株式会社DNTI

「この業務にドローンを取り入れたら、もっと管理が楽になるのでは……？」「このシステムで、あの業務も一括管理できれば……」――そんな“なんとなくのアイデア”が、各企業の現場で生まれてはいないだろうか。

しかし、いざ社内で提案して形にするにはかなりの時間とマンパワー、そして知識が必要。素晴らしいアイデアなのに、日の目を見ないまま消えてしまうケースも多いかもしれない。

ぼんやりとしたイメージはあるものの、うまく形にならず、社内で眠るアイデアたち。それらを、IT技術を駆使して“共創”してきたのが、株式会社DNTIだ。

代表取締役社長である西村大輔氏は、大手コンサルティングファーム複数社を経験し、経営支援にとどまらず、大規模なCRM・ERPの導入にも携わってきた。その後は大手SIerのセールスに転身し、AIやIoTに関する企業の新規事業立ち上げにも貢献。さらにその経験と知見を生かして独立し、10社にまで及ぶ企業の顧問を歴任した。

そんな西村氏が代表となって、2020年に設立された同社。もともとはERP支援を手掛ける企業として生まれた。しかし西村氏は、“ERP”だけでなく“DX”との両輪で事業を展開していくことを決意。

これまでIT業界を歩んできた西村氏は、ERP導入市場にライバルが多いことも熟知していた。大手企業の参入も多い中、ベンチャー企業がERPの一本軸で挑むのは至難の業だ。

「コロナ禍を迎えた時期と重なり、企業のDXの重要性は日に日に増していました。私がこれまでDXに関わってきた経験を生かせば、さらに良いスタートを切れるのではないかと考えたのです」（西村氏）。

かつて西村氏が在籍していた大手SIer出身のメンバーも、続々とジョイン。「ベンチャー企業でありつつ、知識の豊富なベテランへ気軽に相談できる」と、ERP支援事業は順調に成長を遂げた。

2023年3月には、世界最大級のテクノロジー企業と共同でDX推進の定額制サービスを開始。そして2024年1月には、印刷事業をはじめITメディアを組み合わせたセールスプロモーション開発や、プロダクツ開発等の事業領域で活動する50社以上が所属する企業のホールディングカンパニーとの包括的業務提携も実現している。

この目覚ましい成長には、“ERP”と“DX”の両輪経営が成功を収めたことも大きい。そして、同社が設立時から心掛けてきた、クライアント企業との“共創”という考え方が大きな強みとなっているとも言えるだろう。

“アイデアを一緒に形にしていく”、“同じ船に乗る”、“伴走していく”――西村氏の話には、そんな“共創”をベースにした言葉が多く出てきた。

「私たちの使命は、クライアントが持つ“アイデア”を、私たちの“技術”で一緒に形作ることです。それも、スピーディに、そしてリーズナブルに」と西村氏は胸を張る。

西村氏の狙い通り、現在同社ではDX支援が主力事業として急成長している。その中でも代表格と言えるのは、『DI工房』と呼ばれるアジャイル開発型のDX支援サービスだ。

例えば、とある大手農機具メーカーの場合。クライアントから「地図上の一定エリア内で特定用途の土地の面積を調査したい」というご相談を受けたことがあり、まずは該当するエリアをポリゴンデータ化する必要があったとのこと。
手段としては衛星で画像を撮影する方法が考えられるが、予算に対してコストが掛かり過ぎることがわかり、クライアントと何度も協議を重ねた結果、晴れた日に空撮で撮影した写真をもとにAIを使って土地をポリゴンデータ化するアイデアを提案。また、AIで抜け漏れが発生しがちな領域については人間が作業を代替する方法を考えるなど、様々な角度からのフォロー案もあわせて提案を実施。

「こんなやり方はどうですか？」「それいいですね。やってみましょう」といった感じで話が進み、クライアントと話し合いながら新しいアイデアを生み出していくスタイルこそが、『DI工房』らしい仕事の進め方と言える。

まだまだプロジェクト例を挙げればキリがないが、この『DI工房』について西村氏は以下のように語る。

「企業の皆さんには、“なんとなくのアイデア”はあるのです。ですが、いざ本格的にSIerなどへ依頼するとなれば、しっかりとした要件定義書を提出するのが一般的です。当然、現場で働く皆さんには要件定義を書くための知識もなければ、時間も足りません。だから私たちは、“なんとなくのアイデア”の段階から企業と話し合い、一緒に形にしていくのです」

