株式会社Red Frasco

株式会社Red Frascoは、不動産テックに精通したプロフェッショナル集団として、クライアントである不動産仲介会社の集客力と成約率の向上を支援しているスタートアップである。受託開発および自社プロダクト開発によるサービスを展開していく。

日本の不動産仲介業界各社は、ポータルサイトに依存している状況にある。一方、大手の中には、自社ポータルを設けて独自の集客に取り組む動きもあるが、Webのテクノロジーやマーケティングノウハウにおいて圧倒的に遅れているのが現状だ。「そもそも日本ではエンジニアやWebマーケティング等の専門人材が不足しているので、自社ポータルを改善する専任者を置ける不動産仲介会社はレアケース」とCEOの竹内士郎氏は指摘する。
しかし、自社ポータルで集客し成約にまで繋げる比率を高められれば、不動産会社にとって営業効率を高め収益力の向上に直結させることが可能だ。そこに同社のビジネスチャンスがある。

同社は、テレビCM等により知名度の高いポータルを運営している不動産仲介大手をクライアントとして、集客数を1年間で昨対比約400%まで改善させる等の実績を上げている。

「サイトを分析した上で、UI／UXを改善したり、SEOを意識して検索エンジンのアルゴリズムに合うように最適化するといった基本的な施策から不動産業界に特化した集客施策を中心に提供しています」（CEO・竹内氏）。

その進め方としては、クライアントの担当者と一つのチームをつくり、一緒に取り組むスタイルを採用している。

「我々のノウハウやスキルをクライアントにも学んでもらう感覚です。こうして構築したより緊密な関係性の上で、400%増の次の高みに挑んでいくことが狙いです」

自社プロダクトとしては、クライアントが集客した反響の成約率を高める、CRM機能を盛り込んだプロダクトを開発する。アメリカに先行するプロダクトが存在していて、それを参考に日本の業界構造にローカライズしたプロダクトを開発する構えだ。

「リードスコアリングなどテクノロジーに寄った機能もそうだが、クライアントのオペレーションとセットで効果が現れる機能が一番効果がある気がしています。なので実装と運用も含めてクライアントと伴奏することが大事になってくる。伴奏することでクライアントの課題感もわかります」

同社の設立は、2019年12月。竹内氏は、2006年に株式会社リクルートに転職後、不動産メディアの事業企画／事業開発を手掛ける。2011年からはアジア地域におけるJVの立ち上げや米国企業のM&Aを手掛け、2013年には欧米住宅グローバル推進室長および米国子会社のCEOに就任する。2017年からはリクルート住まいカンパニーの経営企画室長として既存事業のグロースや新規事業開発を担う。退職後、2018年からは米国の不動産ポータル『Movoto.com』の経営に従事し2020年にバイアウトする。このように、日米を中心に最先端の不動産メディアサービスを責任者の立場で追求してきたキャリアの持ち主だ。

「バイアウト後、前職で一緒に働いた現CDOの小野木大二と、現CTOの吉田拓真の三人で起業する話がまとまりました。三人でできることを重ね合わせたところに生まれた事業が、Red Frascoの現在のサービスです」と竹内氏は創業の経緯を説明する。

CDOの小野木大二氏は、前職ではデータ分析組織で分析基盤整備やデータ整備、サイト内外のデータ活用案件の実装・推進に従事の後、『Movoto.com』で配信アルゴリズム開発を手掛けるなどData Managementのプロフェッショナル。

CTOの吉田拓真氏は、前職でスマホサイトの開発ディレクションや開発インフラ整備、開発プロセスの最適化等に携わり、通期MVPを獲得する等の活躍をしたエンジニアリングのプロフェッショナル。

設立後、現CMOの酒井洋輔氏やCSOの辻本陽一氏も参画。酒井氏は、サイバードでモバイルコンテンツの企画職に従事の後、株式会社リクルートに転職。グループ全体の新規事業開発業務や、住宅領域の複数の新規事業開発を手掛ける等、事業開発やマーケティングのプロフェッショナル。辻本氏は、1992年にリクルートに入社し約30年間、国内の住宅領域に携わった後、関西での営業部長職を経て2017年に注文住宅領域の役員に着任。不動産業界の現場の知見を多く持つセールスのプロフェッショナル。

こうして、現在の5名の役員体制ができた。

「この5人のスペシャリティをコアにしたテクノロジーやマーケティングのノウハウを通じて、日本の不動産会社の業績改善に寄与するとともに、業界全体の非効率性を少しでも少なくしていきたい」と竹内氏はビジョンを語る。

同社の社員数は、2023年3月現在22名。加えて密接に関わる外部パートナーは20名ほどを数える。カルチャーの基軸となっているのは、次の5項目のValueだ。

Object-Oriented：目的意識を強く持って意味のあることに取り組む
Act as a Pro：1人1人が専門性を持ち、自立した仕事人の集団
Quick Decision：シンプルに考えて即断即決を重視する
Data Driven：思い込みを捨て事実に忠実に物事を判断する
Chemical Reaction：それぞれ専門性を持った人間がコラボレーションをすることでより高い価値を生み出す

エンジニア等の役割はあっても、部長や課長といった役職は極力置かない方針で、メンバー間の関係性は極めてフラット。互いのプロフェッショナリズムを尊重することにも繋がる。副業もOKだ。

人材育成においては、「コアメンバーは各専門分野において全員スキルフルなので、若手はすぐ身近で学び取ってもらえる環境がある」と竹内氏。もちろん、セミナー参加や書籍購入、資格取得の補助も行っている。

働き方としては、コアタイム（11～17時）ありのフレックスタイム制。リモートワークは週に2日までを可能にしているが、原則はオフィスでの勤務を重視している。

「メンバー同士の関係性は、完全なリモート体制で構築するのは難しいと考えています。もちろん、コロナ対策は取った上で、全員がオフィスに集まって密接なコミュニケーションを取るようにしています。チームの人間関係・信頼関係を構築しながら、時にワーケーションをしたり、プライベートの事情でリモートワークをすることは全然賛成です。なので長期休暇の前後は皆リモートにして、早く帰省したり旅行先から仕事したりしています」（竹内氏）。

同社が特に求めているのは、「自分の専門エリアだけでなく、プロアクティブにプロジェクト全体の推進役となってくれる人材」と竹内氏。専門領域にこだわるエンジニアもいるが、エンジニアリングの知識や経験をベースに全体を巻き込み、推進していく能力をより必要としているからだ。

「選り好みせず、何でもチャレンジできる人がいいですね」と竹内氏は期待を寄せる。