株式会社T&C

受託開発やSESを展開する他、自動車関連サービスのマッチングプラットフォームの自社開発も手がける株式会社T&C。2015年の設立以来、大手電機通信系メーカーとも取引する実力派企業だ。

「T&Cという社名は、“Try & Challenge”に由来しています。当社は何も、システム開発だけを手がけるつもりはありません。だからこそ、社名には“システム”や“ソリューション”というワードは入れませんでした」代表取締役の立石燎汰氏はこう話す。

立石氏の意外なキャリアを遡ってみると、社名に込められた思いが窺える。

なんと元プロレーサーである立石氏。14歳から18歳まで若手選手として活躍してきた。スポンサーやレーシングエンジニアとチームを組み、勝利というただ一つの目標に向かって、挑戦や試行錯誤を繰り返してきたという。青春時代をアスリートとして猛進してきた立石氏は、第二の人生を考えたときにも、この“Try & Challenge”をテーマにしたのだ。

「レーサー時代、こんな僕を信じて協力してくれるスポンサーは感謝してもしきれない存在でした。でも世の中には恵まれない環境で育った人や、才能や頑張りを認めてもらえない人などがいます。スポットライトを浴びられずに、それでも懸命に生きているんですよね。僕も、そんな誰かにチャンスを届けられる存在になりたかったんです」。（立石氏）

かつて自分がスポットライトを当ててもらったように、自分も誰かに光を差し伸べたい――。そんな思いを実現しようと、立石氏の“Try & Challenge”は始まった。

その第一歩としてIT業界を選んだのは、幼少期からものづくりに関心があり、「今にないものを創造・実現したい」という想いがあったから。レーサー時代のスポンサーであるIT企業の社長たちから業界の話を聞くうちに、ITはレーシング業界の次に身近なものになったという。今後の需要も高く感じたこともあり、まずはITの世界へ飛び込もうと決意したのだ。そうして引退後に、システム開発を手がける企業2社を経験。エンジニアの他に営業としての腕も磨いた。

そして2015年、満を持して同社をスタート。まずはシステムエンジニアリングサービスを主力事業とした。

「当社の初めての仕事は、官公庁で始まったばかりのサービスで、システム構築は試行錯誤の連続でした。かなり大規模なものなので、業務効率化ツールなども当社で手がけました。それは今や全国各地の行政で使われています。大変だった分、僕にとって大きな勲章になっていますね」。（立石氏）
設立間もない頃から、まさに“Try & Challenge”。そして黎明期のサービスにスポットライトを当て、普及へと導いたのだ。

先述したように、某大手電機通信系メーカーとも長年にわたって取引する同社。信頼を勝ち取れる強みは、いったいどこにあるのだろうか。

「特に大きく評価されているのは“やりきる力”だと自負しています。特に大手クライアントとの仕事は大規模で、そして高い品質も求められます。そこで必要なのが、諦めずにやりきる力。こう言うと精神論のように聞こえてしまうかもしれないですが、『どうやったら成功するか』を考え抜く力とも言えますね」。（立石氏）

つまり同社の“やりきる力”とは、ただがむしゃらに突っ走ることではない。例えば、スケジュールや業務量の厳しい仕事を依頼されたときには、納期や動員人数などをクライアントへ提案。もちろん社内での調整も図る。そのときに発揮できる最大限の力を発揮し、プロジェクトを最善のゴールへと導くのだ。この姿勢はもちろん立石氏だけでなく、メンバーにも根付いている。

ベストを尽くした結果、クライアントからは次の仕事が舞い込む。新規の大手クライアントとの繋がりも生まれ、昨期は過去最高益を達成した。

急成長を続けている同社。立石氏は今後の展望についても語った。IT領域に関しては、目指すものは3つある。

まずは、上流工程やマネジメント領域を強化していくこと。ChatGPTやAIが急速に発展している現在。その中ではシンプルなコーディングといった技術だけでなく、“人”がどう考えて進めていくかがカギを握ると考えている。

次に、各領域に強みを持つプロフェッショナルを育てること。大きくシェアを広げている業務アプリを中心に、「設計開発のプロ」、「品質のプロ」、「クラウドシステム構築のプロ」を育成し、システム開発のエキスパート集団として、顧客課題に対応できる体制を万全にしていくという。

そして今大きく動き始めているのが、自社プロダクトの開発だ。これまではSI（受託開発）やSESの事業がメインだったが、今後は自身でもソリューションサービスを生み出し、社会へ広く貢献していくのだ。

「SIだけ、SESだけ、自社開発だけなど、何かに限るつもりはありません。“社会の誰かのためにできることをする”という使命を、サービスとして形にするんです」と立石氏は語る。クライアントや社会が求めるものを、生み出していける組織になるため、同社は今後も絶えず“Try & Challenge”していく。

その時々の最善策を見つけ出し、挑戦してきた同社。“Try & Challenge”の精神は対外的な姿勢だけでなく、同社内部にもしっかり息づいている。

今後の展開としてIT領域はもちろん、その枠を超えたチャレンジも視野に入れているという。

「あくまで例ですが、新たにフード業界に踏み出したいメンバーがいれば、飲食店の展開なども受け入れていきたいです。もちろん、今の現場で成果をしっかり上げていて、新たな挑戦にも事業計画の正当性や努力する覚悟があることは前提です。かく言う私も、自動車の洗車サービスをやってみたいな……なんて密かに構想を練っています」。(立石氏)

そうした新たなアイデアは、さまざまなバックグラウンドを持ったメンバーでの化学反応から生まれる。

例えば、2023年にジョインしたとあるエンジニアA氏は組み込み系アプリケーションの経験者。業務システム開発をメインに手がけてきた同社にはない視点を持っているという。このA氏がいるプロジェクトでは新たな議論が生まれ、社内全体のアイデアがいっそう深まっているのだとか。

「同じ性質のメンバーばかり集めるなんてつまらないじゃないですか。もちろん求める人物像はあります。でもAを面接したとき、その異色性に『一緒に働きたい』と思ったんですよね。Aの所属するプロジェクトのクライアントからは、『これまでとは少し違うメンバーが入ってきましたね』という言葉をいただきました。僕としては狙い通りです」。（立石氏）

今後もバラエティに富んだ人材を迎え入れ、事業拡大にむけた組織体制を拡大していく。しかし、そうして組織が目まぐるしく変わっていく過程だからこそ、同じスピリットを持つことは大切にしている。

企業理念ももちろん大切だが、日々の業務ではクレド（行動指針）も重視するという。

■クレド
・Profession
・Fairness
・Giver
・Want
・Study
・Practice
・Purpose

プロとして期待以上の価値を提供するため、日々学び続ける。そこには初心や常識破りの姿勢も必要だ。

「くじけずに前に進む強い意思は、やはり大切ですね。素晴らしい挑戦をしても、その気持ちの根っこが絶えてしまったら終わってしまいますから」と立石氏。

例え壁にぶつかっても、自分の経験や仲間の助言をもとにゴールに向かって最善の道を突き進む。このスピリットを持った人材が、当社で活躍できそうだ。

「でも、無茶な働き方はさせません。働き方は繁忙期でない時期は定時退勤が基本です。こういった時期に残っているメンバーがいれば、『早く帰って』と叱っています(笑)」と、立石氏はメンバーをねぎらう一面も見せた。有休取得率も現在は70～80％ほどだが、近いうちに100％達成を目指しているという。

大きな夢にチャレンジする姿にスポットを当て、全力で背中を押してくれるフィールド。それが株式会社T&Cだ。