Inspiration株式会社

Inspiration株式会社は1997年の創業以来、輸入車メーカーや自動車ディーラーを中心に、営業活動をサポートする多様なサービスを提供している。例えば、オリジナルの提案書を簡単に作成できるツール『PROPO』。自動車のような高級品を販売するためには、お客様のニーズや用途、悩み等を聞き出し、それに応える独自の提案書を作成することで、購買意欲を高めていくことが欠かせない。しかし経験の浅い営業だと、提案書にどのような情報を盛り込み、どのように見せれば効果的なのかが分からないものだ。『PROPO』は、多数のヒアリング素材や過去の事例から流用してオリジナルの提案書をつくることができる。

他にも、Eメールでビジュアルにも凝ったDMを一斉送信できる『eDM』システム、中古車在庫管理システム等、分かりやすく、かつ有用性の高いサービスが揃っているのが特徴だ。
「創業以来、長年、自動車販売業界に特化してサービスを提供してきたことで、営業支援に欠かせない要素やメーカーやディーラーの営業が車を売るために何を必要としているのか熟知しています。この経験と蓄積が当社サービスの質を高め、お客様の評価に繋がっているのだと思います」（取締役・落合綾子氏）。

同社が効果的にノウハウを蓄積できる理由には、同社のビジネス形態も関係している。輸入車メーカーや系列ディーラーとの直接取引が大半を占めており、お客様のニーズに直接触れられる環境にある。また、企画営業から設計、開発、運用保守まで一貫して受注しており、ディレクターやデザイナー、エンジニアが社内にいるため、外注はほとんどしていない。そのため「経験をそのまま知見として蓄積できるだけでなく、営業側と開発側の間でコミュニケーションの齟齬が発生しづらいためアウトプットの質を高めやすく、コストメリットも出しやすいという強みがある」と落合氏は同社の優位性を強調する。

長年の実績による顧客との信頼関係も厚く、メジャーな輸入車メーカーの大半と取引がある。2010年代前半から無借金黒字経営を継続していることからも、事業基盤の強さがうかがえるだろう。

同社には、誰でも簡単に自動車ディーラーのHPを作成できる「自動車ディーラーWEBシステム」、『PROPO』をはじめとした「オリジナル営業支援ツール」、中古車在庫検索システムと在庫管理機能をパッケージ化した「中古車在庫管理サイトシステム」という大きく三つのサービスラインがある。これらのサービスにおいて機能拡充を進めるとともに顧客拡大を図っていくのが、基本的な成長戦略である。
「既存のお客様から多くの要望を頂いているほか、新規のお客様からの引き合いも多く頂いているのですが、リソースが足りずに対応し切れていないのが現状です。そのため、まずは採用に力を入れて人材を確保、強化していきたいと考えています」（落合氏）。

こう聞くと、既存サービスをひたすら回していくだけのように感じるかもしれない。しかし「そんなことはない」と続ける。
「当社はお客様の要望に真摯に向き合い、その課題解決に繋がるサービスを開発・提供することで成長してきた会社です。その実績のおかげか、お客様の方から『こんなことはできないか』と打診を受けることもありますし、こちらからアイデアを提案して形にすることも少なくありません。そのため、常に新たなサービスを生み出すチャンスがあります」（落合氏）。

2022年4月に、東証スタンダード上場企業であるシステム・ロケーション株式会社の100%子会社となったことも、ビジネスの幅を広げる機会になっている。同社は、オートリースや自動車ファイナンス、新車販売店、メーカー等、自動車関連業界向けの業務支援を国内外において展開。Inspirationとは同じ自動車業界でありながら事業領域や顧客領域、商品特性等はそれぞれ独立しているため、シナジーを生み出しやすい関係性にある。
「詳細を語ることができませんが、親会社が保有する顧客ネットワークや知見を活用した新規事業開発も進めているところです。人材交流等を通じて、両社の連携を強化しているところでもあり、今後も両社の特性や強みを生かした新規ビジネスを生み出していき、企業成長を加速させていきたいと考えています」（落合氏）。

同社は10年以上勤務している社員が多い。それは、社員にとって働きやすい環境づくりに力を入れているからだ。例えば、社内の上下関係を極力なくして風通しのいい風土を醸成するため、あえて役職を設けていない。意見を言いやすいので、能動的に仕事に取り組みやすく、提案に対して耳を傾ける風土もあるので、やりたいことに挑戦しやすい環境があるともいえる。
「社員同士の関係性がフラットでコミュニケーションしやすい雰囲気だと、社員間の距離感が近過ぎて、人間関係が面倒くさいのではと思う人がいるかもしれません。でも、当社の場合、公式な飲み会は年に一度の期末キックオフ会だけで、あとはお酒の場が好きな社員同士は誘い合って飲みに行くし、そうでない社員は就業時間後すぐに帰ることが多いです。そのあたりの“程良い”距離感を居心地良く感じている社員が多いですね」（落合氏）。

残業については40時間のみなし残業制を採用。そこを超える場合は許可制になっており、繁忙期以外、基本的に残業は非常に短い。エンジニアはフルリモートであり、デザイナーも出社とリモートを組み合わせて働いている社員が多い。ワーケーション制度を利用する社員もおり、小田原、箱根で仕事をした実績もある。
「実績が上がれば利益を社員に還元するという考え方なので、決算賞与支給前の営業利益の20～25%を決算賞与として支給しています」（落合氏）。

ただ、少数精鋭体制で事業を動かしているため、特定のことだけやっていたいという人にとって居心地がいいかどうかは分からない。
「企画営業であれば、お客様へのヒアリングから企画提案、プロジェクト化した後も進捗に応じて最後まで見届けることができるし、ディレクターやエンジニアであれば、一つの機能開発を最初から最後まで任せる等、大きく裁量を持って仕事をしてもらいます。そのため、やりたいと思った仕事に積極的に挑戦したい人や幅広いことに興味を持って新しいことにも挑戦していきたい人であれば、やりがいを感じながら仕事ができる会社だと思います」（落合氏）。