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インタビュー画像取締役副社長、CDIO 渡辺 洋之氏

渡辺さんのプロフィールを教えてください。

私は理系出身ですが、エンジニアではなくメディアの方に興味を持ち、1985年に日経に入社しました。日経BP社で『日経パソコン』や『日経ビジネス』の記者をし、技術やIT業界の取材を多く経験。95年から特派員としてシリコンバレーに3年間駐在した経験もあります。 その後、『日経パソコン』の編集長などを経験し、2010年の『日経電子版』の立ち上げからは一貫してデジタル領域の人になっています。現在は、CDIO(Chief Digital Information Officer)としてデジタル部門のトップを任されています。

渡辺さんが仕事で大切にしていることや、「座右の銘」を教えてもらえますか?

記者をやっている時から大切にしていたのは、「技術は嘘をつけない」ということです。例えばマーケティング等は少し盛ったりすることができるかもしれませんが、技術ははっきりしているものなので、それができません。「技術は嘘をつけない」という思いはいつも大事にしながら取材を続けてきました。 元々の考え方として、「人生とは賭けである」と思っているんです。新しい技術に惹かれ、パソコンに興味を持ってこの世界に飛び込み、記者になったのは「技術に賭けた」から。パソコンが世の中を変えると信じられたからです。シリコンバレーに行って取材をした結果、インターネットに出会い、それに賭けてみようと思いました。 そして今、スマートフォンやエンジニアに賭けてみようと考えています。これまで、新聞社がエンジニアを大量に採用するなんて思ったこともなかったのですが、これも一つの「人生の賭け」だと思って、全力で取り組みたいです。

シリコンバレーではどのような経験をしたのですか?

私がシリコンバレーに向かったのが1995年。「Windows95」が出た時で、日本ではパッケージを買うために秋葉原に行列ができていた時代です。パソコンが日本を変えるに違いないと思ってパソコン雑誌の代表としてシリコンバレーに取材に行きましたが、行ってみて分かったのは、Windowsだけを持って出掛けていったら、そこには既にインターネットがあり、Javaがあり、Netscapeというブラウザがあった。パソコンどころではなく、「こういうものが世の中を変えていくんだ」と痛感しました。 そこで思ったのは、「今はこれだ!」と思っている先に、既に新しいものは準備されていて、もう動き出しているんだということです。常にそういう気持ちを持って、「一歩先」をつかみに行きたいと考えています。 もう一つ強烈な体験として印象に残っているのは、スティーブ・ジョブズがApple社に復帰する際の記者会見に出たことです。私がジョブズに「Appleに復帰してAppleごと復活させるアイデアはあるのですか?」と聞いたところ、彼は「ない」と答えました。その時に、永遠の天才はいない、天才にも波があるんだ、と体験したわけです。 だから、組織を一人の天才で進めようとするのではなく、チームで協力してみんなで頑張る方が継続性があるし、もっと遠くまでいけるんじゃないかと考えています。

渡辺さんは「一歩先」を読むために、普段どのような情報収集をしているのですか?

私は昭和の人間なので、「人に会いに行くこと」を何より大切に考えています。会いに行くのはIT業界やデジタル業界の経営者やCTOからエンジニアを卒業してマネジメントをしている方まで、幅広いと思います。経営のことや、すごいプロダクトを生み出すためにどうしたらいいのか、といった話をすることで、最先端のテックの話だけではない、様々な新しい情報を沢山仕入れようと考えています。 そして大事なのは、得た情報をメンバーに話すことです。私はいつも「私と話すと、あなたの知らない世界について教えてあげられるかもしれない」と言うんですが、人と話すことで皆に色々なことを得てもらいたいです。全て勉強していては追い付かないことも、人に会って直接情報をもらって、「こんなことを聞いてきたけど、どう思う?」と一緒に話しながら考えられたら、とてもいいですよね。情報とは非対称性があるものですから、与えられるものは与え、私自身も与えてもらう、ということはいつも考えています。

働きやすい環境をつくるために、どんなことを意識されているのでしょうか?

特別なことはしていませんが、私自身がエンジニアではないため、エンジニアの本当の気持ちが分かるとは言い難いと思っています。だから「沢山話そう」と考えています。 私の考えでは、エンジニアというのはスポーツ選手のような存在。今日の自分よりも明日の自分はもっとスキルが上がっている、そんな気持ちで能力を磨き続ける人達です。だったら、そのために必要なチャンスはいくらでも用意したいと思っています。もっと自由に研究がしたいということであれば、我々には「日経イノベーション・ラボ」という別の組織があるので、そこでチャレンジしてもらうこともできます。 「せっかく日経で働くなら、長く一緒にいたい」というのが私の素直な気持ちです。長く働いてもらうために、私にできることはしたいと思っていますし、だから何でも言ってほしいです。

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