まず、略歴についてお教えください。
学生時代は機械工学専攻で、自動車エンジンの設計などを行いました。卒業後は発電所の制御システム用ソフトウェアを手がける会社に就職し、発電所全体を制御するシステムの最適化や設計などを行なっていました。発電機を回転させるボイラーの蒸気温度などを秒単位で制御するわけですが、基準温度に収まらないと爆発などの大事故にもつながる仕事です。つまり、大変重要な仕事ですが、ほとんど新たなチャレンジができないという特性がありました。そこで、日本アイ・ビー・エムの藤沢事業所に転職しました。製品開発やプロバイダーを行うグループ会社でエンジニアを務め、ITの世界に入っていきました。その後、ライコスジャパンに転じ、大規模検索エンジンの開発に携わります。会社の買収とともに楽天に移り、引き続き検索エンジンの開発を手がけた後に、モバイル動画技術のセーバーに転じて技術統括を行いました。当時、イーロン・マスク氏率いるスペースX社の上層部と関わりができていて、セーバーの売却を機に同社への入社直前まで行ったのですが、別のチャレンジをしようと考え、起業することにしたのです。 設立後は、大規模アクセスを前提としたシステムやオンラインゲームの設計・開発、大学との共同研究などを行いました。2009年から2年間、シリコンバレーのLivingImage社のCTOに就任し、動画生成ソフトウェアの開発を手がけたり、2010年から4年間はdangoのCTOとして国内トップセールスを記録したゲーム『マジモン』の開発も手がけました。その後、現在進めているAI x IoT x ロボティクス x ブロックチェーンを横断した自律テクノロジーの開発に着手しています。
石井さんの仕事観についてお教えください。
よく、開発プロセスが楽しい、面白いというエンジニアがいると思います。私もそうだと思われているようですが、実はできるだけプロセスはショートカットしたいという考えです。もちろん、いいプロダクトをつくるためにプロセスは大事に考えていますが、プロセス自体を味わおうという発想はありません。プロセスは目的ではなく、あくまでも手段に過ぎないと。 作ること自体に興味はなくて、作ったものを使って早く次の段階に進みたいというタイプですね。
どんな組織、チームをつくりたいと考えていますか?
プロスポーツチームのようなイメージがあります。優勝という同じ目標を持ったハイレベルの選手が集まり、それぞれが持ち味を発揮して思い思いにプレーする、といったような。自分が勝手に立ち上げたよくわからないチームに魅力を感じて、こうして集まってくれていることには感謝しています。 日本のITベンチャーは、営業系の人が創業するケースが比較的多いように思いますが、そうするとトップは技術のことがよくわからなくて、社内にダブルスタンダードができやすくなる傾向があります。技術のわからないトップから説明を求められると、エンジニアは面倒なので「社長にはこう説明しておこう」と。すると、そこから組織が蝕まれていくわけですね。 私はエンジニアですが、当社はそういった余計な忖度や遠慮や思慮遠謀や手続きは一切無用です。なんでも率直にサッと伝えてほしい。私のアイデアや設計がダメ出しされることもしょっちゅうで、それでいいと思っています。
趣味やオフタイムの過ごし方とは?
小学校時代にサッカーをやっていて、今はフットサルをしています。仲間とやると「接待プレー」になって本気でプレーできないので、個人参加のフットサルでプレーしています。そこには異常にうまい人たちが集まり、余計なコミュニケーションはせずにひたすらガチンコでプレーしているんです。何度もケガしましたが、そういうのが好きなんです。
最後に、読者にメッセージをお願いします。
目的に対して必要と思われる技術はすぐにチャレンジしています。そういう決定は非常に速いと思います。また、当社のメンバーは検索エンジンやオンラインゲーム、コミュニティサイトを作っていたメンバーが集まっていることもあって、技術要素を組み合わせて作り上げるアーキテクト的な遺伝子があります。色々な要素を組み合わせ、複雑で大規模なシステムを作り上げる思考や技術が身につくと思います。しかも、どこでも聞いたことがないような斬新なプロジェクトばかり手がけています。相当刺激的だと思いますので、ぜひアクセスしてみてください。