ご略歴をお教えください。
1986年に大学を卒業し、新日本製鐵(現・日本製鉄)に入社しました。製鉄事業部門の財務部に配属され10年ほど働いた後に、新規事業であるエレクトロニクス・情報通信事業部門に異動し、そこでも財務や経営企画の仕事に就きました。 2001年に当該事業部門と子会社の新日鉄情報通信システムが統合し、新日鉄ソリューションズ(現・日鉄ソリューションズ)が設立されます。私はその統合プロジェクトの一員となり、会社設立の準備に関わりました。会社設立後は、財務部門の責任者として予算策定ルール全般をつくり、業務支援システム開発プロジェクトに参画します。 その5年後にITインフラ事業部に移り、統括部長として事業をグロースさせるべく、戦略商材の企画や投資等を手掛けました。それを8年ほど手掛けたところで、エヌシーアイ総合システム(NCI)に2年ほど出向したのです。当時、NCIは業績が30億円程度で頭打ちとなり、初の赤字を出すような状況でした。私は産業システム事業部長を兼務しつつ役員として事業戦略のつくり直しを行い、2年後に38億円まで伸ばして成長軌道に乗せたところで、新日鉄ソリューションズに執行役員企画部長として戻ります。古巣のITインフラ事業部の収益改善や社会公共ソリューション事業の業務改善等を手掛け、21年4月、NCIに再赴任し、同年6月に社長に就任しました。当時のNCIは減収を続けて35億円程度で停滞していたため、状況を改善することが主要なミッションでした。 そして、各事業におけるスクラップ&ビルドを行って成長領域にシフトする戦略を実行し、3年ほどで現在の60億円までの成長を果たしています。
御社をどういう会社にしていこうと考えていますか?
当社の企業理念は、【エヌシーアイ総合システムは、専⾨性の⾼い得意分野を持ったSlerとして、優れたシステムの提供を通じて社会に貢献し、お客様とともに成⻑し続けます。】というものです。社長に就任した際、専門性を持って社会貢献はできていても、最後の「成長し続ける」ところが弱いと感じました。そこで、成長領域を定めて戦略的に経営リソースをシフトすることにしたのです。成長領域とは、若手社員を投入し力を付けるとともに、領域そのものが拡大し、また人材が育つという拡大再生産ができる領域です。例えば、ERPやアジャイル開発といった領域等が挙げられます。これに取り組むことで、就任後3年で毎年約30人ずつ採用し、売上も年率30%程度を実現させています。 今後も人材育成や投資を的確に行って、毎年10%ずつ伸ばしていくとすると2030年には100億円に届きます。当面はこれを目標に取り組んでいこうと考えています。
そのために社員に対して期待することや、社員が御社でどんな人生を過ごしてほしいかの思いをお聞かせください。
先述の企業理念は目標ではなく“姿”だと捉えています。その姿を続けていく先にあるのは、お客様から感謝され、共に伸びるビジネスパートナーからも喜ばれ、処遇の上がる社員が満足し、家族からも「いい会社だね」と言われ、会社が成長していく姿です。 こうしたビジョンを共有した上で、社員には「共に会社を成長させていこう」と話しています。そのために、新たな領域やサービスを加えていかなければなりません。常に新たな情報を探索し、後進を育成し、自分自身もより高度な役割を果たせるよう努めなければなりません。ぜひ、このことを理解して取り組んでほしいですね。 また、これから入社していただく人材は、一定水準の素養の上で、当社でどんな役割の下、どんな貢献をしていただくのかという目標を設定できる方であってほしいです。目標がなければ現状とのギャップが分からず、単純な日々の積み上げでは10年後に歴然とした差が付いてしまうからです。 ぜひ、目標意識のある方に加わっていただきたいと願っています。
小池さんの仕事観をお聞かせください。
私自身は、会社と社員の父親だと思っています。まだ子供のうちは一生懸命育てるし、ある程度育ったら独り立ちを促し、成功すれば我が事のように喜ぶ。そんな気持ちがあります。ですから、仕事はそんな将来を期待する楽しみや喜びを感じる機会であるということですね。 なお、座右の銘というほどではありませんが、松尾芭蕉の唱えた言葉である「不易流行」が好きです。守るもの、捨てるものをはっきりさせることが事業運営でも重要であると感じています。
オフタイムは、どういった過ごし方をしているのでしょうか?
もっぱら、自宅の庭でのガーデニングを楽しんでいます。3月頃からクリスマスローズが咲き始め、5月頃からはツツジやサツキ、アジサイが咲きます。それを過ぎれば剪定に忙しくなり、夏は芝刈りと、冬場以外はやることがとても多く、満足しています。 そんな作業をしている時も、仕事のことが頭から離れず、ふと「あれはどうすべきか」と考えていることも多いですね。経営者とはそのようなものだと思っていますが。