ザイオネックス株式会社

製造業におけるモノづくりのプロセスを管理し、経営の効率化・最適化を図るSCM（サプライチェーンマネジメント）。そのSCMを実現するシステム、ソフトウェア開発を手掛け、大手グローバル企業との関係性を深めながら成長を続けているのが、ザイオネックス株式会社だ。同社の親会社であるザイオネックス社は、米国マサチューセッツ工科大学の博士課程を修了し、ビジネス経験を経た三人のメンバーによって2000年に韓国のソウルで設立された。そのグローバル企業の100%子会社として2013年に設立された同社の取り組みについて、日本法人代表取締役社長・藤原玲子氏に話を聞いた。

「ザイオネックス社は、韓国経済が急発展を遂げた時代にスタートを切ったベンチャー企業で、現地の財閥系大手企業に自社のSCM関連プロダクトを提供することで成長してきました。そのプロダクトを日本で展開するために当社は設立されたわけですが、その当時から現在に至るまで、SCM全般をカバーする日本製のプロダクトはなく、アメリカやドイツ、カナダ等の企業が手掛けるものが存在するだけ、という状況にあります。その中で、製造業で力をつけて発展した韓国発祥のプロダクトであり、なおかつ欧米にはない“擦り合わせ”等の特性を取り入れたグローバルマネジメントが可能なソフトウェアとして、当社のサービスは多くの日本の製造企業に受け入れられています。それが当社の強みになっています」（藤原氏）。

日本の製造業においても、海外生産拠点の運営や世界的な販売網構築が一般的になったことから、グローバルレベルでのSCMが非常に重要視されている状況にある。しかし、モノづくりに長けているという特性がありながらも、需要予測や製造計画、販売最適化等の全体を俯瞰した効率的なマネジメントについては、日本においてはまだまだ改善の余地があるというのが藤原氏の見解だ。そんな中、SCMをトータルに実現できる同社のプロダクトには、後発でありながらも数多くのニーズが寄せられ、導入数を拡大させているということだ。

「スタート当初はPLM（プロダクトライフサイクルマネジメント）のアドオンソフトウェアをご提案しながら、顧客数を増やしていきました。その実績、そして韓国の親会社に関する安定性というものがトータルに評価され、SCMシステムへのニーズを寄せていただけるようになり、優秀なコンサルタントを少しずつ増員しながら導入数を増やしてきたというのが当社のあゆみなんです」（藤原氏）。

製造業向けのBtoBサービスであるというプロダクトの性質上、導入後の丁寧な対応によって顧客企業におけるグローバルマネジメントの効率化を目指すのも同社の重要な役割となる。その取り組みにおいては、いたずらに自社の業績拡大だけを追い求めるのではなく、信頼を基にした関係性強化によって顧客への価値提供に注力してきたという。そんな着実なチャレンジへの姿勢こそが、同社の業績拡大プロセスに見られる特徴だと言えるだろう。

同社は、設立から3年間で事業を黒字化し、人員増強等の体制強化も図りながら着実に成長してきた。また、事業における新たな展開も積極的に進めており、従来のSCMソフトウェア販売に加え、2018年からはサブスクリプション型のサービスを開始し、2021年からはSaaS型のクラウドSCMソフトウェアとサービスの提供も行っている。SaaS型にすることで、システム導入の初期コストを抑えられるというメリットに加え、AIの需要予測から販売計画、在庫計画、補充計画、統合供給計画の作成までをワンストップで実現できる。

「グローバルに拠点展開するエンタープライズ向け、そして在庫問題解決や需要予測という部分を強化したいと考える中小企業向けという、二つのラインでSaaS型のSCMシステムを展開し始めました。日本の産業構造においては、約9割が中小の製造企業ということもありますので、その多くの企業に導入いただけるようなサービスに注力しているのが現在の取り組みということになります」（藤原氏）。

新たな展開を見せる同社においては、現在、ユーザにとってより理解しやすい画面の提供や、ユーザの既存システムとのシームレスな連携を意識した開発、そのシステムをオンボーディングできる人材獲得が必要になっていると藤原氏は語っている。その業務には、ソフトウエアの開発だけでなく、顧客企業の経営や組織、ビジネスプロセスの理解が欠かせない。その意味では、同社のエンジニアに求められるのは、プログラマーとしてのスキルに加え、コンサルタント的な素養だと言えるかもしれない。

「プログラミングや開発だけの仕事で満足することなく、より企業経営やビジネスの上流に関わりたいと考えるエンジニアには、魅力を感じていただける業務内容だと思います。お客様と話をしながら“業務”や“経営”を理解し、どうすれば効率化・最適化が図れるかということに興味を持てる方にチャレンジしていただきたいですね」（藤原氏）。

さらに近年は、無駄な生産を回避することや、予測不可能な事態をシミュレーションしながら生産・販売体制を適応させることも、モノづくり企業にとっての必須課題となっている。その課題解決に関する支援を行い、顧客のビジネスを成功に導く役割を、エンジニアとしての視点を持って担えるという魅力もあると言えるだろう。

「私達のソフトウェアに関しては、そのコアとなっている技術は最適化シミュレーションやAIといった数理計画に関するもの。エンジニアの仕事として最新の技術を駆使しながら、さらには顧客のビジネスを発展させるために力を発揮できるというやりがいがありますので、モノづくりに対するイメージを持ちながらビジネス視点で業務に取り組める方にマッチする業務なのではないでしょうか」（藤原氏）。

最先端の技術を駆使しながら顧客のビジネスに貢献し、生産管理や在庫管理の最適化により社会的な意義のある取り組みもサポートする。そんな活動を推進する同社には、「計画を支援する企業でありながら、あまり厳密な計画を立てずに自由にチャレンジする社風がある」と、藤原氏は笑う。

「元々、韓国本社の創業者が日本の製造業に自分達のプロダクトが役立つか、というチャレンジから始まった企業なので、社員達が小さなことからでも新しい挑戦をすることを歓迎する社風があります。“子会社として売上を重視しろ”という雰囲気ではなく、“日本の環境に合わせて、自由にやろう”というおおらかさもありますし、個人を尊重する仲間意識の強さもある。それが当社の一つの特徴だと思います」（藤原氏）。

ベンチャー企業特有の“がむしゃら感”や“熱さ”を求める人材には物足りないかもしれないが、と前置きしつつも、藤原氏は自社にある自由さや寛容さという特徴は大きな魅力になるはずだと語っている。その環境の中で、社員達は社内外に対する「誠実さ」を大切にしながら、成長を目指して努力を続けているという。新たな人材を迎えるに当たり、藤原氏は次のようなメッセージを転職希望者に送っている。

「エンジニアリングとコンサルティングという両面を担いながら、ビジネスを支えるスキルを持った人材に成長できるのが当社の環境だと思っています。これから入社する方に関しては、“採用します”という上からの目線ではなく、一緒に新しいものをつくる“仲間を迎える”という意識ですので、私達と共に努力しながら成長していきたいと思える方には、是非来ていただきたいですね」（藤原氏）。