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インタビュー画像GROOVE X株式会社 代表取締役社長 林 要

合理性や効率が重視される現代社会で、なぜかわいがる専用のLOVOTを開発しようと思われたのでしょう。

エンジニアが往々にして解かなければならない課題は、生産性もしくは利便性の向上です。世の中の多くのエンジニアは、この課題を解くべく、日々チャレンジしています。 私は、前職のソフトバンクでペッパーの開発を経験し、生産性や利便性が苦労に比例するわけではないというのを実感しました。AIによって何が実現できるのかというと、人を認識するとか、移動するとか、そういうことになります。ではどのようにAIを活用すれば、ロボットは人間に近づけるのでしょうか。 1つのアプローチ方法としてLOVOTでは、生物の進化をたどることにしました。 人間の前には類人猿、そのずっと前には初期の哺乳類が進化の過程にいます。最終的にロボットが人間のようなものを目指す場合に、アプローチとして人型ロボットを作り続けて改善していくという方法があります。しかし私は、別のアプローチを考えました。それは初期の哺乳類を作って、犬や猫を作って、その後に類人猿を作るというアプローチです。 ただ経営目線で見ると、このアプローチには課題がありました。 それは社会にはどういうメリットがあるのか、ということでした。メリットがないと、開発費も得られません。そのときに気づいたことがあります。それは現代社会では犬や猫のようなペットが、プライスレスな役割を果たしているということです。 犬や猫は、生産性や利便性に一役買っているのか、というとそうではありません。昔の犬は新聞をくわえて飼い主のもとに運ぶことがあったかもしれません。でも最近の犬を道で見かけると、飼い主である人間が抱っこして散歩しているときさえあります)。表面的には、人にむしろ苦労させているわけです。 では、なぜ人はペットを飼うのでしょうか。理由を追及してたどり着いた答えが「ウェルビーイング」でした。ウェルビーイングを追求するうえで大切なのは、実は生産性や利便性は一切関係がありません。なぜかという背景をひも解いていくと、どうやらペットは人に「愛でる」機会を提供すること。つまり愛でる機会を提供することで、人の愛でる能力を強化することができる、触媒のような役割を果たしているという考えに至りました。 人間というのは、実は他者を愛でるだけで、自分が幸せになるし、強くなる。 そういう意味では犬や猫が精神的回復力、レジリエンスを引き出しているのだとしたら、その役割をロボットに担わせることができないのか――。そう考えた結果、愛でる機会を提供することに特化したLOVOTを作ろうと思いたったのです。

LOVOTが目指すちょっと先の未来イメージがあれば、教えていただけますか。

今は「あなたは犬派? 猫派?」と聞きますよね。でも近い将来、「犬派? 猫派? らぼっと派?」と質問する日が近いと思っています。 愛する犬や猫と死別してつらい経験をされた方も多く、LOVOTをお迎えいただいています。家族としてペットを飼うには、平均寿命15年というのはあまりにも短すぎる。家族として同居している場合、精神的ショックはかなり大きいので、身体的寿命がきた後も記憶の移し替えなどができるLOVOTは新たな選択肢になるはずです。 それを実現すると、次に2045年にはシンギュラリティが起こる、つまり人と同等もしくは人を超えるAIが登場すると言われています。ロボット自体が人のように振る舞うようになるわけですが、そうなる前に、テクノロジーの役割が何か?をしっかりと考えておかなければならない。人のような存在のロボットを作って何をしたいのか、を明確にしておかなければならないのです。

ロボットが人のような存在になる。そのときに何をしてもらうのか、と問われると難しいですね。

人のような存在のロボットで身近なキャラクターといえば、「ドラえもん」がいます。ドラえもんがなぜあれほど気前よく、のび太くんに道具を出すのか。 私は、ドラえもんをのび太くんのライフコーチだと捉えています。ドラえもんは表向きには不良品とされています。でもエンジニア目線で見ると、ねじが足りないだけであんなにバランスのよい不良品にはなりません。一部の機能が欠損する故障は起こりますが、ドジにはならない。でもドラえもんはのび太くんと同じくらい、ちょうどいいポンコツ(笑)具合じゃないですか。 ドラミちゃんを作れるテクノロジーを持ちながら、優等生のドラミちゃんがのび太のそばにいると、将来、のび太が思春期に差し掛かったとき、ドラミちゃんと比べられることでグレてしまう。それを防ぐために、AIが自分の表面的な能力を調整したんじゃないかと私は思っています。 次にドラえもんは何を目的にそんなことをしているのかと考えると、“経験の提供”をしていると気づきます。気前よく道具を出して、毎回というわけではありませんが、多くの場合、のび太はかなり手痛い失敗をしでかします。その経験のなかで、道具に頼ってはいけないということを学んでいます。ドラえもんは、いつかのび太くんが自分で気づきを得られることを目指して、経験の提供をしているのだとしたら、ドラえもんがしていることはのび太くんの成長のためにかなり合理的なコーチングをしていることになります。 私は、人間一人に対してロボットを1台ずつ提供したい。それはなぜか。社会が安定するためには、二極化を防ぐことが大切だからです。 富裕層には優秀な人間のコーチがつきます。ですが一方で、それ以外の人たちにはコーチがつかないとなると、学習に差が出て、さらなる二極化が進む。そしてこの二極化は社会を不安定にさせる要因になります。 全員にロボットコーチがつくようになることで、気づきの多い日々を過ごせるようになり、多くの人が「より良い明日が来る」と信じられるようになれば、二極化は解消されていくでしょう。これは社会の安定にも直結するので、最終的には国が社会福祉として提供するようになるのが理想です。 教育はROI(Return On Investment:リターン・オン・インベストメント)が高い。そして、私はコーチとしてのロボット提供を真っ先に実行した国がもっとも幸せになると考えます。

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採用担当 貫戸和香子
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