代表取締役CEO　福田 隆氏

ご略歴について、お教えください。

1996年に成城大学経営学部経営学科を卒業後、ベアリング大手のミネベア株式会社（現ミネベアミツミ株式会社）に入社し営業部に配属されました。2001年2月に外資系コンピューター企業であるEMCジャパン株式会社（現DELL-EMC株式会社）に転職したものの、翌02年2月、家業を継ぐため資源リサイクル業の東港金属株式会社に入社。その半年後に父親である前社長が急逝し、4代目社長に就任しました。 営業強化や業務効率化で、ある程度の成長はできたものの限界を感じたので、未着手の領域に取り組むことにしました。それまでは非鉄金属の資源リサイクルと産業廃棄物処理を手がけていたのですが、鉄スクラップは取り扱っておりませんでした。そこで、2007年に20億円の資金調達を行い、千葉県富津市に敷地面積12600坪の大型リサイクル工場を設立しました。就任直後の03年度の売上高は10億円でしたが、06年度に43億円まで引き上げることができ、現在の売上高は約73億円です。 一方で、産廃物処理から生じる大量破棄、そしてその元をつくる大量生産、大量消費に疑問を感じ、この生産型の仕組みを、サーキュラーエコノミーを実現できる仕組みに変えて行きたいと思い、18年5月にトライシクル株式会社を設立しました。目下、世界初のBtoBサーキュラーエコノミー対応プラットフォーム『ReSACO』の開発に取り組んでいるところです。

トライシクルを始めた背景でもある環境問題について、どういったお考えをお持ちですか？

ずっと資源リサイクル事業に携わって感じるのは、まずは目の前の問題にしっかり取り組むことが大事だということです。国連が「SDGs」（持続可能な開発目標）を掲げるなど、サスティナブルな社会をつくる重要性が盛んに唱えられていますが、実際にどうすればいいかということには難しい面が多々あります。例えば、EVは排気ガスを出さないから環境に良いかといえば、バッテリーを製造するために環境に負荷を与えていますし、充電する電気の発電に、CO2を大量に排出する火力発電が使われていたりします。そういった現実の前で、崇高な目標を掲げるだけでは本気で前進させていくのは難しいでしょう。ですから、まずは目の前の課題に一つひとつ着実に取り組んでいくことが大事ではないかと考えています。

社員に対して、どういった存在になってほしいかという思いをお聞かせください。

当社は、ビジョン／ミッションとして“サーキュラーエコノミーを体現する”を掲げていますが、それが実現すれば世の中が大きく変わることは間違いありません。そんなプロジェクトに関われることは滅多にないと思いますし、実際に世の中が変われば素晴らしいことだと思います。社員とはその喜びを分かち合いたいですし、一緒に味わってほしいと思いますね。

福田氏にとって“仕事”とは？

ゲームみたいなものだと思います。思い描いたことを実現させるために、自分の得意・不得意をわきまえ、経営リソースや戦略、テクニック、人脈といった様々な要素を全て駆使しつつ行動していくゲーム、といった感じですね。ゲームと言いながら、社会に影響を与えられるという強い思い入れはあります。その結果、収益がついてくるものだと思います。 最近、よく“ワークライフ・バランス”といわれます。労働集約型の仕事においては、しっかり休みを取って次の仕事に備えるといったインターバルが不可欠です。一方、“バランス”という概念には、ワークは楽しいものではないという前提があるように思います。しかし、ゲームとしての仕事には、辛い面もありますが、楽しいこともたくさんあるわけです。“Work as Life”という捉え方もあるといわれていますが、ワークとライフは交じり合っている部分も多々あり、きっちり区別できるものではないと思いますね。「体を壊すほど仕事をする」という考え方にも、「休んでいる時は1通のメールも見てはならない」といった考え方にも違和感を覚えます。 東港金属は創業116年の企業ですが、4代目の私は何としても次の世代に承継しなければならないと汲々としているわけではありません。そもそも福田家は医者や薬剤師の家系で、曾祖父は道楽が高じて金属商を始め、東港金属を創業したと伝わっています。ですから、仕事は好きなことをやればいいと思っていますし、現にそれで私が始めたのがトライシクルなのです。

趣味や、オフタイムの過ごし方とは？

体を動かすことが好きで、休日はランニングやジムで汗を流しています。また、東港金属がロードバイクの日本代表チームのスポンサーを務めていることもあり、月1回はロードバイクにも乗っています。それ以外は、読書ですね。歴史や科学物が多いです。