今年6月に社長就任されて間もないですが、髙谷社長が『Hulu』でどういったことに取り組もうとしているのか、ぜひ教えてください。
一言で言えば「今の生活者が何を求めているか?」を掴み、それをビジネスに反映することです。 『Hulu』のようなVODビジネスが始まって、15年程度経ちました。その間に、どんどんニーズも変わりました。私達の仕事は「明日のユーザー」に対して何を提供するのかを考えること。「今日の常識は、明日の非常識」ということもよく言われますが、常に最適を考えながら、新しいものを提供していきたいと考えています。そのためには良い意味で「朝令暮改」でありたいですね。 今、映像コンテンツではタテ型ショート動画が大流行です。今後はメタバースの波も来るでしょう。今後、視覚・聴覚にプラスした新しい体験を提供する面白い時代がやってくるはず。HJホールディングスとしても、新しい時代を見据えたビジネスを創っていきます。
社員の皆さんに求めるものは何ですか?
「責任感とプライド」ですね。 目の前にある仕事をこなすだけなら、誰でも簡単です。自ら仕事に対する責任感やプライドを持つことで、日々の仕事に対しても「もっとこうした方がいい」と感じることができます。 「こういうことがしたい」という思いを持ち、「やろう」と決意する。そして、最後までやり抜く。それには、つくるものやサービスに対する誇りに根ざした責任感がエネルギーとなります。 仕事に限らず「思い」を持ってやっているかどうかで、結果も、得られる経験も変わってくるでしょう。ただ何となくやっている仕事で得られるものと、思いを持ってやっている仕事で得られるもの。何年も積み重ねていくと、相当な差が出ます。私自身、このことにもっと若いうちから気付けば良かった、と思うことがよくあります。
HJホールディングスが今抱える課題について、どのような認識でいらっしゃいますか?
映像コンテンツ配信というビジネスは、基本的にはレッドオーシャン市場です。しかも、ネットという世界中が同じ市場原理の下で動いている中で、私達は国内の市場でビジネスをやっています。 グローバルなレッドオーシャン市場環境の下、日本においてどう戦うか。それが課題です。プロダクトはもちろんのこと、人材の質、あらゆる分野でワンステップ上を求めていきます。 ビジネスモデルも、コロナ禍を契機としてSVODのワンモデルからTVOD、いわゆる都度課金型コンテンツの追加を行い、急速に伸ばしています。さらに私達は「チャットパーティ」という、複数ユーザーが同時にコンテンツを視聴しながらチャットでおしゃべりできる機能を提供しました。まだまだ、新しいものを展開する余地はあるはずです。私達のチャレンジはこれからも続きます。
髙谷社長は長くテレビ番組制作に携わっておられましたが、デジタルにも深い造詣をお持ちです。いつから「デジタル」に興味を持たれていたのですか?
私がこの世界に入ったきっかけは、若い頃に思った「音楽番組」への興味からです。音楽番組がつくりたいという思いで業界に入り、おかげさまでその夢は実現できました。 『THE MUSIC DAY』という番組をつくった時、視聴者にライブ感をどうやって届けようかと考え、視聴者がスマホを使ってゲーム感覚で番組に参加できるコンテンツを提供しました。和太鼓のリズムゲームのように、テレビで放送される楽曲や踊りに合わせてタッチすると、画面にエフェクトが出る……というようなものです。これが、2013年のこと。放送も、受信する地域によってどうしてもごくわずかなズレが起きます。それに全てアジャストして映像と音声をシンクさせて届けることは想像以上に大変でしたね。 このことがきっかけで、私はデジタルの面白さに触れ、新しいこと面白いことをどんどんやろう!という中で必然的にデジタルに関わることが増えていきました。
髙谷社長が、仕事をする上で大切にしていることは何でしょうか。
そうですね……。仕事とプライベート、両方のバランスはとても大事だと思っています。 人には、「仕事」でしか得られない経験があります。仕事を通じてしかできないアクションもあります。私自身は、ストレスそのものを楽しめるタイプです。 しかし、それでもプライベートが充実していないと仕事も楽しめません。逆に言えば、仕事があるからこそ、休みも目一杯楽しめるとも思っています。だからこそ、仕事とプライベート、どちらも大切にしたいのです。 私は、仕事柄会食も多いのですが、週に3日までにしています。妻の作る料理が大好きなので、できれば家で食べたいですからね。夫婦での会話の時間も、仕事で新しいものを生み出すための会話の時間も、どちらも大切にしたいです。