株式会社GASY

株式会社GASYは、2020年2月設立のスタートアップ。Web広告代理事業をメイン事業に据えている。Web広告の事業は、プレイヤーが大勢いるレッドオーシャン。他社との差別化も難しく、事業を急拡大させるのは一筋縄ではいかない。そんな飽和状態にあるWeb広告業界にあって、同社は独自のやり方で急成長している。

リスティング広告・ディスプレイ広告・アフィリエイト広告・バナー広告・SNS広告等、Web広告には沢山の手法がある。その中で、同社が得意としているのは「メール広告」。企業やメディアが登録者向けに各種情報を届ける「メールマガジン」にクライアントの広告を掲載する手法である。同社は大手企業のメルマガにクライアントの広告を掲載するために、ちょっとした工夫をしている。

クリック課金・インプレッション課金・エンゲージメント課金・成果報酬型課金・配信数型課金等のWeb広告における報酬形態は、これまた複数ある。同社がメール広告で売上を伸ばすために工夫しているのは、この「報酬形態」の最適化だ。

「メール広告の多くが配信数型課金を採用しており、クライアントにとっては広告効果のいかんにかかわらずまとまった予算を必要とするため、Web広告の中でも敷居が高いとされてきました。当社はメルマガ発行企業に対しては配信数型課金で広告掲載料を支払い、クライアントからは成果報酬型課金で広告費を頂いています」（代表取締役・吉田祐氏）。

同社独自のメール広告のビジネスモデルは、媒体側と広告主のニーズを調整してこれまでは不可能だったマッチングを実現することで、収益を上げている。媒体側・広告主の双方にメリットがある、Win-Winなビジネスモデルだ。ただし、同社には“採算割れ”のリスクがある。そこをGASY独自のノウハウをもってリスク低減することで、売上を伸ばしている。

「独自で媒体とのネットワークを構築し、配信媒体数は80媒体、配信可能人数は1億人以上。過度なリスクとならないように、広告主の商材をしっかり見極めて、適切な媒体に配信するのがポイントです。事前にシミュレーションをしているので、採算割れすることは、まずありません。今年で4期目ですが、前年の売上高は2.9億円。今期は4億円～5億円の売上を見込んでいます。早い段階で売上10億円にするのが、直近の目標。そのために増員を計画しています」（吉田氏）。

配信数型課金と成果報酬型課金を組み合わせたユニークなビジネスモデルで急成長している同社。独自ビジネスモデルによるメール広告は、今後も伸ばしていく。そのために必要なのがメンバーの育成。吉田氏の前職までの経験で独自ビジネスモデルのメール広告が可能となっている面があるのは否めない。今後も継続的に成長するには、ノウハウの継承が必要だと考えている。そのために社員を増員し、人材育成を進める計画だ。

「Web広告といっても、当社のメール広告はリスティング広告やディスプレイ広告とは異なり、“運用”の手間がかかりません。クライアントが作った文面を最適なメルマガに掲載することが重要です。そのため、Webマーケティングの経験者だけでなく、WebディレクターやWeb広告の営業でスキルを磨いてきた人材でもキャッチアップすることができます。Web広告の世界で生きていくのに、少し尖ったスキルを身に付けたい人材には最適な会社です」（吉田氏）。

さらに、将来的には、リスティング広告やディスプレイ広告、アフィリエイト広告・バナー広告・SNS広告等を手掛ける計画もある。Web広告運用会社をM&Aしてノウハウを取得。メール広告と合わせてクライアントに価値提供することで、売上を伸ばす経営戦略を考えている。

「2022年11月に、ポイ活アプリを買収しました。簡単なゲームやアンケートで手軽にポイントを稼いで、貯めたポイントをAmazonギフト券や電子マネーに交換できるアプリです。クライアントの広告を見てもらうことでポイントを稼げるようにして、広告の出稿先としてアプリを運用していきます」（吉田氏）。

メール広告を出発点にWeb広告の領域を広げることで、クライアントへの複合的な価値提供を目指している。事業の多角化は、Web広告の領域に止まらず、パーソナルジムの運営も手掛けている。

「事業の多角化は、経営のリスクヘッジとして大切だと考えています。昔からBtoC領域でビジネスをしたいと考えており、身体を鍛えるのが好きなことも手伝って、パーソナルジム事業を始めました。秋葉原と渋谷の2店舗を運営しています。こちらの事業も順調に売上を伸ばしており、10店舗を目指して事業展開しています」（吉田氏）。

Web広告代理事業とパーソナルジムの運営は、シナジーがないように映るが、同社はWebマーケティングの会社。パーソナルジムの運営では、その知見が役に立つのは間違いない。

同社のメンバーは、現在7名。そのうち、パーソナルジムのスタッフが4名。Web広告事業は、吉田氏ともう一人の社員の2名で進めているのが現状。メンバー増員によってWeb広告事業をスケールさせる。

「私がプレイヤーとして最前線で動いてきましたが、今後はノウハウをどんどんメンバーに継承して、組織としてもっと売上を作れるような会社にしていく予定です。クライアントの数は多いのですが深掘りできておらず、メンバーを増やして新規と既存をどんどん開拓していきたいと考えています」（吉田氏）。

2023年9月にオフィスを移転し、社員を増やす準備も整った。吉田氏が持つノウハウを効率良く継承するために、出勤を前提にしたワークフローを予定している。ただ、社員数が圧倒的に少ない現状のメリットを生かして、社員それぞれのプライベートを考慮した柔軟な働き方を構築していく。

「スタートアップで正社員が少ない会社なので、これから入社する人と一緒に会社の組織や制度づくりを進めたいと思っています。ビジネスも柔軟な発想で展開したいと考えているため、アイデアをどんどん出して、当社で様々な経験を積んでほしいと願っています」（吉田氏）。

パーソナルジムを運営している関係もあって、福利厚生にパーソナルジムを使える「GASYタイム」というユニークなものがある。
「オフィスから徒歩5分の距離にパーソナルジムの店舗があるため、お昼休憩に30分追加する形で、90分間ジムで身体を動かせる時間を設けています。オフィスワークは身体を動かさないので不健康になりがちですが、ジムで身体を動かせばリフレッシュできます。仕事が終わってからだとなかなかジムに通わないので、就業時間内にジムへ行けるようにしました」（吉田氏）。

社員とのコミュニケーションを大切にして、誕生日にはメッセージ付きでプレゼントを贈り、結婚している社員にはパートナーにも同様に誕生日をお祝いする。さらに、社員の両親にもお中元やお歳暮を贈って、仕事だけでなくプライベートでも社員同士の繋がりがある会社にしていくのが吉田氏の目指す会社の姿だ。

「事業は好調に成長していますが、会社としてはまだスタート地点に立ったばかりです。社員が増えることで、私も経営者としていろいろ学ぶものがあると思っています。会社そして個人の5年後・10年後を見据えて、沢山の経験を一緒に積み上げていきましょう！」（吉田氏）。