代表取締役 米田 英輝氏 全世界で約350万回ダウンロードされ、日本国内でもApp Storeの無料アプリランキングで総合1位を獲得した電子書籍ビューア『SideBooks』を世に送り出した経営者。無料アプリであった『SideBooks』の技術を活用し、法人向けクラウド型文書管理システム『SideBooksクラウド本棚』を開発し、全国約1,700の自治体のうち約700で活用されるNo.1ツールに育て上げる。

東京インタープレイを立ち上げるまでの経歴は？

私はもともとグラフィックデザイナーで、出版や商業印刷の企画や編集も手掛けていました。その後、独立しWeb制作会社を立ち上げクライアントワークを中心に企画制作の業務を展開していました。順調に業績も伸びていたのですが、一方でクライアントワークから抜け出しオリジナルコンテンツを手掛けたいという思いがあり、日々ふつふつとした毎日でもありました。 そんなときにiPhoneが発売され、続いてiPadが世の中に出ました。日本ではまだ販売されたばかりのiPadを囲み当社の立上げメンバーで連日連夜、ビジネス展開について議論を重ねました。そこでPDFを快適に読めるビューアアプリを作れば当時、流行の兆しのあった電子書籍業界に挑戦できるのでは？と結論を出し、個人向け電子書籍ビューアアプリ『SideBooks』を開発しました。

東京インタープレイを設立した背景は？

『SideBooks』のリリースに合わせて、東京インタープレイを立ち上げました。App Storeの無料アプリランキングで総合1位を獲得し、全世界でダウンロードされる等、『SideBooks』は成功しました。ただし、無料ダウンロードだったので、マネタイズを考える必要がありました。電子書籍の普及は権利の問題もあり中々広まらず、一方でアプリブームに乗っていろんな企業からアプリ開発の依頼は受けるのですがクライアントワークでは意味がないと見切りをつけ、今でいう“SaaS”のようなビジネスモデルを開発しようという流れになりました。 そんな折、神奈川県逗子市の議員から「議会のペーパーレス化」をしたいので相談に乗ってくれないか、と問い合わせを頂きました。ヒアリングを通じて、地方議会の運営で膨大な紙資料をペーパーレス化することに多くのメリットがあると理解しました。全国の自治体数を調べたところ、事業としてニーズもマーケットボリュームもあると判断し、『SideBooksクラウド本棚』の事業がスタートしました。

『SideBooksクラウド本棚』事業の開発経緯は？

半年かけて逗子市の市議会議員や議会事務局と打ち合わせをしながら開発を進め、『SideBooksクラウド本棚』は完成しました。議会の運用に即した設計のおかげで、逗子市市議会で使いやすくて便利だという評価を頂き、それがニュースになって全国に広がり、逗子市の「議会のペーパーレス化」の取り組みは、地方自治体の議会・首長や地域主権を支える市民等の優れた活動を表彰する日本最大の政策コンテスト「マニフェスト大賞」において、「優秀ネット選挙・コミュニケーション戦略賞」を受賞しました。 逗子市へ全国から数多くの地方自治体が視察に訪れ、当社にも『SideBooksクラウド本棚』の導入に関する問い合わせが殺到しました。そこから右肩上がりで導入件数は増えて、現在は約1,700の自治体のうち約700自治体で活用される「ペーパーレス会議システム」に成長しました。

『SideBooksクラウド本棚』が高いシェアを獲得できた要因は？

私は成功の要因を「訪問営業」にあると考えています。SaaSビジネスの多くは、Webマーケティングとインサイドセールスを組み合わせた効率重視のセールス体制とLTV（顧客生涯価値）を最大化するCS（カスタマーサクセス）で収益を獲得します。しかし、BtoBのセールス、特に地方にも顧客をもつ弊社の場合、現地を訪問してサービスをハンズオンで触っていただくことで、価値が伝わると考えています。いまでもインサイドセールスとCSのチームを作っても、出張して現地を訪れるフィールドセールスの役割は非常に重要だと考えています。 直接現地を訪れる「出張」についてお話したいと思います。地方自治体は全国津々浦々にあり、それぞれ出張し訪問をして営業をしています。それぞれの土地の文化や伝統、言葉の豊かさに触れながら現地の職員や議員さんとお話をすることは仕事とはいえ非常に貴重で楽しい経験になります。観光では決して分からない「地域課題」「地方自治体の仕事」は働き方の改善やDXを推進する私達の仕事に強い使命を与えてくれます。 また弊社の出張は「ブレジャー」（仕事と余暇を組み合わせた造語）も可能なので週末をうまくつかって観光を楽しむこともできます。