ベビカム株式会社

1996年という日本のインターネット発展の初期から、オリジナルのSNS企画運営を開始し、現在もそのサイトを運営しながら、各業界の大手クライアントと協業でビジネスSNSなどの構築や運営を行うインターネットベンチャー企業、デジタルブティック。

15年以上も進化しながら継続しているオリジナルサイト「ベビカム」は、妊娠・子育てを楽しむ女性を対象にしたコミュニティサイトだ。会員数は約16万人、総アクセス数月間600万PV以上、ユニークユーザ数月間約60万人という日本最大級の妊娠・出産・育児情報サイト。その影響力の大きさを表す数字がある。年間のユニークユーザ数と出生率などから算出した理論値では、全妊婦の86.7%がこのサイトを利用しているということになる（同社資料）。

これに注目した各業界の大手企業--ぐるなび、本田技研、日本生活協同組合連合会、ミサワホーム、三越伊勢丹、ソニー生命といった大手クライアントが、同サイトに広告を出稿しているのだ。

「ベビカム」以外にもモバイルサイト「らくらくモバ育」＜2010年12月公式3キャリア対応開始＞がある。「らくらくモバ育」はママが記録したことを知らせるリマインダー機能により、ベビーの成長・お世話の記録を、パパ、祖父母と瞬時に共有できるコミュニティサイトである。家族が繋がる携帯母子手帳というコンセプトで、ここでしか入手できない泣きやませサウンド集を開発し、今後も開発を続けながら新しい仕組みを導入していく。

そして、ベビカムでは東日本大震災で被災された妊婦さん、ママへ、全国で「何かできることがあればしたい」と思っているベビカムユーザのみなさんとのかけ橋になれたらという思いから、専用のコミュニティサイト「ＭtoＭ」を開設。2011年7月20日より被災地からのレポートブログを掲載し、今後も今出来る支援を継続していく。

また、同社では、オリジナル以外にも、顧客企業とのアライアンスを含めたコミュニティの企画制作、運営等のサービス提供を多数手がけている。代表例を紹介すると、Honda車購入を考えている人に向けて、Honda車オーナーの購入までのストーリーを紹介するコミュニティサイト「クルマ家族会議」、Hondaのバイクをこよなく愛するライダー達が、自慢のベストショットを投稿し集うコミュニティサイト「Honda Rider's Voice」、看護学生向け会員制携帯サイト「ナースになりタイ」、臨床看護師向け会員制携帯サイト「スマートナース」への配信サービスを各種展開、その内容は多種多彩だ。

オリジナルコンテンツを通じて獲得したノウハウを、双方向型Webサービスを利用した販促を考える企業に惜しみなく共有し、ビジネスパートナーとして成功を目指すことで支持される同社。業績も、浮き沈みの多いインターネット業界の中で健闘し、成長を続けている。

また、アップルジャパンでマーケティングを担当した経歴を持つ代表取締役の安西氏が、「インターネットの利用は、それ自体が目的ではなく、あくまでもパワフルなツールとしての活用です。ネット社会と言われるようになっても、基本は人と人とのつながりが大切だということには、変わりありません」と語っているように、インターネット以外のリアルな活動も積極的に取り入れながら、目的に応じて総合的に活動を行うのも特徴的だ。

その一つとして、同社が「ベビカム」を基に行っているリサーチ事業がある。育児の最中に起きる出来事について、ベビカム上でアンケートを取り、結果をベビカム上でリリースし、さらにそれを他のメディアにも公開することで、一般の人たちにも情報を共有する。この活動が、育児現場と社会を結ぶ知識循環の好モデルとして、第2回キッズデザイン賞（2008）の「審査委員長特別賞　社会貢献メディア賞」を受賞したのだ。同社のプレス発信は、多くの新聞やテレビなどで紹介されており、今どきの育児事情を発信するものとして注目を集めている。

また、妊娠・出産・子育てをとりまく経済環境、社会環境、地球環境について、グローバルな視点で問題を提起する「ベビカム」や、携帯サイト「ベビカムケータイ」「モバ育」、妊婦、母親向けリアルイベント等と連動したクロスメディアプロモーションが好評だ。

※キッズデザイン賞：2007年度から経済産業省の後援で創設された、子供の安全、安心に貢献するデザイン、子供達の創造性と未来を拓くデザイン、子供達を生み育てやすいデザインのプロダクト、リサーチ、仕組みなどに贈られる賞。

インターネット上、そしてリアルでの「コミュニティ」を核にした様々な活動で、社会に発信を続ける同社。そこでの仕事はクリエイティブで、生活者の目線を大切にする面白さがあるだろう。社会的に影響度も高いメディアだけに、その責任は重く、着実に運営しながらも、常に新しい取り組みや発信を行っていくことが求められる。

2011年6月現在、社員は40名で、平均年齢は36歳。結果を出していくことに対して真摯に取り組む、一生懸命な社員が集まっている。忙しい毎日ではあるが、状況に応じて臨機応変に対応する力、そして強いチームワークがあるようだ。たとえば、家族がいる社員の場合、子供が急に発熱したり、男女問わず配偶者が体調を崩した等のトラブルが起こることがある。そんなときはすぐに帰宅させ、周りの人間が全力でフォローするというカルチャーがある。

キャリアを積んでここに集まってきた社員達が、一つの目標に向かって協力し合い、助け合いながら、社会に貢献したいと願い、仕事をしている。ベンチャー企業に多いサークルのような雰囲気とは一線を画す社風の企業のようだ。