株式会社Itsuki

株式会社Itsukiは、フロントエンドフレームワークに特化したシステム受託開発会社。JavaScriptフレームワークを使って軽快でユーザビリティの高いWebアプリケーションをクライアントから請け負い製作している。一般にWebアプリケーションは、PHPやRubyで作ったサーバ側にあたるバックエンドの上で動作する。イメージとしてはバックエンドの上に、JavaScriptで作ったフロントエンドが乗って動いているという感じだろう。よって大半のケースがWebアプリケーション制作においては「バックエンド＆フロントエンド」をセットで開発する必要がある。しかし、Itsukiが開発会社としてユニークなところは、Vue.jsやReact.jsなどのフロントエンドフレームワークを活用してJavaScriptによるサービス開発特化している点だ。

「プライム案件を中心にWebアプリケーションの制作を請け負っていますが、クライアントからAPIを提供してもらい、ItsukiはJavaScriptを使ったフロントエンドの開発に集中します」（代表取締役社長・山本俊樹）

Itsukiがフロントエンド開発に特化している背景には、Webアプリケーション製作においてフロントエンドの重要性が増していることが挙げられる。エンジニアとして実装を行いながらWebサービスの新規事業のコンサルティングも手掛ける山本氏は、Webサービス制作の現場で起こっている変化を次のように話す。

「JavaScriptのフレームワークが流行し、APIで情報を受け取って、それをレンダリングしたり加工したりするのも、フロントエンドの役割となりつつあります。以前はバックエンドで行っていた処理をフロントエンドが受け持ち、『非同期処理』により部分的に情報を更新することで、サーバとの通信を減らし、Webページを軽快に動かすことができます」（山本氏）

技術が発達し、ユーザーがネイティブアプリに慣れ始めたことで、今では快適に操作できるリアルタイム処理をベースとしたアプリケーションでなければ使われないという状況になりつつある。そのため、都度サーバーと通信し、ページをレンダリングするのでは到底間に合わない。通信状態が悪い場合はなおさらだ。しかし、フロントエンドの開発に注力して、ブラウザ側で必要な処理を済ませる「非同期処理」にすれば、通信やサーバに大きな影響を受けず、ユーザーの便利さを追求したWebサービスやWebサイトが構築できる。

「今後もフロントエンド開発への需要は増すと思われます。すでに現在でもフロントエンドエンジニアがいないために、新しいサービスの構築をあきらめている事業者がいます。当社はフロントエンドのスペシャリスト集団として、その特性を生かしたWebアプリケーションの開発を請け負っていきます」（山本氏）

Itsukiがフロントエンドの開発に特化するもう一つの理由は、エンジニアの育成にある。IT業界全体でフロントエンドエンジニアが少ないという。それは、フロントエンドの開発を極められる場がないからだと山本氏は考えている。

「Web制作会社でもシステム開発会社でも、フロントエンドのスペシャリストはあまりいません。LPなどのHTMLやCSSをコーディングするだけの案件をフロントエンドエンジニアが担当する会社が多いのが現状だと思います。しかし、求められるのは全く別のスキルなのでマークアップとフロントエンドを切り離して考えるべきです」（山本氏）

マークアップエンジニアは、Webデザインにも精通したUIのスペシャリストであり、一方、フロントエンドエンジニアはAPIとの通信や認証、処理部分を担当する。これらは言語が同じであるため混同されることが多いが、Itsukiではマークアップではなく、純粋なフロントエンド開発に集中できる環境を提供することで、フロントエンドエンジニアを増やしたいという思いがある。

「フロントエンドのスペシャリスト集団となることで、優秀なフロントエンドの開発者が集まってきます。そうすると、社内で切磋琢磨することができるため、より一層エンジニアのスキルが向上し、さらなる受注につながります。経営戦略の一環でもあり『世の中をもっと便利に』という当社のミッションを実現するための方法でもあります」（山本氏）

ITの世界には、ちょっと手を加えるだけで、まだまだ良くなるものがいっぱいある。Webサービスの世界でいえば、その大半はフロントエンドで解決できると山本氏は考えている。

「バックエンドの改修には時間と手間がかかりますが、フロントエンドなら比較的簡単に改良できます。ユーザーのニーズがかなり早いスピードで移り変わっている時代に合わせ、ユーザーニーズを素早く検証し、確信が持てたら大きく反映するというサイクルを回すことで、より魅力的なWebサービスに磨き上げることができます。これはクライアントにとっては、ビジネス上の付加価値となるのではないでしょうか」（山本氏）

フロントエンド開発に高い付加価値があるからこそ、Itsukiはフロントエンドにこだわっているのだ。そして、エンジニアもフロントエンドの知識やスキルを付けることで、市場価値の高い人材となりえる。

フロントエンドのスペシャリストである山本氏が、Itsukiを立ち上げた背景には、もう一つ将来を見据えた理由がある。API連携を活用したWebサービスの新しいあり方を巡る、新規事業の構想だ。

「APIでソフトウェア同士をつなげば、データベースがなくてもWebサービスを作ることができます。さらにいえば、APIを公開しているWebサービスをつなげるだけでも新しいWebサービスを開発できます。今後は、APIでいろんなソフトウェアをつないでサービスを作る時代が訪れます。その時、必要となるのがJavaScriptで書いたフロントエンドです」（山本氏）

FacebookやGoogleなどが持っている認証情報を使って、サービスのログインを簡素化しているWebサービスは、FacebookやGoogleが公開しているAPIで連携し、彼らのデータを使用することで実現されている。今後、5Gが普及すれば可能となるデータ転送量も増え、さまざまなデータがAPIでやり取りされる時代が到来する。そして、APIの多くはJSONで書かれている。JSONはJavaScriptのオブジェクト形式のような構造をしていることから、特にJavaScriptと親和性が高いとされている。

「FacebookやGoogle、Amazon、日本でいえば通信キャリアや大手人材会社など、ビッグデータを持っている企業は限られています。今後は彼らが自らのデータを公開し、新規Webサービス事業者は彼らのデータを借りるのがスタンダードになると考えます。今からGAFAに匹敵するような膨大なデータベースを構築するのは無理があります。それならば、彼らのデータを活用して新たな価値を生み出すサービスを作るのが賢いやり方です」（山本氏）

APIで必要なモジュールをつないで、コアとなる部分を開発するWebサービスの新しい世界の到来を予想して動き始めたItsuki。「フロントエンド開発を通して便利な世界を作る」という理念に共感してくれる人を集めようとしている。

「フロントエンドのスペシャリストを目指すエンジニアだけでなく、デザイナーとディレクターも求めています。『ユーザーの気持ちに立てば、必要だと思うことがサーバー側の都合で実現できない』『サーバー側の改修に時間がかかってしまう』という、もどかしさを感じているデザイナーやディレクターはいませんか？　当社の開発ではそんなNGはありません。チームでお互いの限界も認識しながらしっかりと議論することで、本当にユーザーの視点に立ったUI/UXを追究したWebアプリケーションを作り上げることができます。フロントエンドの便利さを追求すると、Webアプリケーションで今まで以上にいろんなことができるようになります。創造力を生かして新しいサービスを生み出し、既存のサービスを生まれ変わらせましょう！」（山本氏）