーシップを発揮し、ワンチームとしてパフォーマンスを最大化させていきます」（石橋氏）。

働き方はリモートワークを基本としつつ、週1日は出社して顔を合わせてチームワークを強化する。それとともに、メンバーがモチベーション高く仕事に臨み楽しめるように、タスクの目的とゴールを明確にし、メンバーがやりたいタスクを選んで自由なプロセスで取り組めるようにする。「“これで勝負する”というこだわりタイプも、“誰もやらないから自分がやる”というバランサータイプも、どちらも同様に評価する」と石橋氏は言う。

人材育成の観点では、竹内氏・石橋氏とメンバーとの2 on 1、及び石橋氏とメンバーとの1 on 1を月1回ずつ実施。どんなことでも話す場にしている。「特に、メンバーのキャリアプランを聞き、それに役立つ勉強や業務経験等のアドバイスは喜ばれている」と石橋氏。
コミュニケーション活性化も兼ねて、勉強会も工夫する。同社の本社オフィスは、東京・品川インターシティ内のスタートアップが集うインキュベーションオフィス「SPROUND」内。
「10社ほどのスタートアップが入居しているので、他社も巻き込んだ刺激的な勉強会を企画していきたいと考えています」（石橋氏）。

そのほか、同好会活動も楽しむ。登山が好きな石橋氏が仲間を募って行ったり、釣り好きで魚もさばけるメンバーが中心の同好会などがある。なお、会社は各メンバーにコミュニケーション予算を用意しており、飲食代などの形で支援している。

そんな同社が求める人材像について、石橋氏は次のように期待を寄せる。
「チームワークを重視するとともに、技術が好きで、自分のつくったソフトウェアで人を幸せにしたいと思っている方に来てほしいと思っています」