株式会社ビー・エス・エス

ちょうどいい湯加減のお風呂のように、エンジニアを優しく包み込むシステム開発会社が、北九州市小倉にある。

1994年創業の株式会社ビー・エス・エスは、公共、サービス業のクライアントを中心に、Web系システム開発・業務系システム開発を得意とするシステム開発会社。要件定義や設計フェーズといったクライアントと検討・合意が必要な部分はクライアント先にて対応し、開発フェーズは持ち帰りで対応。開発環境や機密情報等の問題から、クライアント先での作業が必須の案件にも、要件定義から運用保守の各フェーズで、同社のエンジニアがクライアント先に常駐して対応する。

「当社のクライアントの大半は、地元である北九州の企業です。北九州は、太平洋ベルトに位置する工業の町。日本の製造業を支えた四大工業地帯の一つに数えられていました。今でも韓国や中国等、アジアに近い立地条件を活かし、自動車工場や部品工場等が多く、人口規模は日本の市で13位、九州地方では福岡市に次ぐ2位。住むにも働くにも心地の良い町です」（代表取締役・佐藤昭夫氏）。

二次請けの案件が多く、6割が客先常駐で4割が自社に持ち帰っての受託開発だというビー・エス・エスの仕事。システム開発会社の多くが、SES（準委任）から受託開発へ、そして自社製品の開発へとステップアップするが、ビー・エス・エスも一次請けの受託開発案件を増やし、自社製品開発への道を目指している。

「システム開発の一環でBIツールの導入支援を行っています。技術者でなくても扱え、ビジネスの状態が可視化できるツールがあれば、企業はビッグデータの活用やIoTの構築等に繋げることができます。そして、RPAソリューションの提供を手掛けています。株式会社アシリレラが開発する純国産のRPAソリューション『ロボオペレータ』は、IT知識不要・シンプルな操作で業務自動化が可能。当社はロボオペレータの販売代理店として、RPAソリューションの営業と導入支援をしています」（佐藤氏）。

2019年9月には、JR九州システムソリューションズ株式会社の傘下に入り、JR九州のシステム開発を担う親会社の開発にも参加し、経営の安定化を図っている。

「当社案件の約3割が親会社であるJR九州システムソリューションズからの仕事。今後もJR九州のシステム開発に参加して、親会社の役に立ちながらも、ビー・エス・エス独自の路線で経営の安定化と成長を目指したいと考えています」（佐藤氏）。

と、ここまでは、地方都市に根付いた老舗システム開発会社のよくある姿。ビー・エス・エスが、エンジニアにとって働き心地が良い理由は、これから紹介する。

現在、代表取締役を務める佐藤氏は、ビー・エス・エスの3代目社長。創業者である福原氏は2013年1月に他界した。跡を継いだのは、福原氏と一緒に会社を運営してきた夫人だった。

「ビー・エス・エスが創業して2年目に、私は入社しました。同期のメンバー四人とはビー・エス・エスの第一期生に当たります。創業者が病気で亡くなった後、会社でバックオフィスを担当していた夫人が跡を継いだのですが、創業者夫人も体調を崩し、最古参のメンバーで残っていたのは自分だけということもあって、3代目の社長に就任しました」（佐藤氏）。

ビー・エス・エスの創業者は、常日頃、社員の生活を豊かにしたいと願っていた。「社員全員が持ち家に住めるように」というのが創業者の口癖だった。

「分譲マンションでもいいから、賃貸ではなく『自分の家』に住んでほしいといつも言っていました。そのために、社員の収入が上がるよう努力するのが経営者の務め。自分が経営者になって、創業者の『社員を豊かに』という理念を実現したいという思いが日増しに強くなりました」（佐藤氏）。

現在社長を務める佐藤氏も、エンジニアから経営者になって、創業者が社員に抱いていたのと同じ思いを自社の社員に感じるようになったと自らの心境の変化を語る。

「会社の主役はエンジニアです。クライアントのニーズに応えるのは、経営者ではなくエンジニア。だから、クライアントのためにも社員がモチベーションを高く保って働ける環境を作るのが経営者の務めだと考えます。エンジニアがいい仕事をしてくれると、クライアントとの取引が続き、その結果をまたエンジニアに還元できます。そうやって、好循環を生み出して、社員みんなで豊かになっていきたいです」（佐藤氏）。

社員が豊かになるには、エンジニアが成長して会社のみんなのために活躍してもらう必要がある。そのために、成長したいエンジニアは会社がバックアップ。自分が受けたい研修を探してくれば会社で費用も負担。そのほかにも、「人間力」をアップさせる研修も積極的に取り入れている。

「研修では技術だけでなくヒューマンスキルの向上にも力を入れています。そうやってヒューマンスキルを身に付けたエンジニアに、今よりも上のポジションにチャレンジしてもらうため『チャレンジポスト制度』を設けています。自薦他薦を問わず、上の役職になりたい人に昇進試験を受ける前に1年間そのポストの仕事を経験してもらう制度です。これまでに何名もこの制度を使ってステップアップを果たしました」（佐藤氏）。

2022年1月現在、社員43名のビー・エス・エス。平均年齢は37歳で、真面目でモノづくりが好きなエンジニアが多く、社員同士が“ほど良い距離感”を保っている。メンバーで毎日飲みに行くような近さもなく、かといって、ほかの社員のことは気に掛けないドライな関係でもない。仕事をする仲間として“ほど良い距離感”があるのも、同社で働くエンジニアが心地良く過ごせる要因だといえる。

残業時間は月平均13時間。繁忙期に残業が発生するくらいで、あとは定時退社が基本。残業時間を全社員に公開して、残業時間が多い社員が出ないように社員みんなでケアする体制を敷いている。

「残業時間を社内にオープンにすることで、仕事が詰まっている社員がいると、周りが助けます。常駐先での残業が増えると営業がクライアントと調整します。エンジニアが忙しさを一人で抱えることがないように配慮しています。直属の上司と1on1で、目標設定と達成度で評価。一方的に会社が評価するのではなく、本人と上司で話し合って納得できる形で次に繋がります」（佐藤氏）。

子育て応援宣言企業であり、育休・産休の復職率100%。今後も女性社員を積極的に雇用して、男女比を早急に50：50まで引き上げたいと考えている。

「2代目の社長が創業者の夫人で、自身が子育てをしながら働いた経験を持ち、女性が働きやすい会社にしようと努力していました。女性が働きやすい会社作りは当社のDNAに組み込まれています。色んな価値観を持った人に集まってもらい、会社がルールを決めて社員に押し付けるのではなく、自分達でルールを作っていってほしいと願っています。多様な価値観で会社を盛り上げていくためにも、女性社員は積極的に雇用します」（佐藤氏）。

エンジニアがマイペースで働ける会社であるのは、素晴らしいことだが、佐藤社長は喜んでばかりいられないという。「居心地が良すぎるのはどうなの？」と思っているのだとか。

会社の未来を社員達に作ってもらいたいという一念で、2019年に「次世代リーダープロジェクト」を立ち上げた。主任クラスのメンバーを集めて、社内改善や自社サービス等、何でもいいから新しい取り組みを進めてもらう。クラウドサービスの勉強会を開いたり、グルメアプリを開発したりと、社員は少しずつ新しい会社に生まれ変わるために動き出している。

「大人しいメンバーが多いので、社内に動きを持ち込むために作った制度です。会社のこれからを考えて、エンジニアには主体性を持ってもらい、永続する会社をメンバーみんなで作り上げてほしいです。そのために、会社は全面的にサポートします。ビー・エス・エスを引っ張ってくれるエンジニアがいれば、全国から迎えたいと思っています」（佐藤氏）。

成長を促すにも、頭ごなしに命ずるのではなく、制度を作ってエンジニアが使ってくれるのを待つ姿勢。会社ができることをした上で、後はエンジニアを温かい目で見守る。ビー・エス・エスは、どこまでもエンジニアを大切にする会社だ。