御社以前にも起業を経験されていますね。今に生きている経験はありますか
渋沢栄一氏の著書『論語と算盤』にあるような、理念と利益のバランスを痛感したことではないでしょうか。 新卒入社したコンサル会社を退職後、フリーランスコンサルを経て、学校教育ビジネスを展開するベンチャー企業に転職しました。今でいう探求やPBL(Project Based Learning)を中学・高校・大学に普及させる会社です。しかし、そのベンチャーはリーマンショック前後で、企業からのCSR関連の協賛金や投資が大きく減り、経営が傾き、労働裁判にまで発展しました。そして、教育改革への思いが強い仲間達と新たに創業します。しかし、同様に資金繰りに窮して、借金返済に追われる日々でした。 仲間と想いを一つにして仕事に取り組むことは大切です。しかし、同時にビジネスを持続可能にしていくためには、その基盤となる利益も大事です。 理念と利益のバランスを取ることは知的には理解していましたが、教育ビジネスの体験を通して、痛感しました。 ちなみに、教育ビジネスについては、仲間達が10年以上も続けていて、今ではPBLの教材として、全国の学校に普及しています。
『論語と算盤』――起業家の多くがぶつかる、大きな壁かもしれませんね
はい。反対に、次に起業した会社では、利益に走ってしまったように思います。 もともとはインバンド観光客の急増を背景に、日本の素晴らしい文化や製品を広めるために、越境ECビジネスをはじめました。しかし、それは頓挫してしまい、経営コンサルティング事業とシステム開発事業にピボットしました。 ここでは、DXブームを追い風に、お陰様で事業拡大はしたのですが、理念を置き去りに、利益に走り過ぎてしまったように思います。事業は伸長するものの、コロナ禍で内省する時間が増えて、ある時ふと「いまの事業は、誰の何のためにやっているのだろうか。」と悩み始めました。 そこで志を変えて、「今度こそ理念と利益のバランスをきちんと考えよう」と立ち上げたのが、当社です。仕事に対する使命を持ちつつ、結果もしっかりと出す。その実現に向けて、理念だけでなく行動指針も作りました。 その行動指針の一つとして掲げるのは、「自らの限界に挑戦すること」。 ……こう話すと暑苦しい印象を与えてしまうかもしれません。しかし、子供の時の自転車の練習に例えると、どうでしょうか?練習当初は何度も転倒して擦り傷を作って、泣きじゃくって。でも、乗れるようになりたいから、幾度も挑戦するんですよね。この思いは子供だけではなく、大人も同様だと思います。それだけの覚悟を持って挑戦する人は、結果もちゃんと出すし、自分自身も人間として成長しています。 だから、行動指針として、当社では言語化しています。
そんな行動指針を共有するメンバーは、どのような方々ですか
今のメンバーは、自分なりの“will”を持って、プロアクティブに動く人が多い印象です。例えば、企業理念「人材の流動化によって、日本の競争力を強化する」に対し、自分はどのように貢献できるのか。それぞれの行動指針に対し、自分はどう行動すべきか。これらを自ら考えて実行に移している人です。豊富なスキルやキャリアも大事ですが、それ以上に使命や志を持つことが大切だと当社は考えています。Howの前に、WhyやWhatを考えることですね。 また理念に共鳴し、各自の役割をわきまえるからこそ、チームワークも発揮できます。他の人が困っている時、自らの役割を飛び越えて、手を差し伸べるメンバーが多いです。例えば、私が忙しくて特定の業務に手が回らない時は、メンバーが自ら染み出してサポートしてくれます。一人ひとりの使命に加え、こうしたチームワークが、クライアントへのさらに高いホスピタリティを生み、信頼に繋がっていくと考えています。
チームワークに加え、ディスカッションの機会も豊富だと伺いました
はい。メンバーの成長やチームワーク強化のために、深いところまで意見を交換する風土が根付いていますね。 そこには遠慮や忖度はなく、時には代表の私自身が周りからビシッと言われることもあります。例えば、社外取締役の佐藤は、小学校時代からの友人であり、企業経営の経験も豊かです。だからこそ代表取締役としての私に、厳しい指摘をストレートにしてくれます。しかし、佐藤だけでなく、他のメンバーも同様です。これは「理念や目標を実現したい」、「組織を発展させたい」、「仲間を成長させたい」という強い思いから出る言葉です。もちろん私も時には厳しい意見を伝えます。特に今のメンバーは強い覚悟とWillを持ってジョインしてくれています。そんな仲間の成長のためにも、私も真剣に対峙しなければなりません。 こうやって一緒に切磋琢磨したチームメンバーは、入社前よりもビジネスパーソンとしての市場価値が高くなり、人間的にも成長していると思っています。 これからジョインしてくれる未来のメンバーも、共に成長できる関係を構築したいと強く考えています。 そのためには、それぞれのWillや使命を傾聴していきます。
仕事と全力で向き合う金居さんですが、リフレッシュ方法はありますか
休日に家族とゆったり過ごすことが、私にとっての最高のリフレッシュです。 日本文化が好きなので、妻や小学生の息子と盆踊りに参加したり、神輿を担いだりもします。13年ほど消防団にも所属していました。 そもそも生まれは商売人の多い東京下町なので、地域の繋がりを大事にしています。映画「男はつらいよ」はDVDで全巻持っており、寅さんを尊敬しています。 また、息子の友達家族と旅行やBBQも休日に楽しんでいます。先日も5世帯で遊園地に行きました。 また、育ちは千葉県なので自然も大好きです。私は特に山が好きで、なぜか魂が落ち着きます。 ……でも、日常の何気ないひとときも幸せですよね。何もない休日にみんなで食卓を囲んで、会話と食事を楽しむ。家で映画パーティーをしたり、息子が寝るまで一緒に過ごしたり。こうした時間が「明日も頑張ろう」というエンジンになっています。