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インタビュー画像代表取締役 吉成 隆杜氏 日本のゲーム業界を黎明期から知るビジネスパーソン。アーケードゲームからファミコン等の家庭用ゲーム機、さらにはスマホゲームまで、常にゲーム業界の最前線でゲーム開発をしてきた。主にビジネスの側面でゲーム作りに関わり、クリエイターがゲーム作りに打ち込める環境の整備に努めてきた。趣味は、13歳の頃から60年以上続けている柔道で、講道館七段の腕前。

ゲーム業界に入ったきっかけは?

ゲーム作りを生業にする前、私はセールスマンでした。1978年の創業当時、当社は「サクセスアチーブメント東京」という会社名で、アメリカの会社が作った自己啓発の教材を販売していました。1セット20万円ほどもする高額商品で、顧客の一人にソード電算機システムの社長がいました。ソードは、コンピュータがとても高価な時代に20万円台という格安のコンピュータを開発・販売していた会社。「日本のアップル」と異名を取っていました。その会社の社長に「うちのマイコンを売ってくれない?」と声を掛けられたのが、ゲーム業界に入る最初の一歩でした。 コンピュータについて猛勉強をしましたが、一般の人がコンピュータを使うにはまだハードルが高いと感じ、申し出は辞退しました。ただ、コンピュータの勉強をする中で「インベーダーゲーム」に興味を持ちました。当時はインベーダーの最盛期。業界内では「インベーダーの次は何が流行るのか」「インベーダーのブームはいつまで続くか」といった議論がありました。インベーダーは飽きられて、新しいゲームが登場すると考え、次に流行るゲームを探り始めました。

サクセスが最初に開発したゲームは?

インベーダーの次に来るゲームを考えるといっても、当時は他にゲームがありません。全く手本がない状態で考えていました。海外にベースボールゲームがあることを知り、野球ゲームのモチーフが浮かびました。こうして当社の最初のゲーム『PLAY BALL』の開発が始まるのですが、ソフト開発の前にアーケードゲーム機の基板作りが必要でした。アーケードゲームというのは、回路設計から始まります。どんな解像度にするか、発色は何色にするか、どんなICを使うか等を決めて、回路図を書いて試作基板を作ります。 『PLAY BALL』のキャラクターデザインは、最初デザイン会社に発注したのですが、上がってきたデザインは私の意図が全く伝わっておらず、気に入らないものばかり。子供の頃から絵が得意だったこともあり、結局自分で描きました。1996年頃まで私もゲームのキャラクターデザインを描いていました。全部で100タイトルぐらいでしょうか。社長室の壁にかけてある絵も、私が描いたものです。

サクセスの最初のゲーム『PLAY BALL』は成功しましたか?

2年間の歳月を費やし、家を1軒買えるほどの資金をつぎ込んでようやく完成した『PLAY BALL』。意気揚々と基盤を3,000枚作りましたが、結果は惨敗。売れたのはたったの80枚弱。ただ、手元には売れ残った基板がいっぱいありました。その基板に違うソフトを載せて売ればいいわけですから、次のタイトルを開発しました。 当時のサクセスの社員は私とプログラマーの二人だけでした。プログラマーが作業している間は、私も彼に付き合ってずっと会社に残っていたのですが、専門的な作業は手伝えないから、マイコンのオセロゲームで暇つぶしをしていました。おそらく1年以上やっていましたね。それでも飽きない。これは売れるのではないかと考え、2作目に『オセロ』を選びました。『オセロ』が何とか売れて、最初に作った基板を使い切ることができました。

これまでに開発したゲームで思い出に残るタイトルは?

『PLAY BALL』から4年後の1987年に出した『とんとん』という店頭機が当社のターニングポイントになりました。当時、遊園地、おもちゃ屋、駄菓子屋では「ジャンケンマン」「新幹線ゲーム」といった10円玉で遊べる子供向けのゲーム機が店頭に置かれて人気でした。当社が開発した『とんとん』は、テレビモニターを使った初めての店頭機で、パンダのキャラクターを使ったメダルゲーム。当社は基板とソフトウェアの両方を開発しました。確か1,500台は売れました。その後しばらくは、競業がいない状況だったので、次々と子供向けメダルゲームを作り、一つの新しい市場を作りました。それを見て大手メーカーが次々と参入し始め、それがその後の『ムシキング』に繋がったわけです。 ずっと時代は下りますが『SIMPLEシリーズ』も思い出があります。5,800円がPSのソフトの標準的な売価であった時代に1,500円で買えるソフトとして大ヒット。初期のタイトルは当社が開発したものです。将棋、囲碁、麻雀、リバーシを1本のソフトに収めた『ゲームの達人』というゲームを開発しましたが、思うように売れませんでした。着想を逆転させて1,500円で買える麻雀ゲームソフト『SIMPLE1500シリーズ Vol.1 THE 麻雀』が誕生。業界の常識を破るようなゲームソフトで、100万本を達成した記憶に残る作品です。

若いクリエイターへ向けたメッセージをお願いします!

安定的に安心してクリエイターがクリエイティブに打ち込めるような環境を作りたいと願っています。ゲーム業界の黎明期から現在までを知っている身として、家に帰らないで会社に置いてある寝袋で寝てまでゲームを開発し、仕事に精を出すあまり、家庭が崩壊したり健康を害してしまって鬱になったり、そういう人達を今までいっぱい見てきました。家庭を壊してまで、自分の健康を犠牲にしてまでやる価値のある仕事なんか世の中にはないと思います。だから、当社をクリエイターが健康的に働ける会社にしたいと考えて経営しています。 若いクリエイターには「本を読め」と言っています。会社でも月5,000円を上限に書籍購入補助を設けてバックアップしています。日本のヒット作クリエイター、例えば任天堂の宮本さんとか、ファイナルファンタジーを作った坂口さんとか、優秀なクリエイターはみんな頭脳明晰で博学ですよ。元カプコンのデザイナーの人で、異常な勉強家を知っています。その人は、良い作品を作るんですよ。クリエイターは常識的に物を見ていては、良い物を作れません。ちょっとぶっ飛んだ発想をするためにも、本を読んでいろんな知識を蓄える必要があります。あとは、ゲームを沢山やることです。ゲーム会社で働いているなら、ゲームをすることは自己投資ですからね。

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