株式会社TxTo

フリーランス・個人事業主の確定申告の負担を軽減する、税理士監修の確定申告効率化スマホアプリ『Taxnap（タックスナップ）』。確定申告書を作成するにあたって、時間と手間が掛かる入力、会計知識が必要な勘定科目選択や家事按分の計算などを自動化。フリーランスに必要な機能だけに絞り、シンプルでミニマルなUIで作業の簡略化を可能にした、画期的なスマホアプリである。このサービスを開発・提供しているのは、2022年11月設立のスタートアップ、株式会社TxTo（テキスト）だ。同社が『Taxnap』を立ち上げた背景や、共にUXの向上を図る仲間について、CTO 金丸翔氏にお話を伺った。

コロナ禍の影響を受け、日本ではフードデリバリーやライバーなど新しい職業が生まれた。また、エンジニアやデザイナーなど既存の職業においても、コワーキングスペースを活用したノマドワークなど働き方は多様化。既にフリーランス・個人事業主は国内労働人口の4分の1に増え、インターネット上で確定申告を行う人も2021年には442万人に増加。うち153万人がスマホで申告を完結している。しかし会計・経理業務に苦手意識を持つ人は少なくない。既存の会計ソフトも使いこなせていない状況が珍しくなく、確定申告ともなると負担感はさらに増す。

「CEOの田中（雄太氏）が累計300名以上にインタビューしたところ、“確定申告が嫌過ぎて、正社員に戻った”という発言がありました。あまりにもったいない話です」（金丸氏）。

今後はインボイス制度や電子帳簿保存法により、バックオフィス業務の負担はさらに増していく。そこで確定申告を楽にし、フリーランス・個人事業主としてその人らしい活動を続けてもらうために開発されたのが『Taxnap』である。

「スワイプ確定申告」と銘打たれた同アプリは、スマホネイティブ向けに独自の機能を備えている。
・クレジットカードや銀行口座との連携で面倒な入力が不要
・経費は右、それ以外は左とスワイプするだけで仕分けができる
・高精度の自動判定により勘定項目は選択不要
・Wi-Fi、自宅、車などに関する家事按分をスライダーで設定
・既存の会計ソフトの取引データを移行できる
・税理士による監修を受けている…等

同社は2023年7月にこの画期的なスマホアプリの正式版をリリース。利用者数を着実に伸ばしている。

同社は、早稲田大学の同窓生4名によって立ち上げられた会社である。代表取締役CEOの田中氏、CTOの金丸氏、CMOの永岡氏は学内のサッカーサークルの同期。エンジニアの功刀（くぬぎ）氏は、サークルはフットサルだが金丸氏と同じクラスで学んだクラスメイトだ。

「田中は学生の頃から起業を考えていて、私と彼は“そのときが来たら一緒にやろう”といつも話していました。4人とも別々に就職をしたのですが、プライベートではずっと繋がっていたのです。当社を立ち上げるまでに、それぞれ会社に勤める経験も、副業やフリーランスという形で確定申告を行う経験も積んでいました」（金丸氏）。

2022年10月頃から田中氏が『Taxnap』の企画を練りはじめ、累計300名以上の潜在ユーザーにインタビューを実施。手応えを感じた田中氏が金丸氏に声をかけ、基本設計がスタートする。その後功刀氏、永岡氏がジョインし、自らの確定申告の経験も踏まえながら開発を進め、2023年春にβ版をリリース。利用者の声をもとにUXのブラッシュアップをし、7月に正式版をリリースした。有名なベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの投資を受け、同社は2024年以降、成長にドライブをかけていく。

アウトプットは『Taxnap』だが、同社にとってスマホアプリ開発・提供は手段であって目的ではない。同社の目的は「ひとりひとりの可能性を最大化する」というミッションを果たすことだ。

「まずは確定申告からのスタートですが、フリーランス・個人事業主が本業に集中し、自分の可能性やポテンシャルを最大限発揮できるようにしたい。それが私たちの目指している世界観です。『Taxnap』で簡単にキャッシュフローをデータ化・可視化すれば社会的信用がさらに上がります。フリーランス・個人事業主としての活動を諦めるどころか、事業を継続・拡大するチャンスに繋がるでしょう。そんな将来を見据えたとき、確定申告でつまずくのはあまりにもったいない。そう考えて、『Taxnap』を開発したのです」（金丸氏）。

会計ソフトの世界は大手が居並ぶレッドオーシャンだが、「だからこそ、やりがいがある」と金丸氏は語る。

「全く新しい確定申告の常識を構築する自信はあります。今後も増えていくフリーランス・個人事業主の課題を、ワンストップで解決するプラットフォームに育てたいですね」（金丸氏）。

前述の通り4名でスタートした同社は、今はまだアーリーステージ。この段階でジョインする仲間は4名と変わらない創業メンバーと言える。そんな創業メンバーに期待するのはどのようなことだろうか。

「まず私たちは、“当たり前のことを当たり前にやる、当たり前のことを当たり前に超える”というカルチャーを体現する会社にしたいと考えています。挨拶を忘れない、期限を守るなど、当たり前のことはしっかりやる。しかしそこに安住するのではなく期待値を超えていこう。この意識を持って組織づくりをしています」（金丸氏）。
そのカルチャーをエンジニアやデザイナーの実務に紐づけて表現すると、「ユーザー視点で職域を超えた提案をする」ということになる。上司やリーダーの指示を待つのではなく、インタビューに同席してユーザーが求めているものを感じ取る。UXを最大化するために、エンジニアはUIに、デザイナーは機能改修についてどんどん首を突っ込む。そんな能動的な取り組みが、アーリーステージの同社には欠かせない。

能動的な取り組みは、そもそもの働き方についても生かされる。同社では1日あたりの実働時間も勤務時間帯も設定していない。毎朝10時の定例ミーティングに参加できれば、その前後の時間の使い方はそれぞれの判断だ。オフィスはあるが、全員が集まるのは週1〜2回程度。つまりタイムマネジメントも各自の裁量に委ねられているのだ。例えば田中氏や永岡氏は、早朝から午後の早い時間まで仕事をして、夕方以降は育児にあてている。金丸氏は大好きなサウナ付きのコワーキングスペースで終日働くことも珍しくないそうだ。

「サウナは4名全員大好きで、オフィスから1駅離れた場所にあるフィンランド式サウナをよく活用しています。全員が好き、という意味ではフットサルもそうですね。4人で一緒に定期的に大会に参加しています。私たちは全員、プライベートを大切にしたいという思いが強いですから」（金丸氏）。

2025年にはフリーランス・個人事業主が2,200万人（労働人口の約3分の1）になるという調査データがある。その数字が現実のものとなったとき、同社の『Taxnap』のプレゼンスはさらに増していくだろう。フリーランス・個人事業主が自分らしく働き続けられる環境を整え、日本経済全体の成長に貢献しようという同社の取り組みに共感する人は、少なくないのではないだろうか。