株式会社RIT

「チャレンジが称賛される世の中をつくる」、これが株式会社RITの掲げるビジョンである。同社は2013年に大手コンサルティングファーム出身者3名によって設立された。強い意志を持って一歩踏み出す人を応援したいという思いが、このビジョンには込められている。具体的な手段として提供されるサービスは二つ。まずは、コンサルティング事業部によるコンサルティング。リアルな事業経験を基に、実践的な戦略を描き、クライアントとワンチームで実施する。もう一つが、今回フォーカスするBizDev事業部によるデザインやシステム開発。デザイナー、エンジニア共にビジネススキルを併せ持っており、チームを編成して各プロジェクトを進めている。

BizDev事業部では、コンサルティング事業部からの案件が3分の1。それ以外は独自に獲得した案件で、継続案件も多数抱えている。案件の内訳としては、新規事業案件が全体の7割を占めるという。新規事業に関しては、こういうサービスを始めたいというお話をもらう段階から相談されることが多い。基本的には、立ち上げの最初のプロセスから、エンジニア、デザイナーは全員参加。新規ビジネスに関わる手法論、新規事業の妥当性等にまで踏み込んで、メンバーも含めて同社で何ができるのか検討するという。CTOの福田哲也氏は、「受託開発の会社ではあるが、事業についての調査や、想定ユーザーのヒアリングも実施している」と同社の特徴を語る。

案件は、プライム案件で大手クライアントからのものがほとんど。通信キャリア、総合映像プロダクション、人材開発支援企業等、業種も幅広い。「新しい挑戦をしたいというクライアントの思いや、そのサービスの価値に共感できるかどうかを重視している」と福田氏。そのため、システム開発を丸投げするような案件は、基本的に請けることはない。また、ニーズに応えるクオリティーのプロダクトを提供するため、開発費の安易なコストダウンも行わないとのこと。そのようなジャッジは、現場のデザイナー、エンジニアに委ねられている。メンバーは、常に自らプロとしてプライドと責任を持ち、案件に臨んでいる。

福田氏は「今後も戦略性や不確実性の高い集中プロジェクトで、ナンバーワンを目指したい」と語る。それには、より多くの案件で成功体験を積み上げる必要がある。沢山のチャレンジを繰り返し、良いプロセスを学び、その経験を基により早く、よりよいプロダクトをつくる流れをつくりたい考えだ。

同社の基本はアジャイル開発で、スピーディーなプロダクトのリリースと改善を可能としている。サービスのラインナップとしては、新規事業開発に特化したスペシャルチームを提供する『Startup Lab.』、チャレンジを成功させるために必要なチームを月額制で提供する『Agile Lab.』、デザインシンキングに基づいてUI/UXの向上に繋がるプロトタイプを制作・提供する『UX Prototyping』がある。開発は現場主導。エンジニア、デザイナーがアイデアを出し、クライアントと交渉して進めていく。「上から降りてきたことをやるだけでは、面白くないでしょう？」と福田氏。クリエイター気質な社風がうかがえる。

クライアントから同社が選ばれている点は、「クイックな立ち上げとそれに伴うコストパフォーマンスの良さだろう」と福田氏。フットワークの軽い同社は、初期開発を最も得意とする。とにかく早く立ち上げて検証に回したいという、新規事業で求められるニーズにマッチしていると言える。

また、システム開発のベンダーで、同社のようにビジネスサポートや改善まで対応できる企業は少ない。「ビジネスと開発、両方の知見を持ち、なおかつサービスのグロースにも貢献できる点が評価されているのではないか」と福田氏は分析する。

同社のデザイナーやエンジニアが、ビジネスに対する知識に明るいのは、元々コンサルファーム出身者が立ち上げた企業ということもあり、「ゆくゆくは起業したい」というメンバーが多く集まっているため。未経験入社だった20代のエンジニアは、学生時代にVCでのインターンを経験。その後、起業しようとしたがエンジニアスキル不足を感じ、経験を積みたくて同社に入社した。ほかにも、元・ITコンサルタントで、自分でも手を動かしたいとスクールでITを学んで、転職してきたメンバーもいる。このように、エンジニアだから開発しか興味がないという人は少ないという。

会社としても、メンバーのビジネススキルを重視し、評価制度に組み込みたいと考え、準備を進めている。「マーケティング、企画等、いくつかのビジネススキルを項目に分け、それぞれにステップも設けて目標として明確化できるようにしたい」と福田氏は語る。

それぞれの頑張りは、給与にダイレクトに還元されている。2021年8月現在、直近の半期実績で、平均昇給率はエンジニアで15%、デザイナーで13%とのこと。未経験者ほど伸び率が高くないシニアクラスでも、平均8～9%昇給している。「半期に設定しているのは、プロジェクトが3ヶ月～6ヶ月単位のものが多いため。1年単位だと、『この3ヶ月頑張ったのに…』というメンバーに対し、フェアな評価ができないと考えている」と福田氏。起業精神が高いメンバーに刺激を受け、実績が反映される評価のある環境で、メンバーは急成長している。

新規事業へのチャレンジを支援する同社。実現には、最新の技術が求められることも多い。むしろ、そのような案件に積極的に取り組み、技術力の向上にも力を入れている。成長を目指すメンバーをサポートするため、エンジニア会も毎週開催。それぞれが興味のある技術について情報交換できる場となっており、全体のレベルアップを図っている。

また、メンバーが利用しているオープンソースに関しては、定期的に寄付している。福田氏は、「当社は、クライアントから技術に関しても評価していただき、報酬を頂いている。だからこそ、当社も技術に対してしっかりお金を払いたい」とエンジニアリングに対する思いを語る。将来的には、オープンソースに関して寄付での貢献だけでなく、オープンソースそのものに技術でコミットできるメンバーや組織を目指していく。

業務環境は、2020年よりフルリモートワークに移行した。新しい仕事環境下でも、ビジョンにある「チャレンジが称賛される世の中をつくる」を追求するため、メンバーのチャレンジを応援する新人事制度「かざぐるま制度」を導入している。制度名は社内公募によるもので、メンバーが会社からの追い風を受けてより良く働ける“かざぐるま”という意味だという。

その制度による支援は、ユニークなものが並ぶ。「オフィス家具/デバイス支給」は、環境を整えるための支援。業務に必要なPCはもちろん、ディスプレイ、マウス、キーボード等の周辺機器も好きなものを支給してもらえる。その中に、オフィス家具まで含まれている点が注目すべきところ。「例えば、椅子も自分に合ったものを使って、身体を壊さないようにしてほしい」と福田氏。ちなみに、リモートワークに関しては、光熱費や通信費等の負担軽減のため、一律で「リモート手当（1万5,000円/月）」も支給される等、至れり尽くせりである。

このほか、病気やケガ等での休暇を付与する「Sick Leave制度」も設置。これによって、有休を完全にプライベートのためだけに使うことができる。このほか、育休手当にプラスして補助するための「育休給付金」等も設けられている。「かざぐるま制度」による支援は、メンバーの要望を基に、今後もアップグレードしていく予定だという。

クライアントに対して、メンバーに対して、それぞれのチャレンジを後押しする同社。成功を掴み取ろうとする人達に、熱い思いでこれからも応え続ける。