トレノケートに入社するまでのキャリアを聞かせてください。
中学時代、祖父がプレゼントしてくれたパソコンに触れたことがきっかけで、ITの世界に夢中になりました。月刊誌を片手に独学でプログラミングを学び始め、高校は工業高校へ進学しました。 卒業後には地元のパソコン販売店で営業職を経験し、25歳のとき、さらなる視野を広げようと海外へ渡り、異文化の中で4年間を過ごしました。 帰国後、ITエンジニアとしてのキャリアはまったく未経験からのスタートでしたが、”自分のキャリアとして何で生計を立てていけるか” と ”本当にやりたいこと” を真剣に考えた結果、中学時代にプログラミングを学んだ経験を思い返し、ITエンジニアとしての道を歩み始めることを決意しました。 まずSES企業でクライアントのセキュリティ系Webサイト管理を担当し、勉強好きな性格も手伝って着実にスキルを磨き、3年目には上流工程を任されるまでに成長。さらに新たな挑戦を求め、35歳で大手SIerに転職し、SEとしてネットワーク設計や提案に取り組みました。 そして2020年、これまでの技術と経験をもっと多くの人に役立てたいという思いからトレノケートにジョインしました。現在は、IT講師として、エンジニア時代に培ったノウハウを多くの人に伝え、技術の楽しさを広めることに情熱を注いでいます。
ITエンジニアとしてのキャリアから、「講師」に転職しようと思ったきっかけは何ですか?
きっかけは、社内の勉強会でクラウド技術の講師を担当したことでした。2015年頃、クラウド技術と出会い、特に自動化や省力化の可能性に強く引き込まれました。「一度仕組みを作れば効率が格段に上がる」という点に夢中になり、プライベートの時間も使って学習に没頭するようになりました。 そのうち、社内での業務効率化の関心が高まり、「勉強会をやってほしい」という声が増加。勉強会を企画し、講師やファシリテーション、運営に積極的に関わりました。勉強会の後に「作業が楽になった」「課題が解決した」といった感謝の声をいただくたびに、人に技術を伝え、成長を後押しする喜びを実感しました。 エンジニアとしての仕事にやりがいもありましたが、システムを利用しているエンドユーザーの声を直接聞ける機会が少ないことへのもどかしさも抱えていました。転職を考えたとき、エンジニアとしてエンドユーザーと直接関わる仕事に就くか、それとも講師という立場で技術を伝えることに注力するかを迷いましたが、”話すことが好き”、”教えることが面白い” という気持ちを優先し、最終的に講師として新たなキャリアを歩む決意を固めました。
「講師」として働き始めて、エンジニア時代と比べて変わったことはありますか?
はい、大きく変わりました。一番の変化は、プライベートと仕事の両立がしやすくなったことですね。エンジニア時代は、突発的な対応や夜間の残業が日常的で、休日含め急な出勤も多かったです。特に家族が増えたことで、不規則な働き方が負担になる場面が増えていました。 講師になってからは、自分でスケジュールを管理しやすくなり、仕事も計画的に進められます。研修前は準備で忙しい時期もありますが、通常は担当が半年前や遅くとも1ヶ月前には決まるため、予定が立てやすいです。不規則な夜間対応や急な休日出勤もなくなり、プライベートとのバランスがとれるようになり、安心して仕事に取り組める環境になりました。 また、講師になってから、学びの幅が大きく広がりました。エンジニア時代は、主に案件で使用する技術の習得が中心で、学ぶ内容も業務に直結する分野に限られがちでした。 ところが、講師としては、IT技術だけでなく、経営やファイナンスの知識が求められる場面もあります。たとえば、経営層や営業担当の方も受講されるため、ビジネス視点での技術活用やコスト意識についても考える必要が出てきました。こうした新しい分野への学びが、毎日のモチベーションにもつながっています。
今後のキャリアについて、どのようにお考えですか?
私のキャリア観は、「管理職」を目指すよりも、ずっと現場に立ち続けることです。エンジニア時代も「管理職にならないか?」と声をかけられることはありましたが、技術を直接使い、磨き続けることにこだわりたいと思っていました。 講師になった今も、その想いは変わりません。学びの現場で、受講者一人ひとりと直接向き合う。この仕事が与えてくれる充実感を感じながら、声が出なくなるまで技術を伝え続けていきたいと思っています。 自分の好きな技術について自由に話し、それが受講者の興味を引き、積極的に質問をもらえる瞬間が、講師として最高の喜びの一つです。質問が増えるということは、受講者が「この講師に聞けば解決できる」と信頼してくれている証。その期待に応えられる講義を常に目指しています。 特に、受講者が実際の業務で抱える課題を克服したり、手を動かすことで理解が深まる瞬間に立ち会えるのは、この仕事ならではのやりがいです。普段の業務の悩みや講義内容とは関連が薄いテーマにも気軽に質問してもらえることで、受講者との信頼関係がさらに深まるのを感じます。 受講者は問題解決の糸口を見つけるために研修に参加しています。その手助けができるのは、本当に価値のある仕事だと思っています。そのために、私はエンジニア時代に学んだ技術や実体験を交えた説明を心がけています。さらに、自分が構築したシステムを実例として活用し、「この技術は実際にこのシステムでこう使われています」と紹介することで、技術の活用シーンをより身近に感じてもらえるよう工夫しています。その結果、「活用例がわかりやすい」といったフィードバックをいただけることが増えました。 技術を伝える楽しさと、受講者の課題解決に貢献できる喜び。この2つが、講師としての大きな原動力です。
最後に、これからのキャリアに迷っているエンジニアの方へ、講師としてのキャリアの魅力について教えてください。
転職を考えているエンジニアの方々に、ぜひ伝えたいことがあります。それは、「人に教えることが好き」や「学び続けることに興味がある」方には、講師としてのキャリアが本当に充実したものになるということです。 エンジニアから講師へ転職して、私の中で最も変わったのは、「自分にしかできないことをしている」という実感を得られたことです。エンジニア時代にもプロジェクトをやり遂げた達成感はありましたが、同じ技術を持つエンジニアであれば同じようにできる、という感覚がどこかにありました。しかし、講師として働く今、自分の言葉一つひとつが誰かの行動やキャリアに影響を与えている、という責任と誇りを感じています。 さらに、講師の仕事は単なる技術伝達にとどまらず、「表現者」としての側面もあり、エンジニアとして現場で培った経験を活かしながら、自分らしい表現で伝える楽しさがあります。 また、講師として働く環境では、成長し続けることが求められるため、新しい知識を学ぶ時間が「仕事の一部」として確保されています。エンジニア時代、業務に追われて勉強時間を確保するのが難しかったと感じていた方にとって、これは大きな魅力だと思います。 もし、「自分の経験をもっと活かしたい」「誰かの成長に直接貢献したい」と感じる瞬間があるなら、ぜひ講師というキャリアを検討してみてください。 エンジニアとしてのキャリアを土台にしながら、自分自身の可能性を広げられる新しいステージがきっと見つかるはずです。