株式会社APPLILAB

飲食店向け総合管理ソフト『K1くん』（けいいちくん）を提供している、株式会社アプリラボ。
『K1くん』は、タイムカード、シフト管理、商品仕入、売上、POS、経営分析等、飲食店の現場で必要となる機能を網羅している自社独自開発プロダクト。日頃使い慣れたタブレットやスマートフォンをハンディ端末として使うことができるほか、来店客が自分自身でオーダーできるセルフ端末機能も盛り込んでいる。
さらに、仕入や給与、SNS、予約、来客予測、決済、自動釣銭機、券売機といった豊富な外部ソフトとも連携できる。
「POSやシフト管理など、それぞれの機能に特化したプロダクトはたくさんリリースされていますが、全てを網羅しているものは多くはありません。その中で、『K1くん』は飲食店の現場に密接に寄り添い、現場が使いやすいUI/UXを実現させている点においては随一であると自負しています」と、代表取締役社長の菅野壮紀（かんの・たけのり）氏は胸を張る。

まず、同社には特定のオペレーターが対応するコールセンターがない。問い合わせには営業、技術支援チームの社員が自ら対応する。ユーザーの不満などの感情も含めて聞き取るためだ。
ユーザーとダイレクトに接して困りごとや要望を聞き取ることで迅速の対応や、機能改善に役立てている。

さらに、外部研修の一貫として、居酒屋で接客体験を行っている。自ら『K1くん』のユーザーとなり、接客しながらオーダーの入力やPOSレジなどを使う状況を実際に体験するのだ。「金曜日の夜という繁忙時に酔客からオーダーを聞いての入力や、暗い店内での会計作業、疲れている時間帯の作業時に、多くの画面遷移を伴う入力画面はミスのもとになる。そういった実感は、体験してみないとわからない」と菅野氏は話す。

『K1くん』の主要対象顧客は、1社で5～20店舗を展開している中小規模の飲食店チェーン。ユーザー数は、310社・1021店舗（2023年11月現在）ほど。海外展開も行っていて、台湾、シンガポール、カンボジア、ベトナム、ハワイの顧客にも使われおり、右肩上がりの成長を続けている。
「国内シェアは、POSを導入している中小規模の飲食店の数％だと思います。POS未導入は半数以上あると考えられ、逆に言えば海外を含めて市場は潤沢に広がっています」と菅野氏は力を込める。

同社の創業は2007年10月（インタビュータブ参照）。大手SIerのエンジニアであった菅野氏は、独立を意識し、オフタイムに飲食店向けのタイムカード機能だけの簡素なプロダクトとして『K1くん』を開発。その完成とともに、資金がなかった菅野氏は繋がりのあった居酒屋の経営者に出資してもらい、代表者も務めてもらう形で同社を設立する。その後、居酒屋の現場の声を聴きながら徐々に機能を増やし、使い勝手を磨き上げていった。

『K1くん』の認知度アップ策として、不動産会社のセミナーに登壇させてもらい、飲食店オーナー向けに『K1くん』を用いた業績分析ノウハウを紹介。また、飲食店オーナーの飲み会にも参加する。「業績管理が面倒だと感じるオーナーなどから受注を広げていった」と菅野氏は話す。創業の数年後に株式を買い取り、代表取締役に就任する。

同社が掲げる経営理念は、「“めっちゃすごいパートナー”になる」。その思いについて、菅野氏は次のように説明する。
「対外的、対内的の両面があります。対外的な面においては、パートナーとして対等な関係であることを示しています。お客様とはいえ対等な立場としてプロダクトやサービスを提供し、対価を頂く。そして、そんな通常のパートナーを超え、お客様の業務効率化や売上拡大に限りなく貢献する“めっちゃすごい”存在を目指します、という宣言です。対内的には、コンプライアンス面もしっかり守る、胸を張れる組織にするといったことを指しています」

今後の成長戦略は、『K1くん』一点に集中特化し、さらなる機能改善と新規顧客開拓を進めていくことに尽きる。あらゆる機能を網羅したSuiteである『K1くん』の強みを打ち出し、リプレイスや新規導入を狙う。海外展開においては台湾、シンガポール、カンボジア、ベトナム、ハワイの飲食店でも展開しており、「変えるのは言語と通貨と税率くらいで、基本的な機能はどの国でも通用する」と菅野氏。まさに市場のポテンシャルは極めて大きいと言える。

同社の社員数は現在22名（2024年7月現在）。エンジニアが集まる「開発チーム」、営業が集まる「営業チーム」、カスタマーサポートが集まる「技術支援チーム」に分かれてそれぞれが専門スキルを高めている。

”めっちゃすごいパートナー”になるという企業理念を実現するため次の5項目の行動基準を掲げ、全員が追求している。

●誠実な相互コミュニケーションを取り続ける
●「ありがとう！」と思われるサービスを追求する
●感動ソリューションを生み出す
●アジャイル的思考を磨き続ける
●ワクドキ笑顔をわかちあう

「“アジャイル的思考”は、新たなことを行う際に、難しくても『無理』と言うのではなく、まずは少しずつでもやってみようというマインドを指しています。“ワクドキ笑顔”は、チャレンジして失敗してもそれが自分の肥やしになるとポジティブに考え、ワクワクドキドキするチャレンジを楽しみ、お互いに称賛し合おうといった姿勢を指しています。このように平易な言葉にして覚えやすいよう工夫しています」と菅野氏の思いが込められている。

この行動基準は、社員の昇格テストに用いて浸透・促進を図っている。昇格テストの最低レベルは、5項目を暗記しての筆記。とはいえ、漢字を間違えても不合格という厳しさだ。次のレベルは、「自分が考える『感動ソシューション』とは？」などと考えさせる内容。マネージャーへの昇格を決める設問は、「『感動ソリューション』をメンバーにどのようにつくらせるか？」といったマネジメントを意識した内容になる。この結果は、直属の上司および人事担当、管掌役員、菅野氏の合議制で判断する。
「行動基準の中味の意義が腹に落ちて実践しているメンバーが、昇格を決めている傾向にあります」と菅野氏は話す。

人材育成の観点では、前述の居酒屋の現場を実際に体験するシフトイン研修がユニークだろう。「あえて『K1くん』を導入していない店に派遣することもあります。従業員同士の休憩中の会話までが『K1くん』開発の参考になりますし、現場スタッフと仲良くなれるのは大きなメリット。皆、挨拶が元気にできるようになって帰ってきます」と菅原氏は目を細める。

働き方はリモートワークも柔軟に対応できるが、特に営業や技術支援チームのメンバーはオフィスワークを基本としている。業務でわからないことがあった際に周囲の人に即座に聞いて打開できる効率の良さがあるためだ。
なお、同社は自社プロダクトの更新を月1回のペースで行っており、間に合わない開発案件は翌月に回すことで業務量の平準化と残業抑止を図っている。それ以外に、健康診断の徹底などで「健康経営優良法人」に認定されている。

社内の求心力を高める施策としては、決算期の8月に全員参加の研修を行い、1年間のチーム別活動報告や今後の経営方針の共有、親睦を深める機会をつくっている。

そんな同社が求める人材像は、経営理念への共鳴。
「飲食店に寄り添い、“めっちゃすごいパートナー”になりたい方に来てほしいと願っています」と菅野氏は期待を寄せる。