アジアンウエイ株式会社

中古トラックなど大型商用車の販売サイト『トラック流通センター』、大型未使用車等の販売サイト『新古車専科』、業者向けの情報提供サイト『業販ネット』を運営するアジアンウエイ株式会社。車両取扱数で業界トップクラスを誇るなど、圧倒的な優位性を持ち、さらにミャンマーでの委託業務やオフショアサービスの運営も手掛けている。2005年に乗用車の輸出から事業をスタートし、商用車のポータルサイト群によって商用車販売事業に進出。会社設立以来黒字経営を続け、売上は2年連続で対前年比130％と業績を伸ばして続けている。

今後は介護、建設、ドライバーなどの領域でミャンマーの人材を活用したサービスを提供する予定だ。アジアンウエイはどのような経緯で成長していったのか。その成長を支える風土とはどのようなものか。代表取締役 田中 晶子氏、採用担当の永野 晴大氏にお話を伺った。

改めて手掛けているビジネスを紹介しよう。アジアンウエイにはトラック事業部とミャンマー事業という2つの柱がある。前者のトラック事業部で手がけているのは、中古トラックなど大型商用車専用の販売サイト『トラック流通センター』である。掲載台数は常時2,000台以上と業界トップクラス。市場に出回っていない車両も紹介できるスキームが顧客から評価され、リピート率は75％以上に達している。

大型未使用車・特選車専門の販売サイト『新古車専科』は、2022年にローンチした新しいサイトである。コロナ禍や不安定な世界情勢で半導体やワイヤーハーネスが不足し、新車の納車が遅れる中、新古車というカテゴリに狙いを定めてスタートした。色々な種類のボディタイプ（トラックの荷台にあたる部分）から、顧客に最適な車両を提供できるサイトとして注目を集めている。

優れた検索機能を誇る情報提供サイト『業販ネット』では、検索した車輌に業販価格と店舗情報が表示されているので、仲介料等一切不要で店舗と直接取引できる。

一方のミャンマー事業はコロナ禍前の2019年にスタートした。グループ会社・アジアンウエイ協同組合とのコラボレーションで、ミャンマー人技能実習生の現地での育成、受け入れ、人材紹介サポートなどをワンストップで行っている。今後はまず介護業界への人材紹介を進め、将来的には人材不足が深刻な建設やドライバーのサービスを展開していく予定だ。

同社の2事業は全く異なる領域のように思えるが、代表取締役 田中晶子氏にお話を伺い、約20年にわたる会社の歴史を紐解いてみると、それらが根底の部分でつながっていることがわかる。

冒頭でも触れたように、アジアンウエイの設立は2005年である。創業メンバーは田中氏を含む3名だ。田中氏自身は外車の販売会社に勤めた後、IT企業に転職。その後アジアンウエイを設立した。当初は乗用車の買取でスタートしたが、国内には資金力と事業規模の面で同社を凌ぐ強豪がいたため、すぐに国産商用車の輸出に事業をシフト。在日外国人を採用し、世界36ヶ国で販売を始めた。ロシア、ペルー、グルジア（現ジョージア）、キルギスなどへの販売ルートを築き、在日外国人たちには母国語で営業をかけてもらっていたという。日本の商用車は世界中で大人気で、田中氏自身も出張先で日本企業の名前入りのトラックを頻繁に見かけていたそうだ。

しかしリーマンショックの影響で輸出事業から撤退を余儀なくされる。知り合いのトラック業者から「乗用車より商用車にニーズがある」という話を聞き、国内向けにトラックなどの商用車を販売する事業を始めた。競合がひしめく中で、アジアンウエイにどのような優位性があったのだろうか。

「当社は商用車の販売を行っていますが、業種としてはIT事業です。商材が商用車という物を取り扱っていますが、基本は在庫を持ちませんし土地も必要ありません。その分固定費を大きく圧縮できます。また10年以上にわたる経験から、かゆいところに手が届くというような、トラックの買主の情報を把握し、きめ細かく提供している点も強みと言えます。さらに、リスティング広告やSEO対策など、ITビジネスに必須のノウハウも蓄えています」。（田中氏）

そんな中、田中氏は「もう一つ、事業の柱を作ろう」と思い立つ。そこで輸出事業時代、2012年に事業所を展開していたミャンマーに注目。穏やかで真面目な国民性、人口の9割が仏教徒、日本語と文法が同じミャンマー語…など、さまざまな点で日本に親和性の高いミャンマー人材の活用に乗り出す。

車両登録などのデスクワークをミャンマーに受託、現地の人材に入力作業を行ってもらっています。また昨年、現地に設立した日本語学校でミャンマー人が日本語や各種技能の習得を学べる環境を整え日本の人材不足の企業に紹介できるように人材事業もスタート。このような取り組みによって、アジアンウエイのもう一つの柱、ミャンマー事業が誕生。コロナ禍が明けた2024年から、まずは介護領域での人材サービスが本格始動する。

積極的な事業展開を進めるアジアンウエイではどのような人材が活躍できるだろうか。

田中氏は「トラックなど商用車の知識は一切問わない。前向きで、言われたこと以上のことをやろうと頑張れる人」と表現する。実際、アジアンウエイでは金融、ホテル、不動産、情報通信など、異業界出身者が大半を占め、上述のような業績を支えている。

自身も異業界からの転職者である採用担当の永野 晴大氏は、同じ質問に対して「フラットで自由度の高い風土の中で"自走"できる人」と語った。フラットで自由度が高いということは、上司や先輩という存在がなく、誰からも指示を受けない環境であるということ。つまり成果を出すには何をしなければならないかを自分で考える必要があるのだ。

「ですから面接では、前職でどのような環境で、何を考えながら働いていらっしゃったかをしっかり伺います。その上で、私たちが『自走できるタイプ』と感じた方を採用させていただいています」。（永野氏）

仕事については、営業・事務・マーケター・エンジニアの職種を超えて、各自の自走に期待しているが、決して放置しているわけではない。社員同士の関係づくりにつながるさまざまな取り組みを行っている。例えば、毎月の全社目標を達成した場合には、社員全員を招いて食事会を開催。有名なミュージカルを観に行くこともあるという。

「当社には20〜30代のメンバーが多いので、若いうちから美味しい食事や上質なエンタテインメントに触れる機会を提供したい、というのが私の想いです。あたたかい季節にはバーベキューなどもやるのですが、そのときはみんなで楽しめるように平日でも会社を1日休みに。顧客満足を高めるには、まず従業員満足を高める必要がありますから」。（田中氏）

そして田中氏は、「社員はみんな、私が若いときに産んだ子どもみたいなものです」と笑顔で付け加えた。

アジアンウエイではトラック事業とミャンマー事業の両輪でビジネスを拡大していく。さらに将来的には「クレーン車やトレーラーなど異なる車種ごとに絞ったサイトなども手がけていきたい」とのこと。アジアンウエイはどこまで進化し続けるのか、これからも注視していきたい。