Idein株式会社

日本最大のエッジAIプラットフォーム『Actcast』を開発・提供している、Idein株式会社。
エッジAIとは、カメラやマイクといった端末（エッジ）側のIoT機器に搭載され、端末で取得した画像や音声といった生データを解析するAIのこと。取得した大量の生データをそのままクラウドに送らないので、個人情報に配慮した運用ができることや、サーバーや通信の負荷を削減することでコストダウンやスピードアップに繋がるといったメリットがある。

『Actcast』では、2022年12月現在、全国に約1万5,000台という国内最多の端末で取得した生データから必要最低限のデータのみを抽出し、クラウド上に集約。そのデータから解析された結果を様々な用途に用いている。

『Actcast』の強みは、大きく2点。1点目は、技術的に運用の難易度が高いエッジAIプラットフォームとして、大規模なデータを運用する安定性やセキュリティの確保、非エンジニアでも可能な運用監視や誤操作防止機能、課金システム等を実現させていること。2015年の創業時から投資を受け、いち早く研究開発に取り組み2020年にローンチさせた。これが現在の国内最大規模に繋がっている。

2点目は、端末に用いるコンピュータに安価なRaspberry Pi（ラズベリーパイ）を用いていること。これにより、端末のコストを従来の数十分の一に大幅に圧縮できる。Raspberry Piには大量のデータを処理できる3Dグラフィックス専用のGPUが標準搭載されているが、同社はこれをAI用に使えるよう独自開発した。これによって、安価な端末を各地に大量に配布することを可能にしたのである。
「当社には、創業当初からAIだけでなくコンピュータの研究を専門としてきた人材が集結したので、この開発をモノにできました。おそらく他社には難しいことではないかと思います」と代表取締役の中村晃一氏は胸を張る。

現在、『Actcast』が大規模で使われている事例として、大手コンビニエンスストアチェーンのファミリーマートの来店客分析がある。数千台のAIカメラが来店客の性別や年齢層等の属性を分析し、店内に長く滞在している属性に向けた店舗施策に繋げている。また、別のあるショップでは、AIマイクによって接客中の会話を分析し、カスタマーによるハラスメントが生まれる原因を特定し対策を講じるといったことに活用されている。そのほか、店舗や施設内の混雑状況の把握、工場内のアナログメーター読み取りによる巡回目視監視工数の削減、危険エリアへの侵入検知、デジタルサイネージの属性別視聴率計測といった活用法がある。

『Actcast』の今後の普及に関しては、ビジネスパートナー（150社以上）となった大手SIerによる『Actcast』を用いたソリューション開発や、総合商社による提案活動等のパワーが大いに期待できる。

以上のような技術力やサービス力が高く評価され、世界でも数少ないArm社認定のAI Partnerへの選定や、ET & IoT Technology2019グランプリ、経済産業省J-Startup選定等、数々の栄誉に輝いている。

同社は、2015年4月、中村氏が創業した。中村氏はそれまで大学院の博士課程でスーパーコンピュータのための最適化コンパイラ技術を研究していた。
「学生時代から起業を意識していました。たまたま画像認識AIに関わる機会があり、物理世界をデータ化する技術が想像以上に進んでいることに衝撃を受け、この領域の大きな可能性を確信したのです。そこで、大学院を中退し、仲間と三人で当社を創業しました」

当初はエッジAIのスマートデバイスというハードウェアのベンチャーとしてスタートしたが、スタートアップとして量産品を手掛けることの厳しさに直面し、エッジAIプラットフォームにシフトする。そのプランが創業2カ月後に投資家から評価され、先行投資を受けることで数々の優秀な人材を呼び込み、『Actcast』の研究開発を進めることができた。

同社のステートメントは、次の通り。

●VISION：ソフトウェア化された世界を創る
●MISSION：実世界のあらゆる情報をソフトウェアで扱えるようにする

そのミッションを実現する手段が『Actcast』であることは言うまでもない。
当面は、国内で『Actcast』を広め、実績を積むことに集中する。その後はグローバル展開によるメガプラットフォームを目指す構えだ。既にCES等の海外の展示会にも出展し、関心者とのコンタクトを取り始めている。

『Actcast』の現在は、“今”何が起きているかを分析するものであるが、データが大量に蓄積する今後は、“将来”何が起きるかを予測できるようになる。これによって、例えば来店客の人数や属性の予測による仕入れの最適化が可能になり、無駄の排除による収益の極大化や環境破壊の抑制に繋げることができるだろう。

同社が目指す世界観について、中村氏は次のように話す。
「一言で言えば、よりスマートな社会です。あらゆる物理空間をデータ化することで、あらゆる人がより賢い判断や意思決定を可能にし、より便利で安全、無駄のない豊かな社会をつくっていくことができると考えています」

同社の社員数は約70名（2023年1月現在）。AIやコンピュータサイエンス、ソフトウェアといった技術領域や、マーケティング、セールス、コーポレート等のビジネス領域の高度なプロフェッショナルが集まっている。
そんな集団を束ねるVALUEは、2023年の初めに全員のアイデアを基に策定し直した。その概要は次のとおり。

●パフォーマンス：最初から正解のない、新しいことにトライすることが身上の同社として、アウトプットとフィードバックを細かく行うことでアジャイルに業務を行う。
●イマジネーション：自らの業務が所属するチームや会社全体にどういう価値をもたらすのか、想像を働かせて仕事に向かう。

既存メンバーはその内容や意義を十二分に理解できているが、今後加わるメンバーに対してはオンボーディングで徹底すると共に、四半期ごとに行っている全社のキックオフミーティングでの浸透プログラムを講じる。加えて、人事考課の指標化も検討する。
人事考課としては、「成果」と「行動」の2軸で評価。「成果」は、能力グレードで基本給を決め、職種ごとの個別の成果はインセンティブで報いる。

グローバルに戦っていく上で求められる、さらなる能力向上策としては、各チームの担当役員を中心にそれぞれが業務内容に応じて独自に講じる施策が基本。加えて、全社として外部講師を招いてのセミナーや、学術論文の輪読会、チームを横断してのワークショップ等を行っている。

働き方は本人の自由で、フルリモート勤務を選ぶ者が90%以上。メンバー同士のコミュニケーションは、普段はチーム単位を基本に図られている。一方、毎週金曜日に本社オフィスで自由参加の“ビアバッシュ”を開催。ここに来れば、ビール等のアルコールと軽食を取りながら、色々なメンバーと交流を深めることができるようにしている。

そんな同社が求める人材像について、中村氏は次のように話す。
「当社のビジョンやミッションへの共鳴は最低条件です。その上で、新しいものを自分の手でつくり出したいという野望を持ち、成長を志向する方であってほしいですね」
優秀な人材と共に可能性の大きいエッジAIプラットフォームをグローバルスタンダードまで高めていくという、非常にエキサイティングな業務に就ける同社。採用状況は刻一刻と変化しているが、気になる職種があればコンタクトしてみてはどうか。