そのような“なんとなくのアイデア”から形作れる上、同社では「取り急ぎここまで作ってみたい」といった段階的な開発もOK。だからこそ簡単な話し合いで、スピーディに、そしてリーズナブルなシステム作りができるのだ。

「そんな短納期で納品できるのですか？」――クライアントからは、そんな驚きの声が相次いでいる。もちろん、その高いクオリティや同社の伴走力も評価され、「次はこんな仕組みを作りたい」といった継続取引が続々と生まれている。

こうした『DI工房』のほか、同社にはもう一つのDX支援の形がある。それがワークショップ型DX支援だ。クライアント企業内にて定期的なワークショップを開き、経営陣や従業員が話し合いながら職場環境や組織体制の課題を改善していくサービスだ。

「『DI工房』もそうですが、私たちはITに関する技術をお貸ししているにすぎません。ワークショップでも、私たちは話し合いの場や少しの知識を提供するだけ。その結果『DI工房』でもワークショップでも、クライアントの皆さんが課題を“自分ごと化”できます。そして自分たちで作っていくことで、ソリューションや企画に強い思い入れを持てるのですよね」（西村氏）。
一方的に提供するサービスでは到底実現できない、クライアント参加型のサービス。このスタイルで、同社は業界での差別化に成功している。

「ITサービスはSIerやエンジニア企業のものではなく、ユーザーが使うもの。だからこそ、こうしてユーザー中心に作られなければならないと思うのです。思い入れの強い製品であればあるほど、日々の業務に深く浸透し、活用されていくはずです」と西村氏は話す。

今後も同社は、このクライアント参加型のサービス作りを貫いていく。

クライアント参加型のサービス作りと聞くと、もしかすると「クライアントの言いなりで開発しなければならないのか……」と心配になるエンジニアもいるかもしれない。しかし、その心配は無用だ。

「当社のエンジニアは、クライアントからの要望、いわば“お題”を心待ちにしているのですよ。それぞれの悩みに対して、どんな技術で答えられるのか……と。『AIを使ってみましょう』『この技術を生かせませんか』など、日々ワクワクしながら提案していますね」（西村氏）。

プロジェクトの中には、リアルタイムで最新技術を探しながら開発を進めるものもある。例えば世界中の研究論文を集めたり、大学教授に協力を仰いだりすることも珍しくない。

「最新技術を突きつめながら、最善のロジックを探していく……。エンジニア冥利に尽きるような仕事ができていると思います。とあるエンジニアは、毎日にこにこしながらパソコンと向き合っているのです。楽しそうに開発にあたっている姿を見ると、私も嬉しくて嬉しくて」そう西村氏は誇らしげに語った。

もちろん、このようなメンバーの努力や成果はしっかりと評価の対象になる。同社では、設立当初から評価制度やクラス（階級）を整備。その上、メンバーが増えてきた近年は、一人ひとりに合ったキャリアパスの形も構想している。

例えば、将来マネージャーとして活躍したいメンバーもいれば、この先もスペシャリストとしてエンジニアの道を突き進みたいメンバーもいるだろう。同社では、それぞれのメンバーの志向に合ったキャリアアップを支援している。また、クラスとはまた別の軸でポスト（役職）も作っていく予定。階級が若いメンバーも、先輩を気にせずリーダーになれるような仕組みだ。

エンジニア魂が光るようなプロジェクトや、努力に対するまっとうな評価、一人ひとりに合わせたキャリアの形。これらには、西村氏の「エンジニアの社会的立場を良いものにしたい」という思いが込められている。

「今後は“当社ならではのリーダー像”のようなものも、皆で考えていく予定です。単に技術や能力が高いから、世渡り上手だから……、という世間のイメージで作られた人物像にとらわれるのは、もったいないと思うのです。『こんな人こそ、DNTIのリーダーにふさわしい』と皆に支持されるような人に活躍してほしいから」（西村氏）。

同社の事業のベースにある“自分ごと化”は、社内でもしっかりと生きているようだ。

自分の技術や知識をフル活用してクライアントを支援し、自分の夢見るキャリアを進む。そしてそんな組織を、皆で“共に創って”いく。一人ひとりが輝けるワンチームの舞台こそ、このDNTIだ。