株式会社NAC

株式会社NACは、2006年に設立された3DCG制作会社。
メーカーや制作会社からの依頼に合わせて、キャラクター、背景、アニメーション、エフェクト等を3DCG化する。

3D系デザイナーのみが在籍している、3DCGのスペシャリスト集団といえる。
2022年で17期目を迎えた同社だが、長年にわたって3DCG業界で活動できた理由を「クオリティーへのこだわり」と、
代表取締役の対馬健司氏は語る。

「17年間、仕事を続けられているのは、クライアントが満足するクオリティーを維持しているからです。アウトプットのクオリティーをこだわり抜くことで、継続的に依頼をもらえるだけでなく、口コミでクライアントが増えていきました。当社に在籍する3DCGクリエイターは、みな優秀で真面目に仕事に取り組んでいます。お客様のニーズに応えるのはもちろん、時にお客様の想像を超えたクオリティーのアウトプットを示すことで、大きな信頼を得ることができています」（対馬氏）。

40年以上、CG制作を続けてきた対馬氏。中学生の頃、世界で初めて全面的にコンピューターグラフィックスを導入した映画「トロン」を見て衝撃を受け、CG制作を独学で学び始めたという。

「当時は、CG制作のソフトがなく、BASICで作っていました。厳密にいえば、CGではないかもしれません。CGに見えるようにプログラムを書いていた感じです。美大に進学したかったのですが、親の反対で断念。会社員として働く傍らで、趣味でCGを制作しネットに作品をアップしていました。すると、作品を使いたいという申し出やCGを作ってほしいという依頼が来るようになり、27歳の時、会社を辞めてCGクリエイターの道に入りました」（対馬氏）。

最初に入ったゲーム会社は2年で転職。次に入社した会社でチーフになって活躍し、会社の支援を受けて独立した。NACの前身となる会社を立ち上げたが、それはゲーム会社だった。

「CGとゲームは切っても切れない関係です。私はゲーム好きというよりも、CGが好きでした。ゲーム開発するよりもCGに特化した会社の方がニーズがあると考え、NACを設立して、CG専門会社となりました」（対馬氏）。

クオリティーへのこだわりを貫きクライアントから信頼を勝ち得て、17年もの長きにわたって3DCG制作会社として活動を続けてきた株式会社NAC。クライアントから信頼される、もう一つの理由がある。それは、スピーディーで効率的な作業の進め方だ。

対馬氏がCGクリエイターの業界に身を投じた時代、CGクリエイターの働き方は今とは全く違っていた。残業や休日出勤は当たり前。納期が近付けば徹夜の連続。何よりも驚いたのは、納期があってないも同然だったこと。納期に遅れても特にお咎めなし。そこで、対馬氏は納期を遵守し、アウトプットするクオリティーにこだわることで、クライアントの信頼を勝ち取っていった。

「CGクリエイターになる前は、プリント基板メーカーの品質管理部署で納期管理をしていました。前職では納期は絶対遵守、何があっても遅れることは許されませんでした。CGクリエイターの業界に入って、あまりのカルチャーの違いにショックを受けました。ただ、納期と品質を意識した制作は、私の身に染みていました。だから、納期と品質を意識して働いていると、いつしかほかのクリエイターとの差別化になっていました」（対馬氏）。

その時の経験もあってNACは立ち上げ当初から、「残業や休日出勤をしない」を大前提にしてきた。残業や休日出勤は、働き手にとっても良くないが、会社にとってもコストが増大し、経営が苦しくなる。利益が上がらないから、社員に還元できない。悪循環になってクリエイターの就労環境は悪化するばかりなのだ。

「残業や休日出勤を前提にしたスケジュールを組むと作業効率が悪くなります。決められた時間内にきっちりと生産性を意識して働いた方が、アウトプットも多くなり、クオリティーも高まります。もちろん会社もクリエイターのスケジュールを考慮して受注しています。目先の利益を求めて無理な受注をすると、クリエイターが疲弊するのに利益が上がらない最悪な状況になります。当社はそんな悪循環を断って、クオリティーの高いアウトプットを出して、それがクライアントに認められ、信頼を勝ち取り次の仕事に繋がるという好循環のサイクルを作り上げました」（対馬氏）。

NACには65名のクリエイターが在籍している。会社が働きやすさを意識した経営を続けているため、長く在籍するメンバーが多いという。NACは、気心の知れたメンバーと働きながらスキルアップを目指せる会社なのだ。

「CGクリエイターに限らず、クリエイターは好きなことを仕事にしているからと、収入が低かったり安定しなかったりするケースもあります。当社はクリエイターが好きを仕事にしながら、人並みの生活ができるように会社を経営しています。これからも、好きと生活をトレードオフにしないで、プロ意識を持ってクリエイターの道を邁進したい人材と一緒に会社を維持し続けていきたいと願っています」（対馬氏）。

クリエイターが好きと生活をトレードオフにしないで、やりがいを持って働ける会社を目指しているNAC。仕事しやすい環境を整えて、クリエイターに楽しく働いてもらうように配慮している。裁量労働制を採用しているが、プライベートの時間を確保できるように、社員の労働時間には気を配っている。

「労働時間が超過しないように、会社でチェックしています。健康的な働き方をして、生活を豊かにしてほしいと願っています。自発的に働くことでクリエイティブなアイデアも生まれます。だから、規則で縛ることはしません。クリエイターのプロ意識を信じて、働き方はクリエイターに任せています」（対馬氏）。

クリエイターの裁量に任せるためにも、NACでは採用のハードルを高くして優秀なクリエイターだけの組織を維持している。

「優秀なクリエイターといっても、私達の仕事はアーティストのように作品を作るのではなく、あくまでも受注した案件を高いクオリティーで成し遂げることです。センスやスキルよりも、クライアントのニーズをくみ取ってチームワークができるコミュニケーション力を重視しています。現在のメンバーの個性はバラバラです。色んな性格の人がいるから、新しく入るメンバーもすぐに馴染むことができるようです」（対馬氏）。

3DCGの世界は、日進月歩で技術が進化する。クライアントへ最高のアウトプットを示すために、NACのクリエイターは最新技術にキャッチアップしている。会社もクリエイターのスキルアップを全面的にバックアップ。技術情報の共有サイトを作って、新しい技術に関する情報を得た人がサイトにアップするようにしている。

「最新技術にはどんどんチャレンジしてほしいと考えています。最新技術にチャレンジしないと、会社としてクライアントのニーズに応えられなくなります。その意味で言えば、3DCGクリエイターにとってスキルアップは必須だと言えます。外部セミナーの費用も会社で負担します。クリエイターには、とにかくスキルアップを目指してほしいです」（対馬氏）。

クリエイターが働きやすい会社にするため、評価制度にもこだわっている。年齢や社歴ではなく、アウトプットで評価する制度を作り、クリエイターのアウトプットを細かく評価。社員と会社の双方が納得できるような形にしている。

「働き方に関しては、リモートワークも積極的に活用しています。チームワークも大切なので、完全フルリモートにはなっていませんが、クリエイターが仕事の進行に合わせて、リモートワークとオフィスワークを上手く使い分けて働いています」（対馬氏）。