株式会社By Up

P2C領域で急成長を遂げている株式会社By Up。店舗経営およびコラボ商品の開発・販売を行っており、前々期までの売上成長率1000％、前期も133％と順調に拡大している注目のスタートアップだ。

代表の大島遼太氏は前職でも事業の立ち上げを経験しており、その事業がきっかけで会社を年商1億から70億円にまで大きくした経験を持つ。そんな彼が新たにフィットネスジムの事業に興味を持ち、2021年6月に立ち上げたのがBy Upなのだ。

現在の同社の主力事業は4つ。筋トレ系YouTuberとして圧倒的な人気を誇る山澤礼明氏と共に手掛けるフィットネスジム『FIT PLACE』事業。そしてそこから派生した高機能トレーニングウェア『EVANE』の製造・販売事業と、プロテイン・サプリメントの製造・販売事業。

さらに、2024年からスタートしたのが、人気美容師YouTuber・AYAMAR（あやまる）氏と立ち上げたヘアケアブランド『Kaminii』事業となっている。

「一番の特徴は、筋トレや美容等、専門領域に特化した職人的なインフルエンサーと組んで事業を作り上げているところですね」と大島氏は話す。

P2Cの場合は個人が消費者に直接商品やサービスを届けるかたちとなるが、同社は影響力のある職人的なインフルエンサーとコラボし、独自商品の製造・販売からマーケティングまで全てを一貫して行うことで、他社ではあり得ないほどの売り上げを実現させている。

「当社の強みはいろいろありますが、まずは圧倒的な実績です。フィットネスジムは1店舗目がオープンして2年ほどですが、すでにフランチャイズと直営で140店舗まで広がりました。初期投資が1店舗あたり1億円ほどかかるにも関わらずです。プロテインやサプリメントについては世界最大級のオンラインショッピングサイトの2023年最優秀賞を受賞するなど、他のライバルメーカーが気にならないくらい売れています。ヘアケアブランドも1年目にして数億円規模まで急成長しており、さらなる拡大が見込めています」（大島氏）。

なぜBy Upはそれほどまで急成長できているのだろうか。

「まず言えるのは、タッグを組むYouTuberの選定には相当の自信を持っています。そのうえで、通常のP2Cだと売り上げはYouTuber側に頼りがちになってしまうのですが、当社はそうではなく、商品設計からマーケティングに至るほぼ全てをこちら側で徹底的に行っていることです。それこそコメント欄にどのような反応が来るかや、動画でどういう言葉を使って発信してもらうかまでも細かく設計し、再生回数に依存しなくても売れる仕組みを作り上げました」（大島氏）。

ものづくりの力にも自信を持つ。生産管理を手掛けるメンバーは、非常に能力の高い凄腕をヘッドハンティング。例えばプロテインであれば、メーカーや商社等を挟まずに全て内製することで工程を通常よりも少なくし、ほかよりもよいものを安く世に出すことを可能にしている。

加えて、それをバズらせるノウハウをしっかり持っていることから、一度に大量発注することができ、コストを抑えることもできている。

YouTuber自身の「こだわり」を盛り込んだ製品はどうしても少量発注になりがちで、その分コストが上がって値段も高くなる傾向にある。それで価格を下げようとするとこだわりが薄まり、消費者の期待を裏切ることになるケースも散見されるが、同社の仕組みでは決してそうならないわけだ

そして、ここが一番のポイントなのだが、P2Cや商品開発、マーケティング、フランチャイズ等を巧みに組み合わせた同社のビジネスのすべての仕組みを一から考えているのが、代表の大島氏だ。彼のもとで一緒に働ける面白さは、ほかでは得られない経験になるに違いない。

今後について大島氏は「事業をやみくもに増やすつもりはない」と話す。
「既存の事業がどれもビッグマーケットであり、それらに勝る事業は正直なかなかないと思っています。今後はどんどん増やすのではなく、ポテンシャルを見極めながら、慎重に選びつつ手を出していく考えです。ただ、商品を世に出すことだけに限定せず、スポーツチームを応援・支援するなど、エンタメの分野などにも広げてチャンスを探っていきたいですね」

その先に描いているのは、YouTuberという職業を取り巻く環境のサポートだ。

「YouTuberという職業ができて10年ほどになると思いますが、だんだんと一部の人をのぞいて再生回数が取れなくなってきています。それによって多くの人は広告収益も減っており、持続的な収益の確保も難しくなっています。だからこそ、私ができる範囲にはなりますが、専門性を持つYouTuberが広告収入や案件収入以外に事業収入を毎月ストックで得られる状態を作るところまで持っていきたいのです。YouTuberという職業をもっとサポートしていきたいです」（大島氏）。

また、P2Cというかたちで専門家が消費者にものを届けることのよさを追求していきたいとも考えている。専門家が消費者にこだわりを届けるのは、一定の影響力があると考えているからだ。

「消費者にとってもよいことだと思うのです。実際に山澤氏のSNSにも『この場所にジムを作ってほしい』といった声がたくさん届くのですが、専門家が本気でよいサービスを作った時の熱狂具合はすごいものがあります。YouTuberにとっても消費者にとってもwin-winな状態が間違いなく作れるのです」（大島氏）。

現在、同社のコアメンバーは大島氏を含めて3名。『FIT PLACE』の事業については店舗スタッフの採用やフランチャイズ展開などの関係からグループ会社を作り運営してはいるが、基本的には人手が足りないところについては外部の企業にも協力してもらいながら運営を行っている。

これまではリファラル採用が中心だったため、公募は今回が初。今、By Upに入社するメリットにはどのようなものがあるだろうか。

「少人数のスタートアップでありながらかなりの利益が出ていて、VCや投資家などから調達する必要がありません。こうした環境下では、かなり投資がしやすいのは間違いありません。人手が足りず大変な部分はあると思いますが、それを上回るくらい、伸びている実感の中で働けることも大きな醍醐味ではないでしょうか」（大島氏）。

採用はポテンシャル枠と専門職枠の2軸で進めていく考えだという。いずれにしても「提案型」の仕事を推奨しており、各々が自発的に提案しながら自分で仕事を進めていく力が求められる。「当社で活躍できたら、おそらくどこでも通用すると思いますよ」と大島氏は話す。

「もちろん消費者から感謝の言葉を頂けば嬉しいですが、どちらかというとマーケティングなどにおいて予測を立てて、狙った通りの結果が出た時に大きなやりがいを感じるメンバーが多いようです。ですからそういう志向を持つ人の方が当社には合うかもしれませんね。組織としてはスペシャリストが集まって一つのプロジェクトを進めるような会社にしたいと思っています。それぞれの強みをしっかり発揮できる環境を整えていきます」（大島氏）。

まだまだ小さいスタートアップであり、研修制度や福利厚生等の待遇面は整っているとは言えない。そこはこれからしっかりと考えていくところになるだろう。一方で、給与面については「成果に対してどんどん上げていく」と断言する大島氏。
「カチッとした評価制度があることで金額の枠組みができてしまうのであれば、制度なんてない方がよいという考え方です。当社は何かで縛ることなく、利益などを踏まえて評価し、例えば月次給与が一発で数十万円上がることもざらです。年間で500万円くらい上がったメンバーも。それくらい、よい人材・よい仕事をする人にはちゃんと払います。それもスタートアップの醍醐味だと思っています」

とはいえ、社員が増えて組織が落ち着いてしまうとそうはいかなくなるかもしれない。初期メンバーになれる今だからこそ、享受できるメリットなのかもしれない。

急激に伸びているスタートアップで思う存分やりたいなら、間違いなくBy Upはぴったりの環境だろう。