トライシクル株式会社

B to Bのサーキュラーエコノミー対応プラットフォーム『ReSACO』を運営する、トライシクル株式会社。“サーキュラーエコノミー”とは、製品や部品、資源を最大限に活用し、それらの価値を目減りさせることなく再生・再利用し、循環し続ける経済環境のこと。同様の概念に“循環型社会”があり、日本では環境省などが主導して、使用済みペットボトルなどを再生資源として再利用する“リサイクル”、ガラス瓶などをそのまま再利用する“リユース”、マイバッグの利用など、モノをできるだけ廃棄しなくても済むようにする“リデュース”の“3R”が推進されている。これに比べ、“サーキュラーエコノミー”はあらゆる産業を包括する、より広角的で革新的な循環型経済モデルといえる。

従来のBtoBの不用品（廃棄物）処理は、資源リサイクルか廃棄処理を主体に行われてきた。一度破壊し、個体分離の上で素材別に再利用できるものと廃棄するものに選別する形で行われている。しかし、一度破壊するのはエネルギー効率が悪い。廃棄されるモノには、まだ使えるものも少なくないからだ。そこで『ReSACO』は、次のようなあらゆる再利用のルートを用意し、“捨てたい事業者”と“再活用したい事業者”をマッチングする。

●リユース
あらゆる機械、工具、備品、オフィス用品、サービス業用品などの中古品を流通させる。その排出者と、これらを再販売する買い手のマッチング

●リメイク
古い工業用ミシン台をデスクにリメイクするなど、元のデザインや素材性質など特徴的な部分を活かしながら現代に合うような製品に作り直す。その不用品排出者とリメイク事業者／アーティスト、およびリメイク品の買い手をマッチング

●リファービッシュ
初期不良で返品された電気製品などを修理・調整して再出荷する。その排出者と、修理事業者、買い手をマッチング

●リペア
壊れて使えない製品を直して使えるようにする。その所有者と修理事業者をマッチング

●パーツ取り
廃棄される機械や車などから使えるパーツを取り出してそのまま再利用する。その排出者と解体事業者、買い手をマッチング

●リビルド
廃棄される機械や車などから使えるパーツを取り出し、使えるかどうか点検してオーバーホールの上、再利用する。その排出者と修理事業者、買い手をマッチング

●アップサイクル
プラケースをアウトドア用品に作り変えるなど、元の製品よりも次元や価値が異なる、より高度なものを生み出す。その排出者とアップサイクラー／アーティスト、買い手をマッチング

●資源リサイクル＆廃棄処理
従来の廃棄物の個体分離→選別→再生資源化・廃棄処理。排出者と資源リサイクラー／産業廃棄物処理業者をマッチング

2018年5月に同社を創業した代表取締役CEOの福田隆氏は、1902（明治35）年創業の資源リサイクル・産業廃棄物処理事業者である東港金属株式会社の4代目経営者。2002年に経営を継承してから、福田氏は資源リサイクル・産業廃棄物処理業界のビジネスそのものが社会の流れから遅れていると実感してきた。

「循環型社会が言われていましたが、業界は相変わらずの“大量生産・大量消費・大量廃棄”型の産業モデルを前提としていたのです。廃棄物は叩き壊して分離し、原料として回収する旧態依然のスタイル。そんな業態がいつまでも静脈産業の主役でいるのはおかしいとの問題意識がありました。安いものをたくさん作れば売れる時代はとうに過ぎ去り、“モノの消費からコトの消費へ”とサービス業化に向かっている。ならば、我々の業界もその鏡映しであるべきと考えたのです」（福田氏）

そんな時に、福田氏は“サーキュラーエコノミー”という概念を知る。そして、自社として廃棄物排出者にリユースやリメイク、リファービッシュなどの提案をするも、自社の力だけで修理事業者や買い手に繋げることは難しく、事業をスケールさせる限界を感じた。そんな時にブレイクしたのが、CtoCのフリマアプリだ。
「これは世の中を変えると直感しました。いずれこのBtoB版が出てくるだろう。ならば、それを自分たちがやろうと決めたのです」（福田氏）

福田氏は、以前から資源リサイクル・産業廃棄物処理業界はIT化が遅れていることを実感してきた。それとともに、「東京に拠点を設けている身として、IT化に取り組む有利さをサービスに活かしていこうと考えていた」と言う。そこで、あくまでもIT企業として、東港金属の子会社の形でトライシクルを設立し、世界にも例のないサーキュラーエコノミー対応プラットフォーム『ReSACO』の開発に着手する。同社の強みは、単にWebサービスを運営するだけのITベンチャーではなく、バックに東港金属という歴史のある資源リサイクル・産業廃棄物処理事業者が控えていることにある。この世界に関する深い知見やノウハウを100％活用できるアドバンテージは、計り知れない。

「『ReSACO』のトップ画面には“捨てるをなくすプラットフォーム”と書いています。このままいけば2030年には地球2個分の資源が必要になるといわれている危機的状況を、少しでも改善させたいと考えています」と福田氏は力を込める。

同社では、ビジョン／ミッションとして、次の言葉を掲げている。

●サーキュラーエコノミーを体現する
●サーキュラーエコノミーのIT企業として世界最高を目指す
●テクノロジーで静脈産業をアップデートし続ける
●高度なリサイクルシステムを構築して、捨てるものをなくす
●社会から感謝されるリサイクルサービスを提供する

これらを実現させる企業カルチャーづくりにも、11月から着手。アメリカに本社を置く大手オンライン映像配信事業会社の企業文化や行動規範に共感できる点が多いとして、これをベースに自社独自のカルチャーの明文化を進めている。「全メンバーとざっくばらんに議論を3～4回行った上に、共有ドキュメントに思いついた意見をどんどん書き込んでもらっており、全員参加型で1つのものに仕上げていく」と福田氏。

2018年12月現在、同社の専属メンバーは4名。さらに約140名の社員を擁する東港金属の社員10名が兼務している。総務・経理などのバックオフィス業務は、東港金属に集約し効率化させている。年に1回、東港金属と合同の社員総会を開催し、経営状況の共有や社員表彰、新メンバーの紹介、ゲーム大会、懇親会といったプログラムを行っている。

人材育成制度としては、資格やスキル取得のための外部研修受講などを希望する社員に、会社が費用をほぼ100％負担して支援するなどの制度も。

そんな同社が求めるエンジニア像について、福田氏は次のように期待を寄せる。
「当事者意識のある方です。“あらゆることを自分が解決する”という意識でいると、動き方が変わります。そういったエンジニアの方に、ぜひアクセスしていただきたいと願っています」（福田氏）

世界初といえるサーキュラーエコノミー対応プラットフォームにスタート段階から関われる、二度とないチャンス。社会貢献度の極めて高いサービスであるだけに、大きなやりがいが得られるに違いない。