有限会社スープレックスインク

クライアントは、大手広告代理店経由だけでなく、企業やショップなどとの直取引も少なくない。
「代理店経由では、大手のナショナルクライアントが中心ですが、長いお付き合いのある青山エリアの美容サロンや雑貨ショップ、カフェなどの仕事も楽しんでやっています。こうしたところは冒険的なクリエイティブを実証実験させてもらえ、その成果を大手クライアントに応用できるメリットもあります」と、プロデューサー／ディレクターの片倉大輔氏は話す。

そんな同社の強みについて、創業メンバーでもあるディレクターの渡辺学氏は次のように説明する。
「クライアントから言われたことだけ返すのではなく、エンドユーザーのインサイトに立ち、どうすればよりインパクトや効果のある表現ができるか、自分たちオリジナルのアイデアやセンス、知見をプラスし、クライアントの期待を少しだけ上回る差分を提案することを心掛けています。それが小規模な制作集団である当社の唯一の価値であると考えるからです」

その価値が認められているからこそ、錚々たる顔ぶれのクライアントから二十有余年の取引が続いていると言えるだろう。

Webサイトや雑誌・書籍、動画、イベント、パッケージ等、あらゆるメディアにおいて、広告や記事コンテンツ、ビジュアル／デザイン、ネーミングといった広範な制作物を手掛けている。主な実績は次のとおりだ。

●完成車メーカーA：パリ五輪プレゼン用動画／Webカタログ／各種メディア用キャンペーンバナー／展示会ブース空間デザイン／周年記念サイト
●完成車メーカーB：社内デザイナー向けメディアサイト
●化粧品ブランドA：系列美容サロンコーポレートサイト／周年記念サイト・記念誌
●化粧品ブランドB：キャンペーン広告／SNS広告用バナー
●美容サロン：OEM商品ネーミング・ブランディング
●飲料メーカー：健康食品ブランドサイト／SNS運営
●日用品メーカー：コーポレート／リクルーティングサイト
●通信キャリア：キャンペーンLP／各種メディア用バナー
●タレントマネジメント会社A：コーポレートサイト
●タレントマネジメント会社B：アイドルチーム公式サイト
●音楽レーベル：アーティスト初回限定版パッケージ
●テレビ局：番組キャンペーンサイト
●スポーツ＋音楽フェスティバル：公式サイト
●スポーツ国際大会：パンフレット
●温泉旅館：コーポレートサイト
●テクノロジーベンチャー：コーポレートサイト
●インターネットサービス：アワード記念品パッケージ
●官公庁：万国博覧会公式サイト／キャンペーンポスター・ステッカー

同社は、2002年8月、代表取締役の鈴木マモル氏と渡辺氏、女性エディターの3名で設立された。
鈴木氏と渡辺氏は、それまでとある編集制作プロダクションで東京・青山の情報誌の制作に携わっていた。

80年代に創刊されたその情報誌は、流行の最先端エリア・青山におけるファッションやアート、音楽、美容といった情報を自由なスタイルで紹介するフリーペーパーとして、トレンドに敏感な読者層を掴んでいた。1997年、そんな同誌の編集長に鈴木氏が就任、翌年に渡辺氏がアートディレクターとして編集チームに加わる。
「当時、“カリスマ美容師”がブームとなり、そんなサロンを紹介する中で大手化粧品メーカーと繋がりました。また、骨董通りのアンティークショップやファッションブティックなど、最新のムーブメントを取り上げていく中で、広告代理店などにも人脈が広がっていったのです。そこで、自分たちがやりたい面白いことがいろいろできそうになったというタイミングで、同誌を離れて当社を創業することにしました」と渡辺氏は述懐する。

以来、あくまでも自分たちができるだけ楽しめることを最重視し、少しずつ新領域へのチャレンジも重ねながら今日まで業容を広げてきた。

例えば、大手飲料メーカーの健康食品ブランドのSNS広告。それまで手掛けたことのないジャンルだったが、大手代理店の知人から「現行の制作会社によるビジュアル表現の提案がクライアントに刺さらなくて困っている」と相談を受けたことに端を発する。
「クライアントのニーズを聞いて自分たちなりに絵柄を考えたのですが、サンプルを見せたほうが早いと考えました。そこで、カメラマンを呼び、ドラッグストアに商品を買いに行き、オフィスの一角をスタイリングして撮影したのです。それをクライアントに見せると、『何ならこれで投稿してほしい』と言われるくらいハマりました。非常にスピード感のあるケースでしたね」（渡辺氏）。

ディレクターはもちろん、デザイナーやエディター・ライターといった専門性を持つメンバーも、全員が営業・プロデューサー的な側面を併せ持ってプロジェクトを進める指向性が同社の特色。イベントやパッケージなど特殊な領域も、専門スキルを持つ協力スタッフをアサインして取り組む（最近では、動画制作やSNS運用、ファッションディレクター、システムエンジニアなど）。
「創業以来、協力スタッフのネットワークも多様に広がって当社の財産になっています」（渡辺氏）。

今後も、“自社ならではのアイデアやセンス、知見”を存在価値として追求していく方針だ。

2024年7月現在、同社のメンバーは6名。うち女性は2名で、全体の平均年齢は約40歳という大人の雰囲気がある風土。営業担当者はおらず、組織運営のカルチャーは“フリーランスの集合体”だ。渡辺氏は次のように説明する。

「クライアントの要望どおりのものをつくるのは、誰でもできること。そうではなく、自分なりのアイデアを盛り込み、クライアントが思ってもみなかったものを提案することに価値があるのです。そんな成果物を納品し満足していただければ、またオーダーしていただけます。つまり、一連のプロセスが営業行為とイコールなのです。一クリエイターであっても、こうしたことができることでフリーランスとしてもやっていけるわけです。そんな自立したプロフェッショナルの集合体が当社の目指す本質的な姿と言えます」
「自分で会社を立ち上げたり、フリーランスでやるのはまだちょっと不安という人に当社は最適な会社と言えるかもしれません」と片倉氏は補足する。

会社組織としてのメリットも豊富にある。まず、外部協力スタッフの潤沢なネットワークの共有や、AIやXRなど最新情報の共有、そして何よりも大手クライアントによる大規模なプロジェクトに携われるチャンスがあることだ。

また、少数精鋭の同社では、一つの職種に閉じこもることなく一人何役も幅広い業務にタッチできる。「任されたい」と考える人材にとっては、刺激的で面白い環境があると言えるだろう。
なお、給与は年俸制で、12分の1の月給のほか年2回の賞与を支給している。
「特に賞与では本人の貢献度を考慮していますので、高い成果を上げれば上げただけの報酬としてお返ししています。なお、明確な評価制度はこれから整える予定です」（渡辺氏）。

同社オフィスは、青山の骨董通り沿いのビルにある。ファッションやアートの最新動向に関心のある人には最適な立地だろう。
「時流に対して常にアンテナを広げ、業務にも反映させることができる方に加わっていただきたいと願っています。多少の欠点があっても、どこか尖っている部分のある方だと嬉しいですね」と渡辺氏は呼びかける。