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メトロウェザー株式会社

  • IT/Web・通信・インターネット系
  • 製造・メーカー系

京大発、NASAが認める技術力。ドローン時代のインフラを支えるスタートアップ

上場を目指す
自社サービス製品あり
カジュアル面談歓迎

企業について

欧米の大手EC企業や運送会社等では、自動運航で荷物を配送するドローンの実証実験が進み、実用段階に近付いている。それに伴い、エアモビリティ社会の到来を見越したインフラ整備や法整備が、世界中で進行中だ。メトロウェザー株式会社は、そういった社会的背景の下、「風を見える化し、空の安全を守る」というビジョンを掲げ、ドローンの安全航行に欠かせない風況情報を提供するためのIoTソリューションを開発・提供するスタートアップ企業である。

2022年6月現在の収益源は、“ドップラー・ライダー”という装置の販売とレンタルだ。2020年の商品化以来、一部上場企業等に採用され、順調に売上を伸ばしており、2023年4月期は、前期に対し約5倍の成長を見込む。

ドップラー・ライダーとは、大気中にレーザー光を発射し、大気中を舞うエアロゾル(塵、微粒子)からの反射光を受信することで風況(風速・風向)を観測する大気計測装置である。風況を観測する装置としては、風速計が100年以上前から使われており、現代でも最も信用できるとされている。ただ、1台の風速計で観測できるのは、1地点のみだ。ドップラー・ライダーなら、ものによって幅はあるが、同社が開発する『Wind Guardian』なら1台で半径15 kmの広範囲をモニターできるため、風速計1,000個分にデータを1台で取得することが可能だ。また、風速計は設置した地表面の風況データしか取れないが、レーダー光を使うドップラー・ライダーならドローンが航行する50m、100mの上空の風況を捉えられる。

ドップラー・ライダーを開発するメーカーは世界でも数社のみで、日本国内では同社を除くと1社しかない。元々ドップラー・ライダーは風力発電の発電量予測を目的として活用が始まった装置であり、そのフィールドでは、フランスのメーカーが最大手であり、なおかつ同社の実質的な競合でもある。

メトロウェザー社、その最大手を含めた先行メーカーが開発する装置と性能は変わらず、圧倒的な小型化と低価格化を実現したことで、世界中の注目を浴びている。大きさは、他社製品のコンテナ1個分に対し、同社の『Wind Guardian』はテーブルに載るサイズ。価格は10分の1だ。

小型化、低価格化を実現する要因は、リモートセンシング技術と信号処理技術といった同社のコアテクノロジーだ。京都大学で約30年にわたる大型レーダー研究で培った、“ノイズだらけの情報からシグナルを取り出す技術”により、他社と比較して10分の1の出力パワーで、近しい性能を維持できる。代表取締役・古本淳一氏が語る。

「市場にはレーザーが届く距離がより長い製品も存在しますが、我々がユースケースとして想定しているドローンや航空の領域では、そこまで長い距離は必要とされません。弊社が提供する製品ぐらいが性能的にも価格的にもこなれていると考えています」(古本氏)。

この技術力はNASAの航空部門にも高く評価されている。ドローン運航における安全確保のための規制準備が進む米国ではドップラー・ライダーの導入が確実視される中、NASAを含む複数の優良クライアントとの共同研究が本格化し始めている。

メトロウェザー社が目指しているのは、単なる装置メーカーではない。実測したデータをクラウドで管理し、風況データそのものの流通や、安全航行のためのルーティング情報等を継続的に提供するクラウドサービスプロバイダとして事業を発展させたい考えだ。ドローンの制御プログラム内に、『Wind Guardian』で観測した風況データを取り込むことにも成功している。数分から数日後までの風況予測をリアルタイムに提供する風況予測システム『Wind Foresight』によるサービスも準備中だ。

メトロウェザー社を創業したのは、古本氏と、取締役・東邦昭氏だ。メトロウェザー社創業以前は、京都大学生存圏研究所に所属する研究者で、気象レーダーで大気を測る研究に従事していた。その一環として行っていたのが、同社設立のきっかけとなった「比良おろし」の観測だった。

「比良おろし」とは滋賀県の比良山地東麓に吹く局地風で、琵琶湖の西側を走るJR湖西線の運行の妨げとなっていた。その観測をするために研究費を節約し、数百万円を貯め、外国産の高価なドップラー・ライダーを借りて観測をスタートしたものの、公称値の20分の1ぐらいのデータしか取れない。泣く泣く決断したのが、ドップラー・ライダーの独自開発だった。

だが、装置の原理は理解しているものの、実際に動くものを作ることは至難の業だった。そもそも研究一筋できたため、開発に必要な資金と人材を集める術を知らない。知人の伝手をたどっていって投資家を紹介してもらいプレゼンして回ったが、全くと言って良いほど収穫は得られなかった。その中で、少しでも引っ掛かった部分があれば、それをフックに改善を重ね、たどり着いたのが、産業界での実用化に向けた環境整備が活発化していたドローン運行のための風況予測という活用方法だった。

“メトロウェザー”という社名は、都市部のゲリラ豪雨の予想に活用できる装置を目指していたことに由来する。だが、最初に投資を受けたアメリカの投資家から、「ドローンに使えば良い」とアドバイスされたことをきっかけに方針を転換。それからも試行錯誤を繰り返しながら、設立から5年後、ようやくファーストプロダクトをリリースし、それが世界の注目を浴びることとなったのである。

「これまで物作りにこだわり続けてきましたが、実際にデータが取れるようになって気付きました。皆が欲しがっているのは、ドップラー・ライダーという装置ではなく、その装置で採れる風の情報です。その情報を流通させたり、その情報をもとに何らかのガイダンスを提供したりすることに本質的な価値があるのです」(古本氏)。

そのためにはクラウドのインフラ構築や、データを活用するアプリケーション開発、クラウドとアプリの繋ぎ込み等、SaaS事業者としての環境や体制を整備しなければならない。また、ドップラー・ライダーにアクセスしてファームウェアの更新や監視を行うIoTシステムの構築、NASA等の連携先の要求に応えられる情報セキュリティ体制の構築・運用といった課題もある。同社は現在、約1年後のサービス提供開始を目指し、これらの課題に向き合っているところだ。

現在、メトロウェザー社の社員は、古本氏や東氏を含めて15名。その中でIT系の技術者は、テックリード・遠藤善徳氏のみ。入社から約1年半、一人でインフラ構築からアプリ開発、IoTシステムの開発、情報セキュリティマネジメントシステムの構築等に携わってきた。遠藤氏は、元々オンライン証券やオンラインゲーム等の大手企業でインフラ構築やアプリ開発まで幅広いスキルを備えたエンジニアだが、今後本格的な事業展開を進めるには、より多くの専門スキルを持った技術者が必要だ。C++プログラマー、Pythonプログラマー、情報セキュリティ担当者、プロジェクトマネジャー、さらにルーティング等のシミュレーションを行うAI人材等の採用を進め、2022年末までの半年間で社員数を倍増させる計画である。

メトロウェザー社はスタートアップのベンチャー企業だ。その自覚を持ち、2~3カ月ごとにPDCAサイクルを回すアジャイルな開発を続けている。自分達が作りたいものではなく、顧客に認められるものを見据えた物作り、サービス作りをミッションとする。

「お客様から直接フィードバックを頂いて、こうした方がいいと言われれば、最低限の労力でお客様の意に沿える方法を考え、再提案する。ショートターンを繰り返すことで、お客様の求めるものと我々が作るものとの溝を可能な限り埋めていく、いわゆるPMF(プロダクトマーケットフィット)を早くやっていく。ハードウェアの開発では、ずっとそれを繰り返してきました。データの方でも同じことをやっていくことが重要です」(古本氏)。

求めるのは不屈の精神を持った人材だ。古本氏と東氏は、創業当時は投資家300人にプレゼンし、300人全員から断られた経験を持つ。だがその中で、学んだことは数多い。自分が開発したものを、臆せず顧客の目に晒す。そこで「ノー」と言われても、別の顧客に持って行ったり、駄目だと指摘されたところを改善したり、前向きのドライブを働かせることで、プロダクトを磨いてきたのである。

「スタートアップの利点は、顧客との距離の近さです。自分が作ったものが、お客様の厳しい目で評価されるところに大きなやりがいを感じます。自分達が主体となって、色々なことを決めてやっていくところが、スタートアップの醍醐味です。これまでは目新しさから評価されてきた部分もあると思いますので、次は具体的にどう役立つのか、我々が提示すべきであると考えています」(古本氏)。

また、スタートアップであるが故の“何もない”状態を楽しめることも重要な要素である。大学の研究室のような雰囲気もある同社。社内制度はもちろん、就労環境の整備にも、社員一人ひとりの考えが大きく反映される余地はある。入社に当たって裁量労働制の導入を要求して実現した遠藤氏は、自分から発信することで、環境を作っていけるところが面白いと語る。

「ITチームはゼロからのスタート。新しいこと、面白そうなこと、全部やっていきたいと考えています。“こんなの作ってみたよ”、“これすごくいいよ”と言ってきてくれる方は非常にありがたい。頭角を現す人材にはどんどん権限を移管していきたいと考えています。今、来ていただければ、会社が盛り上がる最初のところの経験を積めます。名前が売れてからでは遅いので、是非今のうちにご参画ください」(遠藤氏)。

現在は大久保駅から徒歩15分ほどのところにあるインキュベーション施設に入居する同社だが、手狭になっていくことを見据え、駅前の新しいオフィスに移転することも決まっている。新しいオフィスで、サービス、組織の両面から、真っさらな道を作っていく過程に携わる。特にサービスは、新しい社会資本の基盤を支えるものだ。そこに関われることは、時代の転換点に生きる者の特権である。

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企業情報

会社名

メトロウェザー株式会社

業界

IT/Web・通信・インターネット系 > IoT・M2M・ロボット

製造・メーカー系 > 電気・電子・機械・半導体

IT/Web・通信・インターネット系 > その他IT/Web・通信・インターネット系

企業の特徴
カジュアル面談歓迎、上場を目指す、自社サービス製品あり
資本金

1億円

設立年月

2015年05月

代表者氏名

代表取締役 古本 淳一

事業内容

リモートセンシング技術を応用した大気計測装置の開発・製作・販売
気象情報とIoTを組み合わせたマーケティングおよびソリューションの提供
気象観測および予測データ、防災オペレーション支援情報の提供

株式公開(証券取引所)

非上場

従業員数

36人

本社住所

京都府宇治市広野町茶屋裏18-1 タニヤマ大久保ビル 1F

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