柴山大 代表取締役 新卒でNTTドコモに入社し、iモードの企画担当を務める一方で、BluetoothやWi-Fiの技術の仕様化に携わる。2012年、携帯電話がスマートフォンに市場が完全に変わったのを機に、デジタルコンテンツを作る仕事に就くためリクルートに転職。SUUMOのスマホ化（開発・UX・マーケティング）を指揮した。その後、LINEに移籍して9カ月間でLINEモバイル立ち上げのマーケティング担当を経験した後、独立してnegocia株式会社を設立。過去、NewsPicksでテクノロジー分野のプロピッカーを務めるなど、大のテクノロジー好き。

創業時の思いについてお話しください。

自分の特性としては企業の中でテクノロジーを使いながら事業をグロースさせるのが得意だと思っています。しかし、サラリーマンを15年近く経験するうちに、本当の意味でビジネスをゼロから生み出せる環境に身を投じてみたい、という気持ちが強くなりました。 たった一度の人生なのだからと、社会に爪痕を残すのために経営者にチャレンジすることに決めたのです。また、4年間在籍したリクルートには、スキルを身に付けたら他社でスキルを生かしたり、独立しそれを生かしてビジネスを自ら興したりする「卒業」という文化がありました。リクルートのそんな文化の影響もあるかもしれません。 negocia株式会社を立ち上げ、代表を務めていますが、今でも自分は経営者だとは思っていない節があります。極端に言うと、会社はエンジニアがテクノロジーを使って社会貢献するための"箱"で、私はその箱の管理者に過ぎないと思っています。もちろん今でもプレーヤーとして最前線で戦っていますし、そのときは社長という肩書は関係ありません。プレーヤーとして他のメンバーと対等な関係で仕事を進めています。

Amazonのデジタル広告最適化ツール開発の狙いを教えてください。

長くテクノロジー業界やマーケティングに関わってきたこともあり、Amazonが米国で広告をはじめたときから注目していました。Amazonはデジタル広告をはじめてまだ5年足らずですが、米国のデジタル広告市場ではGoogle、Facebookに次ぐ3位に急上昇。日本でも今後の成長が見込まれています。 Amazonの広告プラットフォームは立ち上がって期間が短いこともあり、一般の方が利用するには分かりにくい部分も多く、また、運用に手間がかかることが課題です。 一方で、Amazonへ出品をしている企業には小さな会社も多く、広告で自社の製品をPRするには、広告代理店等にお願いできる規模ではない会社が多数です。 日本の地方にはいい商品を作っている小さなメーカーがたくさんあります。Amazonが彼らに日が当たる場所を作ったように、私たちは彼らが大手企業を相手に対等に戦えるためのPJRツールを提供します。AIを使ってプロの広告運用をオートで実現することにより、中小企業のニーズに応え、いい商品を多くの方に伝える橋渡しをしたい、という思いでツールを開発しています。

将来の夢について語ってください。

個人的な夢としては、、実はちゃんとした夢はあまり考えないようにしています。 今の世の中は5年～10年の周期で世の中を大きく変える技術革新が起こっています。今後世界は大きく変わっていくと思っているので、あまり先の将来を見通して夢を持っても状況が変われば夢も変わります。 夢を追う、というよりも日々の変化をいち早くキャッチし、それをどう世の中やプロダクトに活かしていくか、その日その時間を全力で生きることをポリシーとしています。 だから、時代の最先端をキャッチするために、常にアンテナを張り巡らせていますね。これは使命でも義務でもなく、ライフワーク＝趣味でもありますが笑。シリコンバレーや深圳といった世界で沸き上がったテクノロジーを、いち早く見つけて日本に持ち込む役割をしたいですね。 そういう意味では、自分を「テクノロジーの翻訳家」と思っています。海外で生まれたテクノロジーを日本の文化や日本人の気質に合わせてうまく使いこなし、サービスやプロダクトに落とし込むのが自分の使命です。

経営する上で大切にしていることはありますか？

経営の宝は人材です。その宝である人材が輝くために、働く環境の整備は重視しています。例えば、PCなどの備品をコストと考えるのではなく、エンジニアのパフォーマンスを上げるための投資だと考えるべきだと思っています。 PCはエンジニアにとっての武器そのもの。戦いに勝つには最高の武器が必要ですよね。購入したPCを2年間使うと考えて、たとえ平均より10万円高いPCを買ったとしても月に換算すればたった5000円の経費。それだけの金額を抑えた結果、エンジニアのパフォーマンスが落ちたら無意味ですよね。それ以上にスペックの低いPCを支給されることで、エンジニアのモチベーションが下がったら目も当てられません。 「働く環境」によってストレスを与えてはいけないと考えています。だからインターネットの接続スピードもPCのスペックも最高の物にこだわります。エンジニアが持っている能力を全部出してほしいからです。ベンチャーには人以外の財産はありません。それを最大限に活用するのが経営者の仕事ではないでしょうか。

人材を採用する際の基準を教えてください。

会話がきちんと成り立つ人ですかね（笑） 冗談で言っているのではなく、自分自身を振り返って、人が言っている意味やその後ろにある意図を100％理解するのは、とても難しいことだと感じているからです。相手の意図をくみ取るのは、一緒に仕事をする上で大事ですが、簡単なようで100%となると非常に難易度の高い能力です。 かくいう私も完璧ではありませんが、完全にできなくても、相手の言っていることを100％くみ取ろうという意識を持って努力はしています。その努力ができる人となら一緒に働きたいと思っています。 お互いに相手の意図を汲み取ることで、仕事のスピードもパフォーマンスも飛躍的に上がります。逆に言えば、それができないと、今のように自由に働く環境が守れません。言われたことの意図をちゃんとくみ取って守れば、規律が出来上がり、ルールで縛る必要はありません。