株式会社エクサネットHAL

SES（システムエンジニアリングサービス）と自社製品開発。二つの会社が合併することで、経営の安定化と次世代の組織運営に取り組んでいるIT企業が札幌市にある。

2017年の合併によって誕生した株式会社エクサネットHALは、SESを手掛ける「開発部」と、自社製品を開発する「ソリューション部」がバランス良く混ざり合った会社だ。

「開発部」の母体となった株式会社ハルソフトは1990年、一方の「ソリューション部」の母体である株式会社エクサネットは1992年の創業。共に札幌の地でIT黎明期から日本のシステム開発を支えてきた過去を持っている。

開発部は前身であるハルソフト時代の2012年から大手ベンダー系SIer2社と取引があり、現在は開発部所属エンジニアの大半が、その2社のオフィスに常駐している。開発部のオフィスは札幌市厚別区の札幌テクノパークにあるが、常駐先のオフィスは通勤アクセスが抜群な札幌駅北口の近くにある。

「10年以上、取引がある大手ベンダー系の会社での案件が100%です。医療サービスの予約管理システム、酒蔵管理システム、百貨店のECサイト等、クライアントが受注した様々な案件に参加しています。TypeScriptやAngularJS、Vue.js、AWSといったモダンな開発環境で働くことにより、新しい技術にキャッチアップでき、市場価値の高いエンジニアを目指すことができます」（人財採用部マネージャー・村本徹人氏）。

長く取引を続けてきた間柄ということもあって、同社の開発部とクライアントとの間には、互いをリスペクトした強固な信頼関係が築かれている。

「客先常駐といっても、長く一緒に働いているため、クライアントの新入社員を当社のチームで育てたり、その反対に当社の社員をクライアントの社員が教育してくれたりしています。お客様というよりもパートナーに近い立ち位置で、重要な案件も任せてもらえ、互いに協力し合って一緒に成長を目指しています」（村本氏）。

同社のSESは、常駐先となるクライアントが2社だけなので、SESだが勤務先を固定できるメリットもある。一つの職場で腰を落ち着けて働きたいエンジニアには、最適な環境だといえる。

同社のソリューション部では、機能・サービス・価格の三拍子揃った自動車教習所システムを開発・提供している。事務管理、予約配車、入金管理、講習管理、送迎バスと、自動車教習所の運営に必要な業務を総合的に対応できるのが強みだ。

「1993年から30年にわたって、自動車教習所支援システムの開発を続けています。自動車教習所の運営も時代に合わせて進化しています。当社のソリューション部でも、その流れに合わせて自動車教習所の運営支援システムを適時ブラッシュアップ・アップデートしています」（代表取締役社長・木下秀美氏）。

自動車学校向けパッケージソフトとして、北海道でのシェア70%、全国でも100校以上で活用されている。

ソリューション部のもう一つの事業の柱がタクシーの配車システム。新潟通信機株式会社との共同開発で、こちらも27年の実績があり、全国1,000社以上のタクシー会社で使われている。

「共同開発をしている新潟通信機は、昭和35年創立の老舗タクシー無線メーカー。当社では、配車処理と顧客管理のシステムのコア部分の開発を担当しています。タクシーの配車システムとしては、国内トップシェアを獲得しています」（木下氏）。

さらに、タクシー配車システムのノウハウを生かして、流通・輸配送管理システム『eプランナー』を2008年にリリース。2010年には、送迎支援システム『バスアポ』も開発した。

「自動車教習所もタクシーも、業界内シェアの高い製品を提供してきましたが、マーケット自体が小さいこともあって、これまでに培った技術を生かして流通や輸配送業界向けの製品も開発しています」（木下氏）。

ソリューション部では、クライアントの要望に沿ったシステムの受託開発も手掛けており、流通や輸配送業界向けの製品を通じてクライアントの幅を広げて、次の開発に繋げている。

「パッケージ製品は汎用性を考えて開発していることもあって、それぞれのクライアントのニーズに合わせるため、受託開発も手掛けています。パッケージ製品の開発だけでなく、導入や追加開発、アフターサポートでもエンジニアが必要です」（木下氏）。

2017年の合併によって誕生した同社。「開発部」と「ソリューション部」は別の会社であったが、誕生から5年が経過した現在、会社は一つの組織として固まった。

「最初はカルチャーの違いを感じましたが、互いにコミュニケーションを深め、今は共通のカルチャーができたと思っています。今のメンバーはみんな『エクサネットHAL』の社員という意識を持っています。開発部とソリューション部で人事異動もあって、合併によってエンジニアのキャリアに幅ができました」（村本氏）。

技術者は40名在籍。そのうち中途採用のエンジニアは15名。新卒採用で入社したエンジニアが25名。今後は中途採用を積極的に進めて、中途入社と新卒プロパー社員のバランスを整える意向だ。

「近年は新卒採用に力を入れてきましたが、中途採用も積極的に展開することになりました。合併から5年が経ち、会社の組織整備も落ち着いたことから、中途のメンバーを増やして、社内に新しい風を吹かせたいと考えています。当社の現状は、第二創業期。若い世代が活躍する会社になって、代替わりを進めてほしいと願っています。中途入社のメンバーも含めて、現場で話し合い、組織の在り方や会社の未来を考えてください」（木下氏）。

5年かけて、二つの会社を一つのカルチャーの会社に変化させてきただけあって、同社の組織は風通しが抜群。小規模組織ということも手伝って、社員が会長や社長と話ができる距離感。社員の意見が経営層まで届く。

「社員の提案にすぐ応えるフットワークの軽さがあります。最近では、ドレスコードのカジュアル化が社員からの要望で決まりました。オフィスで働く時は、“スーツにネクタイ”は不要になりました。リラックスして働きたいという社員の意見が基になっています。チームリーダーとの対話の機会を増やしたのも、社員の声です」（村本氏）。

エンジニアの働き方にも柔軟な対応をしている。リモートワークとオフィスワークを状況に応じて使い分ける、ハイブリッド型のワークスタイル。SESの現場は、クライアントがリモートワークを採用しているが、新入社員は会社や現場に早く慣れるように、出社比率を高めてもらうようにしている。ソリューション部もリモート勤務可能だが、電話等のお客様対応が発生するため、出社するエンジニアも必要としており、フルリモートではない。

残業に関しては、管理職全員でエンジニアの稼働状況を共有し、高稼働とならないように注意している。

「残業は2022年実績で、月平均14時間です。会社でそれぞれのエンジニアの残業状況を把握しており、稼働が高まったら代休を取る等調整してもらうように要請します。ソリューション部は、定時退社日を設けて早く帰るように促しています。自社開発はエンジニアの熱が入るとオーバーワークになりがちなので、働き過ぎないように会社で気を付けています。フレックス制度はありませんが、時間有休制度を活用して、各自で調整しています」（木下氏）。

30年以上の実績を持つ二つのIT企業が一つになり、新しい会社として飛躍しようとしている。同社でなら、エンジニアにとって快適な働き方が実現できる。