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インタビュー画像代表取締役社長・大西 幹雄氏

御社は画像処理技術をコア技術として、印刷業界向けのソフトウェアを開発されていらっしゃるのですね。

入り口は画像処理から始まっていますが、特に印刷業界にこだわってきたわけではありません。いろいろな業界向けに開発していますが、長年事業を継続してきた中で、印刷業界がデジタル化していく過程で、様々な製品を出してきました。そこで印刷業界への販売ルートができましたので、新しいものを作っても認知していただきやすい側面はあります。 印刷業界はあらゆる産業の中でも品質管理が困難な業界でした。厳密な管理をしようとしても技術的に不可能でした。そのため業界内には検査機に設備投資をする概念はありませんでしたが、技術革新が進んだことでできるようになってきた。そこに着目して、20年ぐらい前に、印刷工程のどこでも素早く正確に検査ができるというコンセプトで『Hallmarker』を開発して、市場を広げてきました。 『Hallmarker』の販売先は、今も印刷業界の比率が高いですが、最近は少しずつシフトし始めています。印刷業界の中でも、パッケージやペットボトル等の包材を作っている会社の割合が少しずつ増えてきました。同時にその上流に当たる化粧品や食品、医薬品等のメーカーとの取引も増えています。

創業時のビジョンをお話しください。

特に、ビジョンらしきものはなかったと思います。創業メンバーとは、「我々はサラリーマンができなかったのだろうな」と話していました。 創業した頃は会社らしくなかったですよ。研究開発からスタートしたこともあって、不規則な出勤形態でしたので、日中は大抵、事務所が閉まっていました。最初のソフトをリリースした初期の頃、営業先から「電話をしても出たことがない」と言われたこともありました。当時は商社と一緒に動いていたのですが、よく叱られていました。 枠にハマりたくないというのが、ものすごく強かったのだと思います。サラリーマン時代に、こういうことではないよなと思っていた。そういった思いからスタートしている会社です。だから根底には、ものすごく自由でいたいということがあります。自由でかつ面白くて、わくわくするようなものを作りたいですよね。それを作るための努力は惜しまずにやってきました。 ただ、長年やっていると、どうしてもサラリーマンっぽくなっていってしまいますよね。最初の頃はそう思っていたメンバーが揃っていましたが、長年会社を続けていると、そういった思いは継承しづらくなっています。もし可能ならそういう思いを持った方にご入社いただきたいです。

『Hallmarkerシリーズ』をはじめ、ヒットした商品をいくつかお持ちですが、拡大路線を取らなかった理由をお話しください。

新しいものを作り続ける上で、人を常に増やし続けることは難しいです。社員が増えるほど、沢山の製品を作り出していかなければならなくなります。結局、当社がやっている開発は、全て先行投資です。多少は既存製品のメンテナンスや機能追加がありますが、常に新しい試みをしています。一旦、世に出してしまうと、こちらの仕事は一段落して終わるわけです。あとは営業で売れるかどうか、またはメンテナンスのフェーズに移ります。 そういう意味で、もっと沢山売れる商品を作らなければ人は増やせません。自社プロダクトの開発と同時に、SIerのような形を採っていこうと思うなら、どんどん人を増やしていくことになるとは思いますが、自由でかつ、わくわくするようなものづくりからは遠ざかっていってしまいます。 最近は行けていませんが、会社の近くの山を登っていくと滝がありまして、その滝の上にはダムがあり、真夏はさらにその上に行って飛び込んで、走って帰ってくるということを、以前はよくやっていました。今の社屋は、そういうことをするために移転したようなところもあるのです。当社はそのような遊び心も持った会社ですので、今の社会にないものを作ることにわくわくできる人に来てほしいなと思います。

30年の間にはビジネス的に成功しなかったサービスもあったと伺いました。

創業当時からビジネスのアイデアは、積極的に試してきました。ただ、アイデアは良くてもインフラが整っていないことで軌道に乗らなかったサービスはいくつもありました。 例えば2007年にリリースした『マイ・ディズニー・スタジオ』は良い例です。このサービスは、ウォルトディズニーが持っている何万点というコンテンツを使って、Web上でTシャツや帽子、マグカップ等をオリジナルで作れるサービスでした。これも先代社長の発案で、元々はWeb上で工房を作ろうというところからスタートしたのですが、縁があってディズニーと繋いでもらえて、ディズニーのキャラクターを、色を変える等、自由にアレンジしてオリジナルグッズが作れるサービスとしてリリースできました。 ただ、当時はインターネットも現在のように充実しておらず、光回線も普及していなかった時代です。ビジネスとしては軌道に乗せられませんでした。 しかし最近はインターネット回線が大容量化して、スピードも上がり、昔できなかったことができるようになりました。2本目の柱となっている『Weebum』のサービスには、『マイ・ディズニー・スタジオ』で培った技術やアイデアが生かされています。

今後も「画像処理技術をコア技術としたソフトウェアの開発会社」というアイデンティティーは変わりませんか。

画像処理にこだわるつもりはありません。昔は地道にエンジンを作ることをやっていた時代もありましたが、今は世の中がクラウド化して、オープンソースが当たり前になって、クラウドサービスの様々な機能を自由に使えるようになりました。生成AIを含めて使えますので、コア技術としてイチから作って製品化することが難しくなってきているのは間違いありません。それでも、突き詰めてやっていけば、そういうことは必要なところはあると思うのですが、ネットで探せば必要なものは大抵見つかりますので、そういうものを組み合わせて作るような時代になっていくのではないかと思います。 昔はCPUがそんなに速くありませんでしたので、画像処理には大量の演算が必要でした。今やCPUでやればすぐに終わってしまいます。昔は回転一つとってもすごい時間がかかっていましたので、プアなハードウェアでできる仕組みを考えなければいけない等、アイデアを出すべきところが沢山ありました。しかし現在は、そのような必要はありません。しかもライブラリーが充実しているので、1行書けば済んでしまいます。今更、画像処理という時代ではなくなりました。 したがって、作るものは何でも良いと思っています。それが当社のような独立系ソフト会社の一番良いところです。

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