株式会社Ｅストアー

株式会社Eストアーは「日本中をウェブショップだらけにする」という理念を掲げ、ECサイトの構築と構築後のショップ運営を総合的に支援するASPサービス「ショップサーブ」を開発、展開する会社だ。サービス開始以来20年間で5万社が利用。ショップサーブが生み出す流通の総額は1兆円に上るという。

ネット通販では、いわゆるモール型サービスへの出店が手軽だが、ショップサーブは「本店型」と呼ぶ独自ドメインの店舗を構築するシステムだ。直感的で使いやすい制作画面や購入フローを考え抜いたCMS、効率的な管理画面などで、開店と日々の運営にかかる負荷を最小限にとどめ、ネットショップの規模や経験値を問わず、誰もが使いやすいシステムを実現。「売る機能」ではなく、研究されつくした「売れる機能」が詰まっていることが特徴だ。

さらには、マーケティングや広告運用をはじめとする集客のための数々の施策やコンサルティングなど、これまでに築いてきたノウハウやメソッドを惜しみなく提供する支援サービスも多彩だ。顧客は個人のショップから、米菓のトップ企業、プロスポーツチームのオフィシャルショップ、有名百貨店の食品宅配サービスなど誰もが知っているような大手企業まで、様々な企業や優良店舗が名を連ねる。

このように、同社の収益の柱となっているショップサーブだが、Eストアーはショップサーブのその先を見据えている。現在、「システムからマーケティングへ」を合言葉に、単なるシステム提供ではない、同社にしかできない施策の数々を活用した、より付加価値の高いコンサルティングサービスへとシフトしているのだ。個人ショップを含む多くのショップにシステムを提供してきた今までのサービスは残しつつ、一方でより規模の大きなクライアントを対象に販促、広告、メディア活用などeコマースを戦略的に活用し、成長させるサービスを提供する。「日本中をウェブショップだらけにする」と誓った、これまでの顧客の裾野を広げる形での事業展開に加え、今後は市場の成熟に歩を合わせる形で、より高度化した形の価値提供の両軸で事業を展開していく考えだ。

ASPサービスであるショップサーブで安定した収益基盤を確保しながら、将来に向けて、より可能性のある新たなサービスへと挑戦する。コンサルティングサービスはまだスタートしたばかりだが、目論見通り順調に売り上げを伸ばし、eコマースの領域で同社はますます存在感を増している。

Eストアーの創業は1999年。創業者である代表取締役の石村賢一氏は、インターネットの誕生前夜、アメリカで始まったネットワークを日本へ輸入しようという段階から、インターネットに関わってきた人物だ。インターネットで世界中がつながるという感動を原体験に、インターネットの特徴である双方向性を活かすに最も適したビジネスはeコマースであると確信し、同社を立ち上げた。

ネットショップが珍しかった時代に、ショップサーブの前身となるカートサービスを立ち上げ、市場を切り拓いてきた。それはそのまま、日本におけるeコマースの仕組みと市場を創り、広めて来た歴史でもある。ショップサーブは、モールではない独自ドメインの本店型のECサイトでは、最も利用されているサービスだという。

2000年前後の、いわゆるITバブル期に創業した会社の多くが市場からの撤退を余儀なくされたなかで、Eストアーは堅実に歩み、2001年に大阪証券取引所ナスダックジャパン市場（現・JASDAQ）に上場後、サービスを拡大させながら今日まで来た。ソーシャルゲームなど、その時々の成長分野に乗り出すIT企業を横目に、双方向の価値を追求するという軸をぶらすことなく、愚直なほどにeコマースの領域で戦ってきた。あくまでもその領域の中で、だが少しずつ時代に合わせて変化を遂げてきたことも、同社の持続的成長の要因だろう。そして今また、システムからマーケティングへという転換点にある。

AIが時代のキーワードになっている今、ほとんどの仕事は、いずれ機械にとって変わられると言われている。ショップサーブのサービスのメインスキームは、ASPを提供して対価を得るものだが、これは次第に自動化し、より少ない人数でサービスを回す形に進化するだろう。ノウハウを持った人材をいかに活用し、人にしかできない仕事へシフトするかが成長の鍵となる。そのような考えが背景にあっての方針転換だ。

「目指すのは三河屋さん」とは、社内外で折にふれ石村氏が口にする言葉だ。各家庭の家族構成にまで精通して最適な商品を勧めるなど、血の通った商売をしていた昔の商店。客の側も心地よく、つい財布のひもを緩めただろう。「SEOやデジタルマーケティングではできないサービスがあるはず」と石村氏は言う。それをeコマースで実現するのが、Eストアーの目指す姿だ。

ECサイト構築サービスのほか、モール型のECサービス、より手軽なカートサービスも含め、競合関係にある会社は多い。ECサイト構築サービスで見ると、機能面では、主要サービスはいずれも横並びだ。システムの裏の技術にまで目を転じれば、膨大な量を処理する技術力、機能追加などの継続的な進化、新しい技術の研究など十分に優位性はあるが、わかりやすい差別化としては、三河屋的対応がポイントとなってくるだろう。

こうした方向性を示すのは、石村氏をはじめとする経営陣。そして具体的にどうすべきかを考え、実行するのは、意欲と力のある若手メンバーだ。自立と自律をキーワードに、メンバー一人ひとりの力を信じて任せるのがEストアー流。各人の適性や能力を見ながら、適したミッションやポジションを与え、そのなかでお互いに切磋琢磨しながらチャレンジする社風が醸成されている。また、一人で頑張るのではなく、周りを巻き込むことで、一人では成し得ないことを実現する点を評価する風土もある。

同社には「110センチルール」と名付けるユニークなルールがある。110センチを超えるところには物を置かないというもので、そのココロは、視界を遮らず、みんなの顔が見える環境とすることで、周りの人に相談したり、協力しあったりすることを促しているのだ。eコマースは、まだまだ伸びしろが期待できる市場だ。実績があり、蓄積してきた技術とノウハウがあり、人的リソースも安定した収益基盤も良質なお客様もいるEストアー。環境は十分に整っているなかで、ここで何を成し遂げるかは自分次第だ。

「eコマースは商い。ビジネスあると同時に、人対人のふれあいが取引を生み、喜びをもたらすおもしろい仕事」。これも石村氏の発するメッセージだ。その本質は、IT環境が飛躍的に進化しようとも変わらない。そのおもしろさを体感し、力を発揮する人材を求めている。

ちなみに同社には、福利厚生の一つに、ショップサーブを無料で使えるというメニューもある。自らネットショップを手がけることで得られる気付きが、サービスに還元されることもあるだろう。社員どうし仲が良く、コミュニケーションも良好。育休からの復帰率100％という働きやすさも魅力的な会社だ。