ライトアーム株式会社

SES（System Engineering Service）に加え、ITの分野に関するコンサルティング、受託開発、人材教育・人材獲得支援といった事業を展開するライトアーム株式会社。2016年の設立から4期目を迎えている現在、約1000社を超える顧客企業を開拓している。正社員数10名の所帯ながら、クライアント企業から高い評価を受ける人材が揃っている部分に、同社の強みがある。代表取締役の妹尾建二氏は、同社の社名に関する由来にも触れながら次のように語る。

「当社設立前、私はシステム開発や新規事業企画、ITコンサルティングといった業務をさまざまな企業で経験してきました。その経歴の中では、トップに立つ方を支えるNo.2のポジションにいることが多く、いわゆる軍師のような位置づけが自分の性分として合っているという自覚がありました。起業する際に目指したのは、自分たちが関わるすべてのお客様を支える存在になる、すべての人の“右腕”の存在になるということ。そんな思いから、ライトアームという当社の社名を決めました」。（妹尾氏）

妹尾氏は、高校卒業後に航空自衛隊に入隊。そこで、日本全国にある基地の上空の天候を詳細に分析する気象隊という部隊に所属し、最新技術を駆使した防衛システムに触れながら、ITの可能性を実感した。そこから2年間の自己学習によってプログラミング技術を習得し、5年間の自衛隊勤務終了後にシステムエンジニアのキャリアをスタートさせた。その後、ITコンサルタントやプリセールス、大手IT企業での開発部長を経て経営者となった妹尾氏は、その経験の中で人材の重要性を強く感じたという。SESという事業分野において、開発案件を担うエンジニアという人材を提案することで顧客企業を後方支援するのも、その重要性に着目しているからに他ならない。

「企業を成長させるためには、人材を集めて強化し、組織としての力も強化していくことが重要です。その思いから、当社の事業は人材獲得と育成を重視したコンサルティング業からスタートさせました。一方で、お客様からは優秀なエンジニアへのニーズが強くありましたが、設立当初は私がほとんどのクライアントに対応し、約60社を１人で担当しているような状況でした。そこで、営業組織を整備しながら、お客様に最適な人材をご提案するSES事業を拡大してきたというのが、現在の当社の姿です」。（妹尾氏）

IT分野での事業を展開してきた同社は現在、事業の多角化も積極的に推進している。代表である妹尾氏は、事業の多角化にはメリットとデメリットがあるものの、変化のスピードが速い現代においては、限られた分野での事業に依存することのリスクを分散することができると考えている。実際に、建築施工会社とのタイアップによるオフィスリフォーム事業のほか、人材獲得を目指す企業をターゲットとしたHR事業を展開する同社では、来期からは店舗開発のコンサルティング事業にも着手するという。

「お客様にとっての“右腕”と思っていただける存在になるためには、今後は新たな事業を模索していく必要があると思っています。店舗開発のコンサルティングも、テストマーケティングで実績をつくりながら、長期的な視点で事業を育てていくつもりです。重要なのは、自社の強みであるITという要素をいかに生かせるか。クライアント企業のサービスに最適なIT活用方法をご提案できるかどうかが、今後の当社の多角化を成功させる要因になると思います」。（妹尾氏）

より幅広い分野での事業を展開し、顧客企業のサービスにマッチした提案を行う上では、当然のことながら自社の人材に高い提案能力が必要となる。同社では、営業やエンジニアといった職域に限定することなく、すべての社員が優秀なビジネスパーソンであるべきだという理念を掲げている。自らの業務を担当しながらも、それだけを生業とせず、経験を生かしながら世の中の潮流や市場ニーズに合わせた事業を自ら発案することができる。同社の社員には、そうしたビジネスパーソンとしての視点や能力が求められているということだ。

「当社の社員には、自分の力を発揮できる仕事に、ある意味“社内で転職”するような、そんな意識で取り組んでもらいたい。そして、自ら事業主となるような意識で新規事業を積極的に立ち上げてほしいとも思っています。在籍している社員の中には、『日本とイタリア間で貿易ビジネスを立ち上げ、両国の関係をもっと強くしたい』というイタリア人の営業担当や、『みそラーメンの美味しさを世界に広めたい』という具体的なアイデアを持つ者もいます。そうしたアイデアは歓迎しますし、自ら考えながら積極的に行動して事業化を実現してほしいですね。当社にはすべての社員に事業部長になるチャンスがあります」。（妹尾氏）

同社の社風にある特徴として挙げられるのが、社員全員が「利他的な意識」を有していること。クライアントにとって“右腕”の存在となるためには、自社の利益だけを追求することなく、いかに他者への配慮を持ち続けられるかが重要だ。その考えがあるからこそ、むやみな企業規模の拡大を目指すことなく、100人規模の所帯で一丸となり、全員で成長を目指していきたいというのが同社の方針だ。また、その規模に見合った業績で満足することなく、少人数でありながら大手企業にも匹敵する結果を出すことも、同社の目標だと妹尾氏は語る。

「当社が“部員が10人しかいない高校野球部”だとして、地区大会3回戦敗退で『この部員数で頑張ったね』と納得して帰りにゲームセンターやカラオケに立ち寄るのではなく、なぜ負けたのか？どうしたら勝てたのか？すぐに練習メニューを考えて行動し、10人が必死で努力を重ねながら甲子園大会での優勝を目指すような組織が理想です。一騎当千とまではいいませんが、一騎当百ぐらい、1万人規模の企業と渡り合えるような企業になりたいというのが私の思いです」。（妹尾氏）

新規事業の開拓も含め、今後の同社の事業展開を支えるのは、システム開発支援を含めたエンジニアリング部門の業務となる。その業務においては、必ずしも常にエンジニアの意向に沿った案件がアテンドされるわけではなく、時には自らの方向性とは違ったプロジェクトを担当することもあるという。しかし、そこで同社の社風にある「利他的な意識」が発揮され、社員一丸となって目指す目標に向けて取り組めるのが同社の強みの1つにもなっている。

「目標となる『頂』までの道のりは決して平坦ではありませんし、到達するためには各社員に高い能力とお互いへの尊敬、自己努力や利他的な意識が求められます。しかし、当社の思いに共感していただければ、心を許せる100人の仲間とともに、一緒に夢をかなえるために歩む喜びが得られるはずです。全員が貴重な戦力となる当社なら、仕事に対する厳しさを感じながらも、それを乗り越える充実感や達成感を得られるはずです」。（妹尾氏）

同社の評価制度においては、給与は成果が直接反映される仕組みになっている。プレッシャーを感じる場面も少なくないはずだが、同社にはアットホームな雰囲気があふれ、社員同士が家族のように接しながら日々の業務に取り組んでいる。その理由は、お互いが尊重し合い、助け合いながら1つの目標を目指す仲間だと認め合っているからなのだろう。