生晃栄養薬品株式会社

「人の健康と幸せに貢献します」を企業理念に掲げ、医療用医薬品や一般用医薬品を中心とした受託製造・開発を行っている生晃栄養薬品株式会社。創業から80年以上の歴史と実績を誇り、誠実・努力・感謝の姿勢で医薬品の製造を手掛けている。医薬品は大きく分けて、病院で処方される「医療用医薬品」と、ドラッグストアで購入できる「一般用医薬品」の二つに分類されるが、同社はそのどちらも製造。また、高齢化が進む中で、医薬品の需要が増加している現状から、同社が属する業界は今後も安定した成長が期待されている。

「『病気で悩んでいる患者さんに医薬品を届ける』という思いを大切にしながら、製造しています。ハイクオリティーかつ安心安全な医薬品を製造する技術と、卓越したモノづくりの精神を持っているのが、私達生晃栄養薬品です。こうした思いがあるからこそ、委託先からの信頼も厚く、リピートしてくださるお客様が多くいらっしゃいます」（G氏）。

同社は、毎年売上高を更新し続けているという。その理由のうちの一つは、新規顧客の増加だ。品質の良いものを作り続けているからこそ、資材メーカーや業者等の紹介経由で、新たな顧客獲得に繋がっている。その品質の高さについて、F氏は次のように語る。

「QC部門（品質管理）は、自分達が工場の最後の砦だという強い意識が根付いており、しっかりと自信を持って『No』と言えます。分析技術も一からしっかり学べる環境が整っていて、近いうちにLIMS（研究所を管理するための情報システム）も導入予定なので、管理レベルもぐんと上がる予定です」

同社の特徴は、ルーツでもある「手掛け糖衣」で培ってきた技術力の高さだ。手掛け糖衣とは、錠剤やカプセル等の医薬品を製造する際に、薬の表面に糖分をコーティングする工程を指す。手掛けという言葉が含まれる通り、手作業で行う工程もあり、非常に細かく丁寧な技術力が求められたという。同社は長年にわたって、手掛け糖衣で製造してきたそうだが、現在はその技術をベースに、最新の設備を活用しながら質の高い医薬品を製造している。

また、製造工程において、どれだけオリジナリティーを発揮し、提案できるかが重要だ。医薬品であるため、品質や原料に関して大きな変更はできないが、可能な範囲で提案するように心掛けている。受託製造においても、同社のカラーを最大限発揮するため、メーカーの担当者を常駐させる形は採っていない。これにより同社のオリジナリティーが確保されているのだ。

1日に約30万人分の医薬品を製造できる設備が整っている同社では、安定した医薬品供給を実現するために、『長期就業できる環境整備』、『作業のルーティン化』、そして『高い技術力』の三つを重視している。

「製造区域は、冷暖房がしっかり効いた快適な環境になっています。クリーンルームなので、清掃も徹底されていて、常に清潔な状態が保たれているんです。製造の工程では、一人で黙々と機械を扱うこともあれば、少人数のチームで製品を作ることも。機械の操作も、誰でも対応できるようにルーティン化されたものから、複雑で熟練が必要なものまであります。まさに機械化された工程と、熟練の技術を駆使する人の手による工程が共存している工場と言えるでしょう」（T氏）。

機械は多く導入しているものの、全てが完全に自動化されているわけではなく、人の手が加わることで製造が成り立ち、安定した供給を保っている同社。この状態を維持するため、部署間の横断的な情報共有の場として、毎月「製造部会議」が開かれている。ここでは、省力化や商品化について議論し、各プロジェクトに基づいて情報を共有。効率的な運営はもちろん、万が一トラブルが発生した際も各部署が連携して迅速に対応し、問題を最小限に抑える仕組みが整えられている。

実際に、通常は特定の部署が対応する作業を別の部署が代わって進めるといった協力体制の強化や、製造ロットに不良が発生した際に複数の部署が助け合い、休日出勤を回避しつつ問題に対応したケースもあったという。

「製品は工程ごとに部署が分かれていますが、生産が遅れるような大きなトラブルが起きた時は、協力してサポートし合っています。一部の部署に負担が集中し過ぎないように取り組む体制が整っているのです」（T氏）。

さらに「大阪の将来構想会議」という未来に向けての会議も実施。全部署の係長以上が参加し、「こうした薬を製造していく」「この設備を導入する」等の方向性を共有および議論している。

「私達は、時代の変化に対応し、求められるものを創造する意識を持っています。若狭工場の社員の平均年齢は35歳であり、そのうち20代が42%、30代が24%です。比較的、年齢の若い人材が多いため、変革に対する戸惑いが少なく、チャレンジ精神も旺盛です。今後も品質を維持しつつ、より効率的な医薬品製造を目指しています」（G氏）。

同社では社員の満足度を高めるため、企業認定制度を導入している。その一つが「社員ファースト企業宣言」だ。男女や障がいの有無、年齢にかかわらず、働きやすく、子育てや介護と仕事の両立ができる職場づくりを推進。実際に、月2回のノー残業デーの実行や産業カウンセラーとの相談窓口の開設、時間単位の有給休暇や時差出勤制度が導入されてきた。

「当社の社長は女性で、自らも子育てをしながら仕事との両立をしています。そのため、コーチングを取り入れて、自らが考え、成長していく仕組みを社内で実現しようとしているのです」（F氏）。

また、社内でキャリアアップを図るための「作業認定制度」もある。この制度について、M氏、Y氏は次のように語る。

「この制度は、机上での学びと現場でのOJT研修を通じてスキルを身に付け、2～3カ月後に習得度合いを確認するものです。問題がなければ一人で製造や機械操作をお任せします。習得度のチェック項目は分析の仕方から製造方法等、機械ごと、品目ごとにマトリックス化されているため、スキルの見える化が可能です。その人がどの程度のスキルを持っているか分かるため、上司にとっては教育支援のツールにもなっています。この制度により、担当業務を確実に習得できるため、キャリアアップが可能ですし、結果が評価制度や昇格に反映されます」

昨今、企業の製造物責任やコンプライアンスが厳しく問われる中で、同社は社員一人ひとりの品質管理・品質保証への意識を高めることが重要と考えている。全社員が医薬品GMPを理解し、品質管理・品質保証への意識を高めるため、全社的な研修活動を徹底。また、通信教育受講制度を設け、外部研修を受講することも可能だ。法令や製剤技術の習得を通じて、幅広い自己研鑽の機会が提供されている。

同社の工場のうちの一つ、若狭工場のある福井県では、「希望を持って自分らしくチャレンジできる社会をつくる」を活動テーマに掲げながらSDGsを推進している。そんな中、同社は「ふくいSDGsパートナー」として、SDGsの達成に貢献することを宣言。地元小中学校へ学びの機会を提供している。

このように、長年にわたり信頼と実績を積み上げてきた同社は、働きやすい環境づくりやスキルアップの支援を通じて、社員一人ひとりが成長できる場を提供している。自分の力を試し、医薬品製造を通じて社会貢献をしたい方にとって、理想的な職場環境が整っていると言えるだろう